表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不変の部屋  作者: 瑞雨
22/50

22 リックの正体



その日メリーは、いつものように川へ祈りを捧げ、3度石の上を往復した後、リックのことを考えていた。



リックは一体何者なのかしら。チロのことを知っているといって浮かれていたけれど、よく考えてみたら私、リックのことちっとも知らないわ。知っているのはお姉さんがいるということと、チロのことを知っているということ、年が19で私の一つ上だということ。



改めて考えるとリックのことをほとんど何も知らないことに気がついた。




チロはリックと会ったことがあるのよね。だとしたらどうして私に何も言ってくれなかったのかしら。




チロは何をするにもメリーの後をついてまわっていた。チロがリックと会っていたらメリーも絶対にリックと会っているはず。メリーはチロのことをなんでも知っていると自負していたし、メリー自身のこともチロにはなんでも教えていた。




もしかしたらチロはマリアおばさんのところに行ってからリックに会ったのかもしれないわ。




そう考えると辻褄が合う。自分の知らないところでリックと会っていたなら、メリーがリックを今まで知らなかったことも納得がいく。きっとチロはメリーのことも話していたのだろう。ただ疑問なのは10歳のチロと19歳のリックが一体どうして出会ったのか。次にリックに出会ったら、チロとどうやって出会ったのかを聞こう、そう決めた。



今はまだ日が昇りきっていないし、リックはいつも太陽が真南を通り過ぎてから川に来る。それはメリーがリックがここに来るのを許した時から毎日続いている。先日は珍しく朝から訪ねていたが、それ以降はそれまで通り昼を過ぎてから来ている。そしてぽつぽつと話をしてさよならをする。話の内容はチロのことであったり、メリーの森の友達であるキノコや木々、薬草についてだったり。考えてみればいつもメリーが話していた。


今日はリックのことを聞こう。



そう決めたらなんだかメリーは楽しくなってきた。


鼻歌まで歌いそうになりながらくるくるとスカートを翻して川を渡った。時折近づいてくる鳥に話しかけ、キノコに微笑む。川が太陽の光を受けてキラキラと光る様子を眺めながらリックを待った。





けれどその日リックは神聖なる川には来なかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