その11
急に長くなってしまった。
バランスが非常に悪い(笑)
ちょっとした折り返しのつもりです。
その11
「七支刀」を手に入れた!
あの「七支刀」である。どのかって?それは後ほど。
近所が何やら騒がしいと思ったら公園で朝から『ゆるキャラ』のイベントをしていて、ビックリする程大勢の人が集まっていた。
どこを見渡しても人、キャラ、人だ(笑)。
いまや『ゆるキャラ』は有名無名含めごまんといる。集客力もキャラによったらトンデモナイ事になるらしい。
地域や商品、様々なアピールの為誕生した彼らは成功すれば良いが、陽の目を見ないまま忘れさられている者も少なくない。
こんなにいるんだったら生き残りを掛けたサバイバルな感じで『ゆるキャラ◯双』とかいうアクションゲームとか出そうだ。
公園のあちこちではミニイベントをしていてゆるキャラたちやスタッフが声を上げ笑顔ながらも必死にPRしている。
よく見れば、ゆるキャラに交じってコスプレをしている人もいる。
下手するとゆるキャラなのかコスプレなのか見分けがつかない(そこまではないか)。
それにしても、何処に行っても人混みで静かな場所を探すのも一苦労だ。
少し休もうと休憩所に行ったがベンチも石段とか座れそうな所も人でいっぱいだ。
ようやく、人気が少ない場所を見つけた。
木漏れ日の中腰を降ろせそう石があったので、足を進めようとすると遠くで大きな音がした。
そちらへ振り向いた瞬間何かがぶつかって倒れた?
すぐさま振り返ると、と、と、その何かは起き上がり立ち塞がった。
2メートルはあろうかというずんぐりむっくりの相撲取りのような巨漢のゆるキャラ?が立っている。
こいつは見た事がある。そうだ!あの70いくつだかの秘宝を集めるゲームのレアモンスターの『土偶』ではなく『は◯わ』だ。
目と口の部分がポッカリ穴が空いたようなシンプルなデザインだ。初代のタイプだな。因みにさっきの音はメインイベントの始まる合図だったようだ。
どうすれば良い?逃げるか?戦うか?
『は◯わ』と対峙したまま立ち尽くしていると、ゴトンと『は◯わ』の足元から何かが落ちた音がした。
やつは飛びのくと長細い箱が出て来た。
よくそんなのが入っていたなと思っていると、やつは触手のような両手で箱を差し出して来た。
『豪華粗品』。いまやネタでしかない様な事が書かれている。
貰っても良いのか?だいたい何が入っているんだ?
悩んでいるとはっきり言って押し付けられた。
受け取ったまま呆然としていると、『は◯わ』はその巨漢を揺らしながらピョンピョンと跳ねながら⁈人混みの中に消えて行った。
もしかして、何かのイベントの記念品か?
あっ、隅の方に『〜イベント事務局』の印が押してある。
って事は『は◯わ』を見つけ出せとかいうイベントの記念品と考えた方が良さそうだ。
偶然とは言えラッキーだった。
開けると『七支刀』が入っていた⁈『しちしとう』!?なんで?!
細長い刀身の両刃に段違いに3本ずつ枝が生えたような刃が付いた剣だ。
『刀』とあるがやっぱ『剣』だ。
見た目は格好良いんだが、どう考えても戦闘用じゃない。引っ掛かってしょうがないだろう。
実際儀礼用らしいけど。
でもまあ多くの人が自分なりにアレンジを加えた七支刀をデザインしている。
んっ!あの『は◯わ』が落としたのなら武器として凄まじい力を……そうか!この七支刀は『は◯わ』を見つけたからじゃなくたまたま倒した?!からドロップアイテムとして貰えたのか?
と、するとこれは7回しか使えないのか?
一回戦う度枝部分の刃が折れるのか?じゃあ5回戦った後十手みたいになるのか?
