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葛藤
あの人を失いたくない。
強く、強く思った。
僕は、あの人を殺したくない。
・・・失いたくない。
あの人を失うくらいならば、この世界なんて無くなってもいい。
この世界ごと闇に呑まれて、壊れてしまえばいい。
「殺したくない。失いたくない。
嫌だ・・・。嫌だ嫌だ嫌だ。
なんで?なんで・・・知らない奴なんか・・。
なんで・・・助けるの・・・・。」
あの人は、”ヤミ”を殺すたびに、その穢れを少しずつ取りこんでしまう。
それが、どんどんと溜まって、いつか完全に呑まれてしまう。
まだ、まだ間に合う。
完全に呑まれていない。まだ。
なんで・・なんで、こんな世界を助けるの・・・。
僕は、ゴミのように打ち捨てられていた、ダウンタウンの片隅を思い出していた。
僕は、あの人さえ在ればいい。
この世界が、真っ暗な闇になろうとも。
いっそ、全てが闇になってしまえばいいんだ。
あの人は、悲しい顔をした。
あの人は、言った。
「この世界は、愛おしい。壊したくないんだ。」
命を捨ててまででも。
あの人の大切な人も愛おしんだ世界。
「汚いところもあるけれど、それだけじゃない。
ちゃんと、その眼で見るんだ。」
心を開いて。




