②
その女の子は、お母さんの手料理を食べながらTVを観ていた。
大雪の景色。
キラキラのイルミネーション。
いつもより着飾ったTVの中の人達。
そして、サンタクロースの格好をした街のお店の人達。
「お母さん、サンタクロースなんて居ないよね」
お母さんは食事をしていた手を止めて、女の子を見た。
お母さんからの返事がかえってこなくて、女の子はTVから目をお母さんに移した。
お母さんは困ったような笑顔を浮かべていた。
「お母さん?」
女の子は尋ねた。
お母さんは静かにフォークを置いて、グラスのワインを少し飲んだ。
そして少し間、お母さんは目を閉じた。
「あのね、サンタクロースはちゃんと居るのよ」
ゆっくり目を開け、お母さんは女の子を真っ直ぐに見つめて言った。
「うっそだぁ。友達の家はお父さんがサンタクロースやってるって言ってたよ」
「そうね…それもサンタクロースだけど、世界にはちゃんとサンタクロースが居るの」
女の子は天井を見て、その向こうの空を思い浮かべた。
「トナカイとか空飛ぶの?ソリにプレゼントいっぱい積んで?」
お母さんはゆっくり首を横に振った。
「サンタクロースがくれるのは、もっと素敵なプレゼントよ」
女の子は目をまるくしてお母さんを見た。
「たった一つ、その子の真実願うことが叶いますようにって、祈ってくれるのよ」
「それが、素敵なの?」
お母さんは小さく頷き微笑んだ。
「世界中の子ども達の願いを、全て共に寄り添って祈ってくれるのよ。素敵だと思うわ」
「…ふ~ん」
女の子は何か考えながら、温かいスープを飲んで、またTVに視線を戻した。
お母さんは、TVを見る女の子が見ているだけで見ていない様子を見て、少し驚き、幸福そうに小さく微笑んだ。