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世界
世界は、美しかった。
白銀の雪に覆われた大地。
遠くの碧く霞んだ山並みの間から、暁の太陽の光が零れ出していた。
白銀を緋く、緋く染めて行く。
遮るものも無く、僕のと所まで光が射してくる。
白銀の世界は、茜色の世界へ変わった。
僕は、言葉が出なかった。
ほんの一時。
ほんの一時の時間が、こんなにも愛おしいなんて。
この刹那を眼に焼きつけたいのに。
なのに、僕の瞳は次第にぼやけていった。
僕は、美しいも、愛おしいも感じられるようになっていった。
グルグルと胸の中に蟠っていた黒い感情も、
だんだんと、氷が解ける様にゆっくりと解けていった。
この世界がこのまま在れば。
いつか、あの沈んでは生まれる太陽のように、
生まれ変わって、今度はもっと優しくなれるだろうか。




