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サンタクロース株式会社  作者: 所長
3/7

 僕は担当エリアの町を、子ども達を訪ね歩いた。

 いつかは忘れたり消えたりするかもしれない、いろんな夢や望みを心に持っている子ども達。

 その中でも温度の違う一際輝く特別な心の灯が、真に願うもの。

 野球選手になりたい。

 歌いたい。

 もっと遊びたい。

 友達がほしい。

 夢がほしい。

 もっと食べたい。

 生きたい。

 花屋さんになりたい。

 ……。

『どうかその願いが叶いますように』

 僕は自身のもやもやした迷いや言い知れぬ不安を忘れたくて、今までの年よりも、今年は強く強く祈った。

 今年の外回りも残すところ数軒になった。

 次の家を見つけ、僕は首を傾げた。

 子ども部屋に明かりが点っていた。

「あれ?」

 僕は不思議に思いながらも、クリスマスは明かりを点けたまま寝る子も、多くはないが居てることを思い出した。

 僕はそっと窓から様子を窺った。

 ところが、部屋の中で女の子が起きていた。

 クリスマスは、子ども達は普通早く寝る。

 その女の子は、布団の上に座り、小さな手を組み、熱心に何か祈っていた。

 僕はどうしたものか判断が出来かね、とりあえずいつものように部屋に入ることにした。

 女の子の祈りを邪魔しないように、そっとそっと気を付けながら。

 部屋に入り、少し離れたところから女の子をみると、女の子は手を堅く握り目を閉じ天井の方を見上げ、言葉1つ発することなく、ただ祈っていた。

「何を、してるの?」

 僕は余りに熱心に何かに祈る女の子に、その理由が無性に知りたくなり、声を掛けてしまった。

 女の子はきょとんとして、僕を見た。

「あのっ…ごめん。僕…その…」

「もしかして、本物のサンタクロース?」

 慌てた僕に、女の子は聞いてきた。

 僕はおずおずと頷いた。

「お祈りしてたの」

 女の子は、嬉しそうににっこり笑った。

「お祈り?」

「うん、そう。サンタクロースの願いが叶いますようにって」

 女の子のただ言葉をそのまま返しただけの僕の問いに、首を縦に振ってゆっくりと答えた。

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