episode6
♂ハヤト
マナトとマヤの義理の兄 イケメン サッカー部
♂マナト
マヤの双子の弟でハヤトは義理の兄
︎︎ ♀マヤ
マナトの双子の姉 占いco
♂ソウタ
シュウの親友 占いco
♂シュウ
やや褐色肌イケメンでソウタの親友
×ゲンジ
フィットネス部 二日目吊り
︎︎ ︎︎×ナツキ
褐色肌のギャル 最初の犠牲者
︎︎ ♀ユミ
肌白ロング ナツキの友人
♂ケイスケ
空手部 熱血系
×リク
生徒会長のインテリメガネ 霊媒