それはそれとして、『粗』ではなく『豪華』だ。
「ほぉ~七支刀ですか」
不意の後ろからの声にビクッとして振り返ると20代後半だろうか?若い男が爽やかな笑顔で立っていた。
「イベントの景品にしてはお金かかってますね」
男は続けて喋るがこちらが不信に思っているのを感じてか自己紹介を始めた。
「こういう者です」
男は名刺を差し出す。七支刀の入った箱を置いて名刺を受け取る。そこにある職業と名前はこうだった。
『ゴーストライター ゆう・れいひ』
「そう、自称、人呼んで『ゴーストライター』です」
自称という発言はともかく(それもおかしいが)人呼んでっていうのは、周りの人間は正体を知っていると言う事か?誰の?有名人の代筆稼業とかか?名前はおそらくペンネームだろうが。
あれこれ考えていると、彼は雑誌を一冊鞄から出してきた。
マーだかミーだか◯ーだかメーだかモーだかの名の科学というかオカルトとかUFOとかをストイックに追求する超常現象を扱う雑誌だ。
彼は雑誌を捲り心霊についての特集ページを開いた。
何々?ゆう・れいひの不定期連載『田舎の廃病院で見つけた奇妙なモノとは? 未だ成仏出来ない何かとは何か?』
あぁ、ゴーストライターってそういう事か?
超常現象のなかでもゴースト系を主に扱っているライターって事か?紛らわしい。
…⁈あれっ?名前の所見落としていたが、よくよく見ると名前が『ゆう・れいひ』ではなく『ゆう・れりひ』となってるそ。
危うく見逃す所だった。軽くそこを指摘するが、彼は臆する事もなく
「よく気付かれましたね。そう、誤植ではありません」
どういう?…!やはりゴーストとは?
「共同執筆者というかスタッフというべきか?相棒でもあり、我々の代表ですかね」
そういう事か。なるほど、最後に会社名的らしのが記されている。
でも、何かガッカリだ。ゴーストライターの肩書きが逆に霞んで見える。
まあ、堂々と名刺にある時点でただ単に掴みだったのだろう。
それにその世界では有名かもしれないが、さほど興味や話題の無い人間のゴーストライターの事を聞かされてもあまり惹きつけられない。
そんな表情を見てかどうか分からないが、ゆう・れいひはトンデモナイ変化球を投げて来た。
彼はページを捲った…。
そこには『緊急特集!!新たな都市伝説!悪魔を呼び出すデータディスクを配り回っている人間がいる!?』
見開きのそのタイトルに止まってしまった。
悪魔紹介プログラム?違う!召喚だ。
ノートパソコンが動かなくなった原因。
修理しようにもそのディスクがあるから、恐くて出せない。気にするなと言われても気になる。
記事を読むとやはり車椅子の男に親切にした後ディスクをもらい召喚を試したが、どの人も何も呼び出せないまま終わったようだ。
各方面の専門家を集め大々的に実験をしたが、やはり失敗に終わる。
それでも今も尚、データディスクを手にしている人がいると言う。
…と、なると、あの車椅子の男は何の為にディスクを配っているのだろう?
それとも特別な方法があるのか?
「思い当たる節があるようですね」
れいひが話掛けてきたが考える方に集中して答えられなかった。
「…◯◯さん」
「えっ⁈」
突如名前を呼ばれ驚いてれいひを見る。
何故名前を…。一体こいつは何者だ?
彼はニヤリと笑うと言葉を継いだ。
「探しましたよ。やっと会えた」
こいつは何が目的だ?召喚プログラムか?
あれを貰う所を誰か見ていたのか?
「驚かせて申し訳ありません。いろいろ調べていてあなたに行き当たったのです。
簡単に言えば取材です」
丁寧に言って何か確信めいた目でこちらを見る。
取材?もう使えないだろうディスクの為にわざわざ?
受けてもいいが、すぐ終わるぞ?統計でも取っているのか?
