9 破られた決まりごと
私が部屋に閉じこもって三日が経った。
その間私は一歩も部屋から出ずに過ごした。
だけど相変わらず姉さんは私の部屋を掃除する。
私がいようといなかろうと姉さんには関係ないのだ。7日に一度の決まった日、姉さんは私の部屋を変えないように掃除する。そんなことしなくても私は部屋の物をひとつも動かしはしないのに。
愚かな姉さん。
それから二日経っても私は川には行けなかった。
こんなにも川を離れたのは初めてだった。大好きな、大好きな川はもう私を嫌っているだろう。
いや、そもそも川は私のことなど気にはしていないのかもしれない。
私だけがあの川の特別だと思っていた。だけど川は簡単に男を受け入れてしまった。
私は嫉妬していたのだ。私だけの秘密の場所を簡単に侵入されてしまったことに。川は私のものではないのに。
なのになんて愚かな欲を抱いてしまったのだろうか。川を完全に所有することなどできない。川は川であって私のものではない。
うぬぼれていた。
私だけしかしらない川を私のものだなんて勘違いをしていた。
なんとも罪深く愚かであったのか。
こんな醜い感情を抱いていたなんてなんて馬鹿なのだ。愚かなのは姉さんではなく自分ではないか。つまらない嫉妬に駆られて川を五日も離れるなんて。
私は五日も閉じこもっていた部屋を飛び出し川に向かった。くるくると落ちる葉を除け、小さなお友達にあいさつをし、森を駆ける。
ああ、川よ。お許し下さい。
私はただ、あなたを愛しているだけなのです。