12 許可
季節外れのカンパニュラは私を別人へと変えてしまうほどの魅力を持っていた。
この時私はほんの少し溢れだす青年への好奇心に胸が高鳴るのを感じた。
知りたい、
知りたい。
誰?
この人は誰?
知りたい。
たくさん知りたい。
この人のことを、知りたい。
「あなた、いくつ?」
「あ、ああ十九だよ」
私は青年が自分よりも一つ年上だったことに少し驚いた。決して年下と思っていたわけではなかったけれど、それでもなぜか自分より年が上だとも思えなかった。
「そう、私十八よ。あなたの方が年上だったのね。ごめんなさい」
「気にしてないよ。そのままでいて」
随分と失礼なことをしてきたように思う。だけど青年はそんなことは少しも気にしていないから口調も態度もそのままでいてほしいと、そう口にした。だから私はそれに甘えることにした。どうしてだかこの青年を年上に見ることはできない。普段ならたった一つでも年長者は敬うのに、この青年にはそれを感じさせない何かがあった。
けれど、そんな青年をとても好ましく思う。ついこの間まではあんなにも毛嫌いしていたのに、カンパニュラひとつで手篭めにされてしまった。それでも、それすら嬉しいと感じてしまうのはなぜだろうか。
この感情は何なのだろう。
とても嬉しくて、とても楽しい。
まるで心にぽっと灯りがついたみたいだった。
もっと話したい、もっと近づきたい。
青年のすべてを知りたい。
特にここ数年の青年を。
「私、あなたともっとお話したいわ」
「僕もだよ」
きっと久しぶりに話をする相手ができただろう。青年の瞳が自分を見てくれるのがこんなにも嬉しいなんて。
「あなたが、ここに来ることを、許すわ」
ついに私は、自分と小さな弟のチロ以外の人間がここに侵入する許可を与えた。
そう、『神聖なる川』へ立ち入る許可を。