「…エクスカリバー、ネコ型ロボット、ヘルメス…」
れいひが呟く単語に焦りを隠せない。この国の個人情報はどうなっているんだ!
何故この三つなんだ?
…この三つに共通する事と言えば、インターネットだ。
「お話、聞かせて頂けますね?」
?をつけたイントネーションだが明らかに強制だ。
断ったとしても、これからしつこく現れるだろう。
相手も他に持っている物全て知っている訳ではなさそうだし、こちらとしても召喚プログラムの事なども知りたいし、今その手の情報通とも繋がっておきたい。
承諾すると、れいひはにこやかに礼を言った。
「ありがとうございます。では、こんな所では何ですし、場所を変えましょうか」
視線は優しいがその視界に入ったものは、逃がさないように感じた。
れいひは人でごった返す公園を後にし、駐車場まで来ると小型のワンボックスカーに乗り込んだ。
「最近気に入ってる店があるんですよ」
れいひは嬉しそうに車を出した。10分程走らせると、車をコインパーキングに止めた。
「荷物は置いといてもらって結構ですよ。それとも持っていかれますか?」
一瞬迷ったが、荷物=七支刀の箱を後部座席に置くとれいひに付いて行く。
彼は喫茶店に入る。店の名前は『はじめから』。心踊るのは何故だろう?
店は古き良き時代を思わせる落ち着いた感じの内装だった。客は一人もいない。
「いらっしゃいませ」
あご髭を蓄えたロマンスグレーのマスターが渋い声で挨拶をする。
「奥、いいですか?」
れいひは、さほど広くない店内の奥のテーブルに視線を向け尋ねる。
「どうぞ。いつもありがとうございます」
マスターは返事をする。この様子だと常連のようだ。
「僕はコーヒーとサンドイッチで」
れいひは注文するとこちらを向き
「何でも頼んで下さい。経費で落とすので気になさらなくて良いですよ」
どういう理由で落とすんだ?やっぱ取材費?
「座りましょうか」
れいひは手前に座りこちらを奥に座らせる。
逃がさない気満載だな。
メニューを開く。お腹も減っていたのでお言葉に甘えてコーヒーとオムライスを頼む。
「まずは、取材を受けて頂いてありがとうございます。それと、あなたを驚せたというか怖がらせてしまった事をお詫びします。
何故、あなたの事を知ったのかを。
それと、記録させてもらいます」
れいひはICレコーダーを見せてスイッチを入れ、タブレット型のパソコンを取り出しこちらに向ける。
「こういう仕事をしてるといろんな情報が入って来るんです。もちろんデマもありますけど。
ネット関係の知り合いが、教えてくれたんですが、妙な履歴があると。
繋がっているのはその二つだけなのに、暫くすると片方が繋がっているのにその相手先のアドレスが特定出来ないと言うんです。
表立っては記事になっていませんが、ここ最近急激に増えていて調査も追いつかないらしいです。
あったはずのホームページの痕跡そのものが無くなっている。なのに、繋がった後がある。不思議な話でしょ」
彼はこちらに見えるように何か検索する。
「で、その繋がった先と言うのが」
視線が上がる。
「独自調査の結果行き着いたのが、あなたと言う訳です。本来なら、消えた先を調べたいんですが、探しようがないんです。だけど、数日前動きがあった」
画面上の検索に『泉のヘルメス』が打ち込まれている。
検索結果は0。泉やヘルメスとしては出るんだろうが、ピンポイントでは出てこないらしい。でもあれはどっかのサイトのバナー広告から入ったんじゃあ?どうだったっけ?
しかし、独自調査ってその知り合いに聞いただけなんじゃないのか?
