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約束
あの人は、ずっと旅をしてきた。
僕が拾われるずっと、ずっと前から。
あの人は、探していた。
”ヤミ”を葬りながら。
・・・殺せなかった大切な人を。
人でなくなったモノは、夜色に同化して人々を襲う。
なす術もなく、殺されていく。
大人も。小さな、小さな幼子も。
僕は、引き裂かれて死んでいる子供の死体を抱いて、
泣き叫んでいる女を見た。
・・・チクリ。
僕は、不思議に思って、胸に手を当てた。
別に血は流れていないし、傷も付いていなかった。
僕と旅をする様になって、再び雪がちらつき始めた頃、あの人は言った。
「俺は、闇に呑まれるかもしれない。
その時は、・・・・。」
あの人は、言葉を区切って僕を見た。
そして、ゆっくりと言葉を続けた。
「俺を殺してくれ。・・・俺が人であるうちに。」
僕は、旅をする。
いつか、あの人を殺すために。
僕はまだ、”失う”事がどれ程の痛みなのか解っていなかった。




