婚約破棄の慰謝料、推しの投げ銭に全額課金します
王立学園の華やかな大講堂は、水を打ったような静けさに包まれていた。
豪奢なシャンデリアの下、壇上に立つ王太子殿下――ユリアンが、私に向かってビシッと指を突きつけている。
「エリーゼ! 貴様の数々の悪逆非道な振る舞い、もはや見過ごすことはできん! 男爵令嬢ミアへのいじめ、そして度重なる嫌がらせ! 貴様は王太子の婚約者として相応しくない! 今ここで、貴様との婚約を破棄する!」
ユリアン殿下の腕の中では、可憐なヒロインであるミアが「私のために、そんな……」と涙ぐんで震えている。
大講堂に集まった貴族の生徒たちが、ヒッと息を呑む音が響いた。完璧な断罪イベントのクライマックスだ。
本来なら、ここで悪役令嬢である私は「無実です!」と泣き叫ぶか、「こんな国、こちらから願い下げよ!」と高笑いして衛兵に引きずられていくのがお約束なのだろう。
だが、私は小さくため息をつき、静かに口を開いた。
「かしこまりました。婚約破棄、謹んでお受けいたします」
私のあまりにもあっさりとした返答に、ユリアン殿下とミアはポカンと口を開けた。
私は姿勢を正し、ドレスのポケットから綺麗に折り畳まれた数枚の書類を取り出した。
「ただし、今回の婚約破棄は殿下の一方的な有責によるものです。王家と我が公爵家で結ばれた事前契約に基づき、慰謝料として金一億ゴールドを請求させていただきます。こちらの書類にサインを」
「い、一億ゴールドだと!? 貴様、婚約を破棄されておきながら金銭を要求するのか!」
「ええ、当然です。契約書にも明記されておりますし、何より私の貴重な青春の十年間を殿下の王妃教育に費やしたのですから。一億でも安いくらいですよ」
私はスッとペンを差し出した。
大勢の貴族が見ている前で「払えない」とは言えない状況を完璧に作り出している。ユリアン殿下は顔を真っ赤にしてペンをひったくり、乱暴な手つきでサインを書き殴った。
「ふん! 金に汚い女め! これで貴様とも永遠に縁切れだ!」
「ありがとうございます。それでは、私はこれで失礼いたします。お二人の末長いお幸せを、心よりお祈り申し上げます」
私は深々とカーテシー(淑女の礼)を決め、ヒールの音をカツカツと鳴らしながら堂々と大講堂を後にした。
背後で「あんなにあっさり引き下がるなんて……」「ショックで頭がおかしくなったのでは?」というヒソヒソ声が聞こえたが、私の足取りは羽が生えたように軽かった。
***
公爵家の馬車に乗り込んだ瞬間、私は淑女の仮面をかなぐり捨てた。
「よっしゃああああああっ!! 一億ゴールド、一括ゲットぉぉぉ!!」
私は馬車の中でガッツポーズを決め、クッションに顔を埋めて歓喜の叫びを上げた。
婚約破棄? 追放? そんなもの、痛くも痒くもない。
むしろ、あの頭の悪い王太子から解放された上に、莫大な自由資金が手に入ったのだから最高だ。
なぜなら、今の私には「恋」よりも「権力」よりも、はるかに時間とお金を注ぎ込みたい『生きがい』があるからだ。
私は急いで胸元から、最新型の魔導具『スマート・タブレット』を取り出した。
これは、世界中のあらゆる映像や情報を魔法通信で受信できる、現代の必須アイテムである。
私は震える指で『魔力チューブ(動画配信アプリ)』を起動し、お気に入り登録している一つのチャンネルを開いた。
画面に映し出されたのは、薄暗くも荘厳な玉座の間。
そして、そこに座る一人の男の姿だった。
夜の闇を溶かしたような漆黒の髪。血のように赤い、切れ長の美しい瞳。
頭には立派な二本の角が生え、仕立ての良い黒の軍服を着崩したその姿は、息を呑むほどに色気があり、恐ろしいほどの覇気を放っている。