「失礼ですが後でお宅のパソコンの履歴を見せて頂きたいんです」
直球で来たな。まあ、他にも聞きたい事もあるだろうし、 こちらとしても、調べて欲しい部分はある。
「あくまで簡単な確認です。さすがに持ち帰ってまで調べはしません」
そうは言うが、実際確認してみてどう変わるか分からない。
一応承諾すると、れいひは礼を言い丁度運ばれて来た食事に口にする。
れいひは軽く自分の事を話ながら、タブレットをいじる。
久しぶりにオムライスを食べたが美味しかった。
「先程の記事ですが、あなたもディスクを貰いましたね」
れいひは確信して言う。
隠す必要もない。自分でもあんなに分かりやすい反応してしまったし。
待てよ?起動はしたが結局絶妙なタイミングの停電で失敗したじゃないか。
これも他の人たちと同じくダメなやつだろう。
一応ディスクについての事を全部話す。
彼は嬉しそうに話しだす。
「そのパソコンも見せてもらえますか?今までの事例としては無いですから。
偶然に見えて何かがあるのかもしれない。
でも、ルシファー率高いですね。分からなくはないですが。悪魔の王を従えてみたい気は怖いものみたさ含めて分かりますし。神様や仏様も呼び出そうとした人たちもいましたからね。
後でお話しますがルシファーについては興味深い話があるんです」
そう言って彼はタブレットを操作すると召喚プログラムに関するいくつかの映像を見せてくれた。
召喚事例と書いてあり、本来召喚したかったであろうモノの名前がある。
その中でもルシファーの事例はいくつかあるようだ。
そうは言っても、どれも失敗してる訳だしなぁ。
れいひは映像を再生する。
ほとんどがパソコンを起動し、召喚したいモノを打ち込み決定する。
が、画面上で悪魔なり天使なりが魔法陣から召喚されて終わり。
召喚プログラムという名のデータベースなだけなのか?
かと言って説明文がある訳でもない。
時期?場所?状況?何が必要なのか?
これだったら、ゲームの体験版の出来損ないみたいだ。
宣伝としても、記事として載ってはいるが、成功しているとは言い難い。
「これです」
れいひは雑誌主催の映像を再生する。
そう言えば、各方面のプロを呼んで試したとか言ってたな。
映像はスタジオだろうか?テレビ番組みたいに司会が出て来て、各方面のプロがネームプレートが置かれた長机を前に座り、セットの中央に六芒星の魔法陣が描かれている。
司会者が各方面のプロを紹介し、この番組の主旨と簡単な流れを話すとすぐパソコンを載せた台が運ばれて来る。
ディスクをパソコンに入れ起動し、エンジェルを召喚するが、結局画面上に可愛らしい羽のある子供のよくある天使のグラフィックが出て来ただけだった。
司会者が説明する。
「これだけだとなんの変哲も無いデータディスクなんですが、実はそれだけではないんです。
このディスク、コピーする事や移行する事、何より解析が出来ないんです。解析が出来ないと言うのは語弊があります。解析は出来るんですが、ただプログラムが組まれているだけの物なのです。
しかもこのプログラムを再現しようにも出来ないと言う…。
ディスクはみなさんの協力もあって一定の数量が集められました。
そして、今日各方面の専門家によって、様々な方法を試しこの召喚プログラムの成功を目の当たりにしようではありませんか!」
れいひを見ると真面目な顔をして頷いた。
映像の続きを見る。
スタジオから何故か外?に切り替わる。
暗く物々しい雰囲気の中地面に六芒星の魔法陣が描かれている。
?ディスクは使うのか?そんな疑問が浮かぶ。
すると、中年の学者風?の男が現れノートパソコンを12台を六芒星の頂点及び交差した点に置く。
12台を無線で連動した状態で召喚を試みるが…失敗。
また画面が切り替わる。どうもこの実験の為に何ヶ所かに分けて魔法陣を描いているようだ。
