表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/12

episode7

♂ハヤト

マナトとマヤの義理の兄 イケメン サッカー部

♂マナト

マヤの双子の弟でハヤトは義理の兄 霊媒co

︎︎ ♀マヤ

マナトの双子の姉 占いco

♂ソウタ

シュウの親友 占いco

♂シュウ

やや褐色肌イケメンでソウタの親友

×ゲンジ

フィットネス部 二日目吊り

︎︎ ︎︎×ナツキ

褐色肌のギャル 最初の犠牲者

︎︎ ×ユミ

肌白ロング ナツキの友人

♂ケイスケ

空手部 熱血系

×リク

生徒会長のインテリメガネ 霊媒co 二日目襲撃

×サクマ

金髪ヤンキー 最初に襲撃に会う

︎︎ ♀マリン

サクマの彼女

episode7


投票会議までの時間、

もはや「グループ行動」という概念は消えていた。


誰かと一緒にいる理由がない。

誰かと離れる理由も、もう説明できない。


ただ、同じ場所にいないと不安で、

同じ場所にいると息が詰まる。


そんな矛盾だけが、廃校の中に残っていた。



乾いたバウンド音が、

静まり返った体育館に反響する。


キュッ、というシューズの音。

呼吸が荒くなる音。


ソウタがパスを出し、

シュウが受ける。


言葉はない。

だが、リズムだけは崩れない。


何度か往復したあと、

シュウが不意にボールを止めた。


「なあ」


ソウタも止まる。


「お前……本当にハヤトに従うのか」


真正面からの問いだった。


ソウタはすぐには答えず、

指先でボールを回した。


「……マナトが本物の霊媒師なら」


ゆっくり、言葉を選ぶ。


「この村は、まだ勝てる」


シュウは黙って聞いている。


「こんな状況でもさ」


ソウタは、苦笑する。


「希望を選びたいって思うのは……

俺の甘さかな」


シュウは一瞬だけ視線を逸らし、

それからはっきり言った。


「違う」


短く、強く。


「それは弱さじゃない。

お前の“強さ”だ」


ソウタは何も返さなかった。


ただ、

その言葉を胸の奥にしまうように、

もう一度ボールを床に叩いた。



教室(寝室)


薄暗い教室。


ベッドの縁に座ったマナトは、

ハヤトの手を両手で握りしめていた。


「……お兄ちゃん」


声はかすれているが、

逃げる調子ではない。


「本当に……ありがとう」


涙が落ちる。


それは守られた安心ではない。

選んだあとに残る重さが、

耐えきれずに溢れただけだった。


ハヤトは何も言わず、

ただ、マナトの髪を撫で続ける。


一定のリズムで。

落ち着かせるように。


少し離れたところで、

マヤが二人を見ていた。


「……マナト、ちょっとだけ見直したかも」


照れ隠しのように鼻で笑う。


ハヤトは即座に言った。


「信じてる、マヤ」


迷いのない声だった。


「大丈夫」


マヤは、静かに答える。


「明日になれば、

ちゃんと分かるから」


その言葉の裏に、

どんな意味が含まれているか。


この時、

誰も気づかなかった。



投票会議が始まった瞬間から、

空気は荒れていた。


誰もが分かっている。

今日はもう「議論」じゃない。

結末を確認するだけの場だった。


「ねぇ、私考えたんだけど」


沈黙を破ったのは、ユミだった。


あまりにも唐突で、

だからこそ全員の視線が一斉に集まる。


声は高い。

わざと明るさを含ませ、

普段より少しだけ饒舌に聞こえる。


「やっぱり、マリン吊らない?」


その言葉が落ちた瞬間、

食堂の空気が、はっきりと歪んだ。


まるで透明な膜が、

一斉に軋んだような感覚。


「はぁ!?」


マリンが即座に立ち上がる。

椅子が勢いよく引かれ、

床を擦る音が鋭く耳に刺さった。


「今さら命乞い?