彼こそが、魔界を統べる絶対的支配者。
第十三代魔王、ゼクスト様。
そして――私の、この世界で唯一にして最高の『推し』である。
『……あー。人間界の言語で言うなら、こんばんわ、か。魔王のゼクストだ。今日も魔界の辺境から配信させてもらっている』
画面越しのゼクスト様が、低く響く極上のイケボで挨拶をする。
私は馬車の中で「ヒエッ……今日も顔が良い……声帯に国家予算住んでる……」と限界オタクのようなうめき声を漏らした。
そう、魔界の王である彼は今、なぜか『動画配信者』として人間界に向けて配信活動を行っているのだ。
理由は極めて切実だった。魔界が深刻な財政難(主に前代魔王の無駄遣いと勇者との戦争による賠償金)に陥っており、復興資金を稼ぐために、現魔王自らがネットの海に身を投じたのである。
『今日の企画は……「魔界の特産品であるスライムゼリーの食レポ」だ。……正直、味はしないし見た目も最悪だが、魔界の復興のためだ。食うぞ』
ゼクスト様が、不気味に蠢く青いゼリーをスプーンですくい、嫌そうな顔で口に運ぶ。
その絶妙なポンコツ具合と、時折見せる冷酷な魔王らしからぬ素のリアクションが、たまらなく可愛い。ギャップ萌えの暴力である。
しかし、彼のチャンネル登録者数はまだまだ少なく、配信のコメント欄も過疎っていた。
「ゼクスト様がこんなに身体を張っているのに……! スライムゼリーなんて絶対に美味しくないのに……!」
私はギリッと唇を噛み締めた。
魔王軍の復興資金はまだまだ足りない。このままでは、私の愛するゼクスト様が過労で倒れてしまう。
「……決めたわ」
私はタブレットの『投げ銭』のボタンをタップした。
たった今、ユリアン殿下からふんだくったばかりの慰謝料。その全額が振り込まれた魔法銀行の口座を、配信アプリに連携させる。
「王妃になんてならなくていい。私の人生、私の全財産は、ゼクスト様を養うために使うのよ!!」
私は震える指で、投げ銭の金額入力欄に『100,000,000G』と打ち込んだ。
***
魔界の最深部、魔王城の一室に設営された急造の配信スタジオ。
魔王ゼクストは、スライムゼリーの独特な食感に渋面を作りながらも、何とか飲み込んでコメント欄に視線を向けた。
登録者数三百人。コメントの流れはまばらで、「美味そう」「魔王がゼリー食ってて草」といった軽い反応がほとんどだ。
『……というわけで、栄養価だけは高いスライムゼリーだ。魔界の公式通販サイトで絶賛発売中だから、勇気のある人間は買ってくれ』
ゼクストが淡々と宣伝を終え、配信を締めくくろうとした、その時だった。
画面の端、投げ銭の通知欄が、突如として眩い黄金色に光り輝いた。
それは、通常の少額課金では決して現れない、アプリの仕様上の最高ランクの演出。画面全体に無数の星が降り注ぎ、ファンファーレのような派手な効果音が配信部屋に鳴り響いた。
『な……なんだ!? 魔王城への襲撃か!?』
ゼクストが反射的に玉座から立ち上がり、魔力を練り上げた。
だが、画面に表示された文字を見て、彼の動きは完全にフリーズした。
【エリーゼ 様から 100,000,000 G の投げ銭を受け取りました!】
『ゼクスト様! 今日も世界一顔が良いです! スライムゼリーの食レポお疲れ様です! 胃腸に負担がかからないよう、温かい魔界茶も飲んでくださいね! 復興資金の足しにしてください!!!』
「……は?」
ゼクストは、自分の目を疑った。
一億ゴールド。それは、小さな国が一つ買えるほどの途方もない金額だ。
魔界の年間予算の三分の一に匹敵する額が、ただの『動画の投げ銭』として一瞬で振り込まれたのだ。
『おいおいおいおい、嘘だろ!? バグか!? アプリの不具合か!? 一十百千万……一億!?』