次に霊媒師を名乗る女が同じように、神水で清めたという水晶球を点に置く。
神水で悪魔を?と思ったが女が言うには純粋に力として使うようだ。
魔法陣の中心で何やら仰々しい呪文を唱えキーボードの決定キーを力強く振り下ろしながらも人差し指で軽く叩く…が失敗。
そのアクションのギャップに苦笑してしまう。
次はテレビでも見たことある超常現象研究家の男が出て来る。
魔法陣の中心に若い男が椅子に眠らされ座らせているようだ。
研究家は依り代だと言うが、生贄にしか見えない。
照明が消されロウソクに火が灯り、雰囲気は充分だが…召喚どころか降霊すら起こる様子はない。やはり失敗だ。
次にプログラマーの男がパソコンの外部カメラで地面に描かれた魔法陣を画面の魔法陣と重ね合わせ(そんなこと出来たのか)試みるが何も起こらない。
淡々と画面が切り替わっては、実験が行われるが、蟻一匹すら召喚される気配は無い。
それを察してか、れいひも途中から早送りなり、スキップをして見せるようになった。
最後の実験が終わったが、何の盛り上がりも無かった。
こんなのテレビでしてたら、間違いなくヒンシュクものだ。
テレビ番組風に撮っているが記録映像としているから、失敗だけでも仕方ないところなのだろう。
「どうです?」
困った顔をして尋ねてくるれいひ。その気持ちも分からなくは無い。
「全部失敗に終わってますが、やりようによっては成功したんじゃないかと思うものはあるんです。
例えば、魔法陣を描く事とその点に力のあるモノを置いてパソコンと連動させる方法は有りだと思うんです。
実を言えば、今見てもらった方法を組み合わせたり、手順を変えたりしながら別で試してるんです。
結果は惨敗でしたけど。
ただ、僕が思うに根本的に力が足りないから失敗してるじゃないかと。
まあ、それだと何の為の召喚プログラムなのかと思いますけどね。
こうなるともう、プログラムなのか、プロブレムなのか分かりませんが。
僕が言うのもなんですが都市伝説としての領域を出ないんですよね。
でもディスクに関しては、これ以上の解析も出来ず相変わらず謎のままですが。
これだけ配り歩いていると、簡単に召喚出来たら怖いと言えば、怖いですけど。
もしかしたら、このディスクは悪魔からの挑戦状なのかもしれません」
れいひはいつのまにか頼んでいたホットケーキを食べ終え、3杯目のコーヒーに口をつける。
「で、ルシファーです」
そうだった。何か言ってたな。
「聞いたことありませんか?『ルシファー再天使化計画』と言うのを?
まあ、この召喚プログラムが広まり出してから噂になりだしたんですが」
ルシファー。
神の絶大の信頼を受け天使を束ねる天使長にして12の翼を与えられ明けの明星と呼ばれし美しき天使。
天使の最上位である熾天使(してんし、セラフィム)より上だったと言う。
そんな彼が 何を思ったか神に逆らい軍団を組織し、弟ミカエルを総司令とした神の軍団と戦い…敗れる。
堕ちた天使、魔界の統治者。氷結地獄の凍った地面にお尻がくっ付いてなければ、魔界は無かったかもしれないが、代わりに天界戦争は続き世界は大変な事態になってたかもしれない。
その魔界の王が『再天使化』?
そんなこと許されるのか?
疑問ばかりが浮かぶ。
「ルシファーは今、心底猛省し、天界への復帰を願っていると言うんです。
もちろん配下に知られる訳にはいかないのでひた隠しにしていると言います」
魔界の王がひた隠しにしている心うちをどこで知ったんだ?
見透かしようにれいひは続ける。
「ある場所で、降霊の儀式が行われました。
その時依り代の女性が切々と語ったと言うのが始まりだと言われています。
配下の悪魔たちがこの事を何処かで聞いているんじゃないか?
大丈夫らしいですよ。悪魔たちはそんなもの人の戯れ言だと思って聞き流しているみたいですから」
聞き流してるって、どこで知ったんだ?