笑えないんだけど」


声は強いが、

その裏に苛立ちと焦りが滲んでいる。


「クソギャルは黙ってて」


ユミは、間髪入れずに噛みつく。


「話が臭くなる」


吐き捨てるような言い方だった。

相手を黙らせるための言葉で、

説得する気は最初からない。


「っ、てめぇ……!」


罵声が飛ぶ。


だが、

誰も止めない。


止める理由が、もうなかった。


これはもう、

誰が正しいかを決める場じゃない。


誰を切るかを、

全員が確認し合う場だ。


「悪い」


低い声で、ハヤトが言った。


その声は大きくない。

だが、不思議と全員の耳に届く。


それだけで、

散っていた視線が一斉に彼へ集まる。


「もう、決まった」


言い切りだった。


相談の余地も、

選択肢もないという言い方。


「覚悟してる」


ソウタも続ける。


自分に言い聞かせるような声音で、

視線を逸らしたまま。


その瞬間、

ユミの足から力が抜けた。


膝が折れ、

床に手をつく。


「……ねぇ……」


必死に顔を上げるが、

視線が定まらない。


「違うの……」


声が震える。

喉がひくりと鳴り、

言葉が途中で途切れる。


「お願い……」


それはもう、

理屈でも反論でもなかった。


ただ、生きたいという音だった。


その姿を、

マナトは正面から見ていた。


目に涙が滲む。

だが、逸らさない。


――ここまで追い込んだのは、自分だ。


マナトは、はっきりと自覚していた。


“正解だと信じた選択”を、

自分は確かに重ねてきた。


それが今、

一人の命として、目の前にある。


「泣くな!」


ケイスケが声を荒げる。


感情を抑えきれない声音だった。


「自分で選んだんだろ!