普段の冷静沈着な魔王の面影は完全に消え去り、ゼクストはタブレット画面に顔を押し付けて桁数を何度も数え直した。
コメント欄も、この異常事態に完全にパニックに陥っていた。
【!?!?!?!?】
【石油王が降臨したぞ!!】
【一億G!? 国の予算じゃねーか!!】
【エリーゼって誰だよ!? 魔王のパトロンか!?】
【魔王様が震えてるwww】
『エ、エリーゼ……さん? いや、エリーゼ様……!』
ゼクストは画面に向かって、魔王らしからぬ裏返った声で呼びかけた。
『あ、あの、これは何かの間違いではないか? 一億Gだぞ? ゼロの数を間違えて入力したのなら、今すぐ運営に連絡して返金処理を……』
【エリーゼ:間違いではありません。ゼクスト様への純粋な愛と応援の証です。どうか、魔界のインフラ整備と、ゼクスト様の美味しいご飯代に使ってください。】
『愛と応援で一億……!?』
ゼクストは玉座にドサッと崩れ落ちた。
人間界の金銭感覚が狂っているのか、この女が狂っているのか。だが、画面に表示された残高は確かに一億G増えている。
『……エリーゼ様。魔界の王として、これほどの支援をただ受け取るわけにはいかない。必ず、この恩義は返す。魔界の復興が成った暁には、そなたを国賓として迎えよう』
ゼクストは画面の向こうのエリーゼに向かって、深々と頭を下げた。
その魔王の誠実すぎる対応に、コメント欄はさらに沸き立った。
【魔王が頭下げたぞ!!】
【一億Gのパトロンには勝てないww】
【エリーゼ様バンザイ!!】
***
一方その頃。公爵家の馬車の中で、私はタブレットを抱きしめて奇声を上げていた。
「きゃあああああっ!! ゼクスト様が私の名前を呼んでくれたっ!! しかも頭まで下げて……っ! 尊い! 尊すぎる!!」
一億Gという大金を一瞬で溶かしたというのに、私の心にあるのは後悔ではなく、圧倒的な多幸感だった。
推しに自分の存在を認知され、しかも推しの役に立てた。オタクにとって、これ以上の喜びがあるだろうか。
ユリアン殿下との婚約破棄なんて、この至福の瞬間のための単なるフラグに過ぎなかったのだ。
「国賓として迎えてくれるって……! どうしよう、魔界に行くためのパスポート(魔界通行証)申請しなきゃ! あと、向こうの気候に合わせたドレスも新調して……!」
私はウキウキと今後の推し活スケジュールを脳内で組み立てながら、公爵邸への帰路についた。
この時の私はまだ知らなかった。
たった一度の「一億Gの投げ銭」が、人間界と魔界のパワーバランスを根底から覆し、私自身の運命を想像の斜め上へと導いていくことなど。
***
翌日。
私は公爵邸の自室で、いつものように優雅なティータイム……ではなく、三台のモニターを並べて『ゼクスト様監視(推し活)体制』を整えていた。
「お嬢様。……また、随分と奇妙な機材を並べられましたね」
呆れたような声をかけてきたのは、私の専属執事であるギルバートだ。
彼は銀髪を綺麗に撫で付け、非の打ち所がない所作で紅茶をテーブルに置いた。
「おはよう、ギル。今日のゼクスト様のゲリラ配信に備えてるの。一億G投げたパトロンとして、配信開始から一秒で駆けつけるのがマナーでしょ」
「左様ですか。しかしお嬢様、王太子殿下からの婚約破棄の慰謝料全額を、魔界の王への『投げ銭』に使うなど……正気の沙汰とは思えません。公爵閣下(お父様)にはどのようにお説明されるおつもりで?」
「お父様には『有力な海外投資案件に全額突っ込んだ』って報告しておいたわ。嘘はついてないもの。魔界の復興は、長期的には人間界への利益にも繋がる立派な投資よ」
「投資先のCEO(魔王)が、現在スライムゼリーの食レポをしているわけですが」
