④
「サンタクロースの願い?」
戸惑い尋ねる僕に、女の子はこくりと頷いた。
「サンタクロースはみんなの為に祈ってるって、お母さんが言ってたの」
僕は促すようにひとつ首を縦にふると、女の子は話を続けた。
「それでね、考えたの。いっぱい考えてたらね、サンタクロースの願いを祈る人が居ないなって思ったの」
僕は首を傾げた。
女の子が満面の笑みを浮かべた。
「だからね、私がサンタクロースの願いが叶うように、お祈りしようと思ったの」
そう言うと、女の子は僕の手を取って、小さな手で包んだ。
僕は僕の右手と、女の子の両手を見つめた。
「僕の願い?」
つぶやくように、僕は聞いた。
「うん」
頷くと、女の子は小首を傾げて僕を見た。
女の子の言ったことは、僕にはあまりにも唐突で、衝撃的だった。
子ども達の願いを祈るサンタクロースの願いを祈る子ども。
「…願い事、無い?」
黙り込んだ僕を、心配そうに女の子が見ながら言った。
「僕が、願う事?」
僕は目を閉じて考えてみた。
僕が真に願う事。
「それとも、私が祈っても、サンタクロースの願い、叶わない?」
耳から滑り込んできた言葉と、その不安げな声音に、僕ははっとして、目を開けて女の子を見た。
少し泣きそうな目と、頑張って笑みを浮かべる口元。
女の子の不安定な表情を見て、なんとなく僕は、僕の鏡を見ているように思った。