「ルシファーは召喚され地上に顕現し力を取り戻したら、新しいエデンを作り配下の悪魔を一掃し現世をより良い世界にし、神に許しを請い、再び天界の門をくぐり、末端でも良いから力になりたいと言う事です」
最もらしい話と言えば話だが。どこまで信じられるのか。
「その為ルシファーを召喚し新しいエデンの最初の人間になろうとしてるらしいですよ。
この手の話は形を変えて現実世界でも飛びつく人は多いですから。
もちろん、エデンと言っても『黒いエデン』じゃなきゃ良いですが」
冷静な言葉がライターの本分を思わせる。
成る程、詐欺の手口な気がする。そもそも悪魔の言葉だから疑ってかかってもおかしくない。しかも、頂点に立つ王ルシファーなのだ。…最も召喚が確実に出来ればの話だが。
れいひは腕時計と窓の外を見る。明るいが時間は夕方に差し掛かっている。
「すみません。つい長居してしまいました。マスター、お会計お願いします。領収書もいつもので」
れいひはこちらとマスターに謝りながら、財布を出しレジに向かう。
レトロなレジの近くにノートが置かれていて開くと客が簡単なコメントを残している。
「そうそう、せっかくですから記念に何か書いて記録していかれたらどうです?」
「そうして頂けると私も嬉しいです」
マスターは朗らかに笑う。
それならと、『また、来ます。オムライス美味しかった』
と書いたが、何か、子供のコメントだな。
「いえいえ、ありがとうございます。これを読み返すのが、楽しみなんです」
「こういうコメントって人それぞれで面白いですよね。想像力をかき立てられるというか。僕も書いとこう。マスター、いつもすみません。ご馳走様でした」
れいひは爽やかに挨拶して領収書を受け取った。
喫茶店『はじめから』を後にして取材もあるので自宅に向かう。
次来た時『つづきから』の看板もある事を期待しながら。
途中、公園の近くを通るとイベントはまだやっているようだ。
アパートの前で降ろしてもらい、れいひは車を駐車場に止めて戻って来る。
「綺麗にされてますね。気になるものもありますが」
大きな箱が部屋を切迫しているから目につくのはしょうがない。
「エクスカリバーとか、ネコ型のロボットはこの箱ですか?」
興味津々の目が向けられる。
期待に応じて箱を開けていくとれいひから感嘆の声が上がる。
それを聞いて何と言うかほっとした。
本音を言えばネットの画面上ではなく誰かに知ってもらいこの事を共有したかったんだと思う。
「写真撮っても良いですか?」
言って、すでにカメラを構えている。
ここまで、はしゃぐとは思わなかった。
「これがエクスカリバー?鞘は無いんですか?量産型ネコは黄色いなあ。ポケットは?無い?残念過ぎだなぁ。玉璽?いつの何処のだろう?斧のセット?正直に答えないとダメなんだなぁ。△トの剣ですよね?盾とか装備一式は揃ってない?」
もう、結構な数の写真を撮っている。デジタルカメラは際限なく撮れるのではと思ってしまう。
「?これは?」
棒を手に取ると尋ねてくる。如意棒と答えて、はっとする。
「如意棒ですか?伸びろ如意棒!」
れいひの無邪気な掛け声に如意棒は伸びるが、ギリギリ何処にも当たらず止まる。
「戻れ如意棒」
次は冷静に命令すると如意棒は元の長さに戻る。
れいひは手に持った如意棒に目を遣り、そしてエクスカリバー等を見渡すと、ゆっくりとこちらを見つめてきた。
「……」
しばしの沈黙が流れる。
1、2分だが随分長く感じられた。
れいひが静かに口を開く。
「あなたには何か感じると思ってましたが、その考えは間違ってなかった。
ここにある物は本物でしょう。いや、本物と言う言葉が妥当だとも思えません。おかしな言い方ですが本物以上ではないかと。
時空を超える事によって本来持っている以上の力を得ている可能性もあります。
もちろん 逆に弱まって可能性も否定出来ませんが。
それに鑑定のしようがない、と言うか鑑定出来る人がいないでしょう。
ただし、研究の対象にはなるでしょうが」
『本物』。れいひは冷静にだが、そう力強く言い放ち、続ける。
「 あなたには元々なのか、どうなのか分かりませんが『引き寄せるモノ』を持っている。
昼間の『七支刀』の一件も有りましたし。
あなたの事については、今は僕の胸にしまっておきます。
もちろん取材はさせてもらいますが、記事として載せるのは時期をみてという事で」
正直彼が何故そんな事言い出したのかは分からない。(そういや「七支刀」も唯の、いや只の『豪華粗品』ではないのは確かだ。)
こんな特ダネ級を狂喜乱舞することもなく(最初はしていたが)こちらを心配するような事を口にするのだ。
『引き寄せるモノ』?やっぱり超能力の一種と考えて良いのか。
そう言えば小さい時から……いやそんな不思議エピソードは全く無い。
どう考えても最近だ。この部屋にあるモノが物語っている。
だが、だから何なんだ?何なんだ?何なんだ?