ギルの的確なツッコミを華麗にスルーし、私はモニターに食い入った。
あの歴史的投げ銭事件から一夜明け、ゼクスト様のチャンネル登録者数は爆発的に増加していた。
『謎の石油王が一億Gを投げた魔王の配信』という噂がネット上で拡散され、冷やかし半分で見に来た人間たちが、ゼクスト様の圧倒的な顔面の良さと誠実な人柄に次々と沼に落ちていたのだ。
「ふふっ……いい傾向ね。ゼクスト様の魅力が世界にバレつつあるわ」
私が満足げに頷いていると、部屋の扉が乱暴に叩かれた。
「エリーゼ!! いるのか!!」
この無神経な扉の叩き方と、甲高い怒鳴り声。
私はため息をつき、ギルに目配せをした。ギルが扉を開けると、そこには案の定、怒りに顔を真っ赤にしたユリアン殿下が立っていた。
「あら、殿下。婚約破棄の翌日に元婚約者の部屋に押し入るなんて、どのようなご用件でしょうか?」
私は席を立たず、紅茶のカップを手にしたまま冷たく応対した。
「貴様……! 昨日私にサインさせた慰謝料一億Gの件だが、今すぐ無効にしろ!!」
ユリアン殿下は私のデスクをバンッと叩き、唾を飛ばして叫んだ。
「無効? どういう意味ですか?」
「あの一億Gが、王家の裏金から捻出される予定だった内密の資金だと、父上(国王)にバレたのだ! 父上は激怒し、私の王太子としての権限を凍結すると言い出した! このままでは私は廃嫡されてしまう!」
どうやら、あの馬鹿は自分の小遣い(裏金)で一億Gを払おうとして、見事に国税局にバレたらしい。
「それは殿下の自業自得でしょう。契約は契約です。サインした以上、支払う義務があります」
「うるさい! とにかく、金は返してもらう! お前のような金目当ての女には一円たりともくれてやるものか!」
殿下が私の腕を掴もうと手を伸ばしてきた、その瞬間。
『……おい。俺の大事なパトロン(国賓)に、気安く触れてんじゃねえぞ』
部屋の空間がぐにゃりと歪み、漆黒のゲートが開いた。
そこから現れたのは、画面越しで見るより何倍も大きく、そして圧倒的な魔圧を放つ男。
魔王、ゼクスト様ご本人だった。
部屋の空気が一瞬で凍りついた。
圧倒的な魔力と、息を呑むほどの美貌。画面越しに見ていた推しが、今、私の目の前に立っている。
「ゼ、ゼクスト様……!?」
私が悲鳴のような声を上げると、ゼクスト様は私を一瞥し、ふっと表情を和らげた。
「あんたがエリーゼか。……画面越しで見るアイコンより、ずっと綺麗な女だな」
「ヒッ……!」
推しからのダイレクトな顔面褒め。私はあまりの尊さに膝から崩れ落ちそうになったが、隣に控えていたギルがすかさず私を支えてくれた。
「な、なんだ貴様は! どこから入ってきた!」
ユリアン殿下がパニックに陥り、ゼクスト様に向かって指を突きつける。
ゼクスト様は赤い瞳を細め、虫ケラを見るような冷酷な視線で殿下を見下ろした。
「俺は魔界の王、ゼクストだ。……おい、人間のガキ。俺の国を救ってくれた最大の恩人に、これ以上汚い手で触れようとするなら、その腕ごと消し飛ばすぞ」
「ま、魔王……!?」
ユリアン殿下は腰を抜かし、無様に床にへたり込んだ。
「ひ、ひぃぃっ! 近衛兵! 近衛兵を呼べ!」
「無駄ですよ、殿下」
私は震える声(推しを前にした興奮によるもの)を必死に抑えながら、床を這う元婚約者を見下ろした。
「我が公爵家の結界は、王室の近衛兵ごときでは破れません。それに、殿下は先ほど『慰謝料を返せ』と仰いましたが、物理的に不可能です」
「な、なぜだ……!」
「全額、ゼクスト様への投げ銭として魔界の口座に送金済みですから。ブロックチェーン化された魔法送金は、王家の権限でも取り消せませんよ」
私がにっこりと微笑むと、ユリアン殿下は白目を剥いて泡を吹いた。
