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心
ひゅぉぉ・・・
冷たく強い風が吹いて、僕はよろけてしまった。
大きな手が、僕を支えてくれた。
「・・・。」
僕は無言で、あの人の顔を見上げた。
左の口角を僅かに上げて、僕の頭をクシャクシャと混ぜる。
何だろう。今、温かくなった気がした。
なんでだろう。
少しだけ、ほんの少しだけ・・・。
涙が出そうになった。
こんな事は、今までに無かったのに。
僕たちは、旅を続けた。
夜になって僕が寝てしまうと、あの人は何処かへ出かけていた。
そっと、僕を起こさない様に。
僕は、気が付いていたけど、知らないフリをした。
帰ってきたあの人から、微かに漂う嫌なニオイも。
だって、あの人は笑うんだ。
・・・悲しそうに。
あの人は笑うんだ。
・・・痛そうに。
あの人は、教えてくれた。
”悲しい”時に泣くこと。
”嬉しい”時に笑うこと。
なのに、あの人は笑っているのに、何故か泣いている気がした。
拾われてから、どれくらい経ったのかは解らないけれど、
僕の身体中の痣はきれいに無くなっていた。




