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不変の部屋  作者: 瑞雨
38/50

38 ランドルの死



まず、ランドル爺さんが死んだ原因だけど、チロ、あなたは知ってる?


ふふ、知らないわよねぇ。



これがまず一つ目の秘密よ。




ランドル爺さんが死んだのは私とリオ姉さんが原因なの。

姉さんはランドル爺さんを憎んでいた。

そう、




殺したいくらいにね。




ランドル爺さんはある日、病気で床に伏せってしまったわ。それはなんの病かは分からないけれど、きっとよくある病で、それは少し療養していれば治る、そんな病気。


けれどランドル爺さんはいくらたっても起き上がることができなかった。




それはなぜかしら?




ふふ、答えはとーっても簡単。

姉さんがランドル爺さんに毒を摂取させていたからよ。



姉さんはランドル爺さんを殺す気なんて全くなかった。殺したいほど憎んでいても、それを実行する気はなかったの。けれど、ランドル爺さんが病に伏せったとマリアおばさんに聞いてチャンスだと思ったんだわ。姉さんは度々ランドル爺さんの見舞いに行った。




その時、私たちは、豆とキノコと薬草で生計をたてていたでしょう?

豆を選り分けるのは姉さんで、キノコと薬草を選り分けるのが私の役目。


姉さんはいつまでたっても毒キノコとそうでないキノコ、それと毒草とそうでない草の見分けがつかなかったの。だから毒とそうでないものを選り分けるのは私の仕事だったわ。


毒ってね、使い方と分量さえ間違わなければ薬にもなるの。だから毒だからといって避けるのではなく、私はそれを積極的に摘んでいたわ。そして、それを街で売ってお金にしていたの。姉さんは毒とそうでないものの見分けがつかなかったけれど、私がそれをきちんと分別していることは知っていたし、それがあなたや姉さんが間違って手にしてしまわないように、自分の部屋に保管していたことも知っていたの。



姉さんは私たちが川に行っているのを止めなかったでしょう?

私とチロが二人きりになってしまうのに。


それは、私が川では絶対に姉さんの秘密を漏らさないということもあったけれど、私の部屋に保管されている毒草や毒キノコを姉さんが手にするのに都合がよかったからなの。



もちろん、私は姉さんが毒を持ちだしていることに気が付いていたわ。

だって自分で保管しているのだから、ちゃんとそれがどのくらいあるのかは分かっていたの。


けれどそれを姉さんに口にだして尋ねることはしなかったわ。

だって、分かってたもの。

姉さんがランドル爺さんを殺すためにそれを使ってるって。

私たちには絶対にそれを使わないって。



けれど姉さんはやっぱり優しくて、臆病だから、一気にランドル爺さんを殺すことはできなかったの。


まぁ、姉さんの見舞いの品でランドル爺さんが死んでしまったら、さすがのマリアおばさんにも気づかれない自信はなかったし、なによりも私の毒の知識はランドル爺さんから受け継いだものだから、ランドル爺さんがそれに気付かないという可能性は低かったのよ。



だから姉さんはランドル爺さんが気づかないように、そして一度に死んでしまわないように、じわじわと苦しんで死ぬように、少しずつ少しずつ毒を与えていったの。毒草や毒キノコをそのまま持っていくと簡単にばれてしまうから、粉末にして、薬に混ぜたりして分からないようにしてたみたい。


きっと普段のランドル爺さんなら毒が混ざっていることに気がついたでしょうけど、ランドル爺さんはもう年をとりすぎていたし、病気になったことで、視覚も嗅覚も味覚も衰えていたの。だから姉さんが少しずつ毒を増やしていってもまったく気づきもしなかったわ。



姉さんは私がランドル爺さんの見舞いに行かないことにいつも怒ったふりをして、何度も見舞いに誘ったけれど、本当は絶対に私に見舞いに行って欲しくなかったの。


だって私は絶対に毒に気がつくし、自分がランドル爺さんを殺そうとしている姿を私に見せたくなかったのよ。それにランドル爺さんと姉さんがいるところを見てしまったら、姉さんではなく私の方がランドル爺さんを殺してしまうと姉さんは気づいていたの。


私が余分にランドル爺さんに毒を摂取させて急死させないようにしなくてはいけなかった。だってそれで死んでしまったら、私はあっという間に殺人者として捕まってしまうだろうし、姉さんは私に罪を被ってほしくなかった。だから姉としての体裁を守るため、あなたに疑問に思わせないために姉さんは見舞いに行くときに私を誘った。


私はそれを断らなければいけなかったから、川へ行かなくてはいけない、川へ祈りをささげないといけない、という理由をつけてそれを断った。


それが私と姉さんの暗黙の了解だったの。


私が川へ行くのは、ランドル爺さんのもとから逃れるため、そして姉さんの罪を洗い流してもらうためだったの。死んでしまった私はそれをすっかりと忘れていたけれどね。


ただ、純粋に川を神聖なるものとして扱っていたのも事実なの。

だけど裏ではそんな思いもあったわ。

死んでしまってからは川への純粋な気持ちしか残らなかったけれど。



ランドル爺さんが死んだのは、私がわざと目につくように分かりやすく部屋に毒を保管していて、それを姉さんが持ち出して、病に伏せっていたランドル爺さんに薬を与えるという名目で毒を少しずつ与えていたから。



それがランドル爺さんが死んだ真実で、一つめの秘密。




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