「お、終わった……私の人生、終わったぁぁぁ……」
「ええ、終わりましたね。ギル、この不法侵入者を王宮に送り返してちょうだい。それから、殿下が王室の裏金を横領しようとした件、国王陛下に直接ご報告する書状を手配して」
「畏まりました、お嬢様。……おい、つまみ出せ」
ギルの合図で現れた公爵家の護衛たちが、抜け殻のようになったユリアン殿下を両脇から抱え上げ、部屋から引きずり出していった。
部屋に静寂が戻る。
***
残されたのは、私とギル、そして魔界の王ゼクスト様だけだ。
「……助けていただき、ありがとうございます。ゼクスト様」
私はドレスの裾をつまみ、最上級のカーテシーをして見せた。内心は「生推し! 脚長っ! 顔ちっさ! 匂いめっちゃいい!」と限界オタクのパレード状態だが、ここでボロを出すわけにはいかない。
ゼクスト様は少し気まずそうに頭を掻き、私に向かって手を差し出した。
「いや……助けられたのは俺の方だ。エリーゼ、あんたの一億Gのおかげで、魔界のインフラは完全に息を吹き返した。本当に、何と礼を言えばいいか……」
「お礼など不要です! 私はゼクスト様の配信に救われ、生きる活力をもらっているただのファンですから! あの金額は、私の命の対価です!」
私が熱弁を振るうと、ゼクスト様は目を丸くし、やがてフッと吹き出した。
「変わった女だな。一億Gもポンと投げておいて、見返りを求めないなんて」
彼はゆっくりと私に近づき、私の手を取った。
そして、騎士が主君に忠誠を誓うように、その大きな体を折り曲げて私の手の甲に口付けをしたのだ。
「ひゃっ!?」
「だが、俺の気が済まない。魔界の王として、これほどの恩義を受けたままでいるのはプライドに関わる」
ゼクスト様が顔を上げると、その赤い瞳が熱を帯びて私を真っ直ぐに射抜いた。
「エリーゼ。……俺の城に来い。国賓として、いや……俺の隣に立つ『魔界の女王』として、あんたを迎え入れたい」
「……えっ?」
「昨日のあんたのコメントを見て、初めて人間の女を可愛いと思った。そして今、さっきあんたが堂々とあの馬鹿を論破している姿を見て、完全に惚れた。一億Gの借りは、俺の残りの人生すべてを懸けて、あんたを溺愛することで返させてくれ」
推しからの、まさかの逆プロポーズ。
あまりの展開に私の脳内サーバーは完全にダウンした。
「わ、私でいいんですか……? スライムゼリーより扱いづらい女ですよ……?」
「あんたがいい。俺の全財産……いや、俺自身をあんたに投げ銭させてくれ」
ゼクスト様が極上のイケボで甘く囁き、私を力強く抱き寄せた。
その胸板の厚さと、安心感のある香りに包まれ、私はついに理性を手放した。
「……喜んで、お受けいたします! ずっとゼクスト様についていきます!!」
***
数年後。
人間界では、馬鹿な元王太子が廃嫡され、多額の負債を抱えた王家が没落の一途を辿っていた。
一方、私は魔界に移住し、ゼクスト様の正式な妃(パトロン兼プロデューサー)として、公私ともに彼を支える多忙で幸せな日々を送っていた。
「ゼクスト様、今日の配信は『人間界の元王太子(慰謝料出資者)の現在』を解説するゴシップ企画です! 視聴率稼げますよ!」
「エリーゼ……あんた、本当に容赦ないな。だが、そういうところも最高に好きだぞ」
魔王城の配信スタジオで、ゼクスト様が私の頬に甘いキスを落とす。
コメント欄には今日も、【魔王と魔王妃、てぇてぇ!】【一億Gのパトロン妃、今日も有能】【スパチャ婚最高!】という弾幕が滝のように流れている。
婚約破棄された慰謝料を推しに全額課金したら、推しに溺愛されて世界で一番幸せな女になってしまった。
私の最高の『推し活』は、まだまだ終わらない。