責任持て!」


その言葉が落ちた瞬間、

空気が一気に張り詰める。


「……お前」


ハヤトの声が、

鋭く空気を切り裂いた。


低く、抑えられているが、

逆らう余地のない圧がある。


「マナトの何を知って言ってる」


一歩、前に出る。


それだけで、

ケイスケの喉が詰まる。


言葉が、続かない。


「マナトはな」


ハヤトは続ける。


視線は、

真っ直ぐマナトに向けられている。


「逃げずに、選んだ」


「自分が疑われる覚悟で、

自分が恨まれる覚悟でだ」


一拍。


「それだけで」


「もう十分だろ」


その言葉に、

誰も反論できなかった。


「強さは、人それぞれだよ」


マヤが静かに続ける。


声は柔らかいが、

否定を許さない芯がある。


ケイスケは、

視線を床に落とした。


肩の力が抜け、

小さく息を吐く。


「……悪かった」


それ以上、

誰も何も言わなかった。


空気は荒れたまま、

だが、もう逆流はしなかった。



投票結果


投票結果は、

見るまでもなかった。


モニターが光る前から、

全員が分かっていた。


――全票、ユミ。


疑いようもない結果だった。


数字が並ぶより先に、

空気がそれを宣告していた。


「……いや……」


ユミの喉から、

かすれた声が漏れる。


誰かに向けた言葉ではない。

自分自身に言い聞かせるような音だった。


「いやだ……」


首を振る。

小さく、何度も。


否定すれば現実が変わると、

まだどこかで信じている仕草。


「お願い……」


声が掠れ、

言葉の端が震える。


「なんでもする……」


その言葉が、

床に落ちた瞬間。


誰も視線を合わせなかった。


条件を出す段階は、

もう過ぎている。


ハヤトが前に出る。


逃げ道を塞ぐ位置。

距離を詰めるわけでも、

威圧するわけでもない。


ただ、そこに立つ。


それだけで、

ユミの足は止まった。


一歩も、

前にも後ろにも動けなくなる。


視線が彷徨い、

助けを探すように左右へ揺れる。


だが、

誰の目も彼女を見返さない。


その横から、

マナトが一歩、前へ出た。


足音は小さい。

だが、はっきりと響いた。


床に置かれた斧を見下ろす。


血の跡が、

完全には拭いきれていない。


それを見て、

一瞬だけ喉が鳴る。


それでも。


マナトは、

自分の意思で斧を握った。


柄に指をかけた瞬間、

力が入りすぎて指が白くなる。


「マナト……」


ハヤトが声をかける。


制止ではない。

問いでもない。


ただ、名前を呼んだだけ。


「僕がやらないと」


マナトは、

震えながら言い切った。


声は小さいが、

言葉は逃げていない。


「仕向けたのは、僕だから」


視線を逸らさない。


誰のせいにも、

状況のせいにも、しない。


腕が震える。

斧の先が、わずかに揺れる。


涙が溢れ、

頬を伝って落ちる。


それでも、

視線だけはユミから離さない。


「ごめんなさい……」


それは、

分かっている謝罪だった。


命乞いに対する謝罪じゃない。

同情の言葉でもない。


自分が選んだ結果に対する、

取り消せない謝罪だった。


斧を振り上げようとする。


肩に力が入る。

腕が持ち上がる。


だが――


「ごめんなさい……ごめんなさい……」


言葉だけが、

先に零れる。


「いや……いや……やめて……」


ユミの声が、

か細く重なる。


マナトの足が、動かない。


床に縫い止められたように、

一歩も踏み出せない。


呼吸が乱れ、

視界が滲む。


「ごめんなさい……ごめんなさい……」


謝るたびに、

腕の力が抜けていく。


もう限界だった。


次の瞬間。


ハヤトが、

斧を奪い取った。


動きに、迷いはない。


「マナト……もう、よくやったよ」


低く、はっきりした声。


責任を引き剥がすような一言。


マナトの手から斧が離れるより早く、

ハヤトは一歩踏み出す。


一秒もかけず。


躊躇も、

確認も、ない。


振り下ろした。


乾いた音が、

短く響いた。


ユミの声は、

そこで途切れた。


それ以上の音は、

この場に残らなかった。





夜になっても、

マナトは眠れなかった。


小さな声で、

何度も謝り続ける。


理由を忘れない謝罪。


ハヤトは、

その手を強く握り続ける。


「もういい」


一度じゃ足りない。


「もういい……」


それはマナトをどこか認める為の

壊れないための言葉だった。



翌朝


最初に聞こえたのは、

壁の向こうから突き抜けてくる叫び声だった。


長く、

息を吸う暇もないほどの叫び。


「――――――ッ!!!」


声は割れ、

途中で裏返り、

それでも止まらない。


寝起きの校舎に、

明確な「異常」だけが響き渡る。



シュウは、

布団の上で跳ね起きた。


悪夢を見たと思った。

息が荒く、喉が痛い。


「……はぁ、はぁ……」


額に浮いた汗を拭おうとして、

手が止まる。


――触れた。


隣の布団。


「……?」


反射的に、横を見る。


そこに、

ソウタがいた。


昨日と同じ制服。

同じ寝相。

同じ距離。


……ただし。


「……え?」


一瞬、理解できなかった。


目が開いている。

瞬きもしない。


喉の奥が、

嫌な形で鳴る。


「……ソウタ?」


呼ぶ。


返事はない。


肩に触れる。


冷たい。


その瞬間、

頭の中で“何か”が音を立てて崩れた。


「……っ、は?」


声が、自分のものじゃないみたいだった。


胸が詰まり、

息が吸えない。


布団を跳ね飛ばし、

体を起こす。


「……おい……」


震える手で、

ソウタの肩を揺らす。


動かない。


何度も、

何度も。


「……おいって……」


視線が、

首元に落ちる。


赤黒い染み。

乾ききった血。


「……ぁ……」


理解したくない。


理解した瞬間に、

全部終わる。


それでも、

目は逸らせなかった。


「……ソウタ……?」


喉が、

限界まで引きつる。


次の瞬間。


「――――――ッ!!!!」


叫びが、

勝手に溢れた。


腹の底から、

引き裂くような声。


「うそだろ……!!」


布団の上に崩れ落ちる。


「お前……お前……!!」


声が裏返る。


「昨日まで……昨日まで一緒に……!」


拳が、

シーツを掴む。


「……バスケ部のエース……」


涙が落ちる。


止まらない。


「俺から奪うんじゃなかったのかよ……!!」


答えはない。


あるのは、

冷たい体と、

取り返しのつかない現実だけ。


「ふざけんなよ……」


声は、

嗚咽に溶けた。



その叫び声で、

校舎が目を覚ます。


扉が開く音。

走る足音。


ハヤト、マナト、マヤ、ケイスケ――

次々と集まってくる。


だが、

誰も最初は近づけなかった。


布団の上で、

ソウタの体を抱え込むように座り込み、

壊れたように泣き続けるシュウ。


その姿が、

何より雄弁だった。


霊媒結果


沈黙のまま、

全員が集められる。


誰もが、

「聞きたくない」と思っている。


それでも、

言わなければならない。


マナトが前に出る。


顔は青白い。

だが、逃げてはいない。


「……霊媒結果を、言います」


声は小さい。


けれど、

昨日までの弱さとは違う。


「……ユミは」


一拍。


全員が、

無意識に息を止める。


「白でした」


言葉が、

静かに落ちる。


一瞬、

誰も理解できない。


だが、

次の瞬間。


「……クソォォォ!!」


ハヤトの叫びが、

空気を叩き割る。


拳が震える。


歯を食いしばり、

俯く。


自分たちで決断した


その結果が、

これだ。


その横で。


マヤが、

静かに微笑んだ。


誰にも向けていない微笑み。


ただ、

真実を知っていた者の顔。


「心配しないで、お兄ちゃん」


優しい声。


その一言で、

すべてが確定する。


マヤは、

偽物の占い師だったってことを

episode8は明日の20時に投稿予定

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