表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不変の部屋  作者: 瑞雨
45/50

45 不変を望む者



私がカンパニュラ好きになったのは、姉さんの秘密を共有してからよ。



カンパニュラの花ことばを知ってる?




カンパニュラの花ことばは『不変』





私と姉さんの願いは同じだった。


『変わらないでほしい』



ただそれだけ。


私たちが住む家も、秘密を共有する人物が私たちだけであるということ、あなたが愛しい弟であり続けること。私が死んでからは私の部屋が私が生きていたときのままであるということ。



もちろん、ランドル爺さんに乱暴されるということだけは変わってほしかったけれど。



私たちは、私たちの生活が変わらないことをいつも願っていたわ。


『秘密』はとても辛いものだった。姉さんが乱暴されることも、それを止めることができなかったことも、ただ祈ることしかできなかったことも、ランドル爺さんが床に伏せってからはランドル爺さんを殺すために少しずつ毒を与えているということも。



そのすべての秘密が私たち二人にとってとても辛いことだった。


けれどそれと同時に私たちは、私たちの生活が他の何ものにも侵されないことを望んでいたし、これ以上変化することを望んではいなかった。


例え体は穢れようとも私たちの心は変わらず清らかなものであったし、あなたが清らかな心をもったまま育ってほしいという願いだけはいつも変わらず持っていた。



私たちが変わらず、不変であるということは生きていく上で大切なことだった。



だから私はカンパニュラをいつも心に置いておくことにしたの。

『不変』という花ことばをもつカンパニュラに私たちの願いを託した。



死んでしまってからはなぜ私がカンパニュラを好きだったのかは忘れてしまっていたけれど、私は『不変』のカンパニュラをとても敬っていたわ。




私が望んだとおり、私の部屋は変わらないし、あなたの心がとても清らかなところも変わらない。家の下から3段目の階段がキシリと音を立てるところも変わらないし、私が川へ祈りに行くことも変わらない。



けれど姉さんは私を無視していたし、あなたと姉さんは年をとってしまった。




変わらないのは私だけ。




「私、変わらないことがとても素晴らしいことだと思っていたわ。でも、それは間違いね。だってチロも姉さんも変わっているのに、私だけが変わらないことがとても辛くて、悲しいの」




メリーは悲しくて仕方がないのに涙が出ない自分の『変わらない体』を疎ましく思った。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