その12
その12
危うく死ぬところだった。
先日知り合った『自称、人呼んでゴーストライター ゆう・れいひ』に
「あなたには『引き寄せるモノ』がある」
と言われたが、その力らしきモノで命を無くしてしまったらどうしようもない。
今回は身を持って知る事となった。
例のフレンドリーと言うか、お手軽な近所の山に足を運んだ。
だいたい、ここに来ると何か見つけてしまう。
玉璽、?ブロ◯ク、イヤリング…。数えてみるとそんなものだが、率は高い。
さすがに毎日来る気はないが、もしかしたらその度に何か手に入れるのだろうか?
で、
「ゴッドス◯イヤー」を手に入れた!
そう、遥か天空の彼方から飛んで来たのだ。
最初は戦隊物かと思わせ、その実、暗殺者かと恐怖させる登場?!だった。
何にせよ山の途中にある広場に辿り着いた時それは起こった。
遠くに山々が見え、広がる青空が気持ち良い……山々??此処ってそんな風景だっけ?
何か違う!そう思って慌てて辺りを見回した瞬間背後で凄まじい爆音が聞こえた。
この間のゆるキャラのイベントの合図の音なんかと比べものにならない。
気付かないなんて絶対有り得ない。
即座に振り向くと遥か遠くにだが確実に何かの空中建造物が爆発しながら山々の向こうに垂直に堕ちて行く。
結構な勢いで堕ちて行ったようだが、スローモーションで見ていたかのような感じだった。
あれはバベルの塔の縮小版?ラピュ◯?天空シリーズ系の城?エ◯トポ◯スの虚空◯?何らかの空中要塞?
いろんな空中建造物が頭をよぎるがどれかと言われると断言は出来ない。
でも、空中建造物って大抵監視目的だったり支配者の居城の場合が多い。
超強力兵器で武装していて天罰と言う名目でまあ、ビームだかレーザーだかで地上の気に食わない連中を薙ぎ払うのだ。
その後ヒーローたちの活躍によって破壊され今回見たように墜落していき、スリリングな脱出劇に展開していくというお約束だ。
以上の事が無くても重要拠点には違いない。
その何かが堕ちた。が、その後の爆発どころか爆煙も上がっている様子もない。
あれ?あの遠くの山々は何処にいった?周りの景色は何処にいった?
一体全体何を見たんだ?夢?幻?ヴァーチャル?
これも『引き寄せるモノ』の力……言いにくいなあ…『引き寄せるチカラ』でいいよな。
頭の中を整理しているとまた、爆音が四方からした。
前後左右の遠方に爆煙が見える。それぞれ赤、青、黄、緑の色が付いていた。
最初の爆音に比べ距離は近いが音はそれ程でもない。
が、爆音箇所の四方から物凄い勢いで空中を回転しながら何かがこちらの方に向かって来る?!
剣?そう気付いた時には頭上何十メートルかで、四本の剣がぶつかり合い光った。
一瞬眩しさに目を細める。光の中に十字架らしき影が浮かんでいる。
やはり剣?と思った時にはそれはまた高速回転しながら落下して来るじゃないか!!
逃げないとヤバイ。頭で分かっていても体が動かない。いや、それよりも早いスピードで剣は回転を続け落ちて来た。
スッと目の前数十センチ先に剣は突き刺さった。あれだけの高さから物凄い勢い落ちて来たのに見事なほど綺麗に衝撃波も無く初めから、そこにあったように地面に刺さっている。
高飛び込み競技なら間違い無く金メダル級だ。
感心している場合じゃない。まかり間違えば地面ではなく自分に刺さっていたのだ。
我に返るとホッとしてへなへなと腰を抜かしてしまった。
腰を抜かすぐらいで良かった。本当に命あっての物種だ。
古代的デザインの緑色を基調とした剣が手に取れと言わんばかりに佇んでいる。
数分して、やっと立ち上がると剣の柄に手をやる。
?!頭の中に何かが流れ込んで来る。
…ゴッドス◯イヤー…カクニン…。
ゴッドス◯イヤー?そうか!四本の剣は上空で合体してゴッドス◯イヤーになったんだ。風、火、水、雷の四つの剣の力が一つになった世界を救う為の形。
その世界を救う為の剣に命を奪われそうになったけど。
まさか、大事の前の小事?!だったって訳じゃないよな。
若干ナーバスになりながらも力を入れて剣を抜こうとすると以外なほどあっさり抜けた。
また一つ引き寄せてしまった?!
ふふっ。こんな事もあろうかと。お手軽な折り畳みバッグを携帯しだしたのだ。
ともかく剣である形状が隠せれば良いのだ。
…運んでいる途中で四本の剣に戻ったりしないよな?
不安を抱えながら挙動不審にならない程度に大事そうに持ち帰った。
改めてゴッドス◯イヤーを見る。
これも『力あるモノ』だろうか?
あれだけの事があったんだ。無いわけは無いだろう。
だとすると、六芒星の頂点が六つ、中に出来る点が六角形なので六つ。合計12。
つまり、12の重要アイテムが必要という事になる。
今まで手に入れたモノ。何か前回の繰り返しっぽくなってしまうな。
王者の剣『エクスカリバー』
量産型未来(但しポケット無し)『ネコ型ロボット』
王者、いや勇者の剣『△トの剣』
皇帝の印『玉璽』
何を見る『心見◯窓』
伸縮自在『如意棒』
ご褒美『金の斧』『銀の斧』『鉄の斧』
盆栽武器『七支刀』
神殺しの剣『ゴッドス◯イヤー』
…『?ブロ◯ク』が10個はどうなんだ?
力を失った状態じゃないのか??
…そういや『白い貝殻の小さなイヤリング』
は交番に届けたけど、あれが『力あるモノ』だったらどうしよう。返してもらえるのか?
いや、普通の落とし物だったら関係無いけど…気になる…。
ひぃ、ふぅ、みぃ……?ブロ◯クを除いたら『イヤリング』で12だ。
ただ、?ブロ◯ク10個を使うんだったら充分過ぎる。
『斧』は各1で数えるよなぁ。
『ゴッドス◯イヤー』はまた、4本の剣に戻ったらどうなるんだ?
一度ゆう・れいひに連絡を取ってみるか。
電話をすると考えていたのか間を置いて言った。
「一度試してみましょうか」
試す?
「召喚プログラムですよ」
でも、持ってるディスクは…取り出すのか?
「こっちで用意します。なので…」
れいひはレンタル倉庫に預けたモノと手元にあるモノを使って召喚実験を行おうと提案してきた。
実は以前見せてもらった実験映像で使っていた魔法陣を残していて不定期に実験は続けているという。
「ただ、成功した試しは無いので閉鎖して他の方法を模索中なんです。なんだかんだ言ってもお金が掛かりますからね。
もちろん、この方法にこだわって個人的に試している人もいるんですが。
成功した時報告があるかは疑問なんですが」
れいひがそう言って翌朝会う約束をした。
目的地にはれいひの車で荷物を載せ向かう。
一応、れいひがノートパソコンもと言ってきたので持って来る。
車で2時間位だろうか山奥を抜け広い場所に出た。簡素な建物がいくつか見える。
どうやらここが映像の場所らしい。
部屋には魔法陣が大きく地面に描かれていて早速六芒星の頂点と点にモノを置いてみる。
?ブロ◯クは10個をまとめて置く。
武器はともかくネコとかは全体で見た時バランスが悪いように思う。言っても見た目だからな。力が備わっていたら関係ないか。
れいひが自分で持ってきたノートパソコンを起動する。程なく召喚プログラムの画像が浮かび上がる。
「じゃあやってみますね」
れいひは内蔵のカメラで地面の魔法陣に合わせるとルシファーを召喚する…。
来るのか?来るのか!ルシファー!?
が、画面にいかにも悪魔な感じのコウモリのような漆黒の翼を持つ角の生えた大きめなサイズの堕天使なグラフィックが出て来ただけだった。
地面の魔法陣の方も何ら変化ない。
「何も無しか…。やっぱりルシファーは重いのか?」
れいひは言って軽い?悪魔や精霊、お化けなどをいくつか打ち込むがグラフィックが変わるだけで何かが起きてる様子は全くと言っていい程ない。
さすがにQ◯郎とか鬼◯郎はいろんな関係上出ないだろう。出たらルシファーより驚くというか大問題だ。
その後モノの位置を変えたりしたが同様だった。
「全部試すには時間はないし。何か一つでも進展があれば」
パターン全部試すんだったら何パターンあるんだ?数学の問題だな。どういう計算だ?
位置を変えるだけでも大変だし、例え全パターン試したとして合っているかどうか分からない。
「そのパソコンも何の変化も無いですもんね?もしやと思ったんですが」
れいひはこちらのノートパソコンをみるが、やはり起動すらしない。
結局時間を無駄に過ごしただけだった。
しかも二人だけだったので配置替えとかで動き回って疲れた。
それでもれいひはにこやかに
「まあ、時間がある時別のパターンで試してみましょう」
言ってパソコンの電源を落とした。
帰りの車内でも色々と話すが、推測だけの話に終始するしかなかった。
「今更ですが、ディスクはダミーで…」
れいひは不安気に話し出す。
ダミー?どういう事なんだ?
「ダミーと言うかカモフラージュで水面下で別の事が進んでいるんじゃないかって思う時もあるんです」
れいひは言うが、ディスクも今のところ水面下な気もする。
でも何が進んでいると言うんだ?世界征服?人類滅亡計画?あと何かないかな?
「すでに世界のいろんなモノがすり替わってたりするかもしれませが」
要人すり替え計画か!それこそ悪魔が召喚出来ればあり得る。そういう事に対抗する手段なのか?毒をもって毒を制す?
「あくまで召喚出来ればですが」
問題はそこだ。対抗手段らしきものはあるのに使えるかどうか分からない。
伝家の宝刀のはずなのに、宝の持ち腐れ状態?
まあ、何も起こらなければ良いんだけれど。
起こっても取り返しの簡単につく程度なら、むしろ起これと思ってしまう。
好奇心とのせめぎ合いだ。
「今日はお疲れ様でした。ゆっくり休んで下さい」
荷物を再びレンタル倉庫に預けアパートまで送ってもらう。
車の運転などで疲れているのは彼のはずだが、労いの言葉を掛け去って行った。
『くたびれ儲け』
そんな言葉が頭に浮かび溜め息をつく。
……あれ?これって何か折ったよな?
すぐに答えは出たが、そんな事を考えながら家に入るのだった。