これから何を集めるんだ?何が集まるんだ?全くもって分からない。
巨大な悪と戦うとか地球の危機を救うとかの運命に巻き込まれてしまったのか?
完全に脳が混乱している。
「すみません。変な事言ってしまって。そうだ。パソコン見せてもらえますか?」
れいひは話しを変える。
ノートパソコンを渡すとれいひはいろいろ調べ始める。
電源も入る気配すらない。かと言って分解まではしないようだ。
なので、すぐ終わってしまった。
その後もう一台のパソコンの履歴を調べる。
しかし、繋がらない。少しいじくっていたようだが、何の成果も無かったようだ。
「ありがとうございました。後日また調べさせてもらいます。でも、この部屋大丈夫ですか?」
良いところを指摘してくれた。
丁度、レンタル倉庫を借りようと思っていた事を告げる。
「だったら車で運びますよ。手元に無いのは不安かもしれませんが」
渡りに船だった。ネコはどうするか困っていたし。
ここは、お言葉に甘えよう。
ネコの箱は中身の重量に対して未来の技術の結晶のお陰か、なんと二人で充分運べた。
エクスカリバー、△トの剣、斧三本、七支刀に玉璽、ネコをレンタル倉庫に預ける。
如意棒は護身用にと思いで預けなかった。
?ブロ○クや心見○窓もさほど邪魔にならないので置いておく。
心見○窓については、もちろん、れいひの興味を誘い(まあ、誰だってそうだろうが)トランプの数字当てなんかで、お互いに試してみたが、何故か心を読む事は出来なかった。
故障なのかと思ったが、れいひが帰った後テレビで試したら普通に使うことが出来た。
ひっそりとしか試せないのか?
ちょっとそんなことを思ったが使えるから良いか。
そんなこんなで取材が終わり
「ありがとうございます。良い取材が出来ました。本当だったら直ぐにでもネットとかに上げたいんですけど、今回は一時保留にしておきます。
危険とまでは言いませんが、あなたもわざわざ自分から発信するのはやめた方が良いと思います。
そう考えたから今まで黙ってた訳でしょう?」
れいひは心配そうに話す。
一概には言えないが、それもある。
「また何か有りましたら連絡下さい。僕からもちょくちょく連絡させてもらいますね」
真っ直ぐな目でこちらを見る。
最初は警戒していたが、彼は信頼出来る人間だと思う。
「ディスクの事ですが、そちらの方も時期をみてみます。もしかしたら、倉庫にしまったモノが使えるかもしれません」
それは言っていた魔法陣に使う『力』があるモノという事で、だろうか?
ゆう・れいひとの出会いは自分に何かが起きているかを知るキッカケになった。
それが何かと言われると答える事は出来ないし、これから本当に何か起こるのか全く分からないが。
ただ長いだけな感じが否めない(笑)
説明小説だな、こりゃ…。
そんな感じです。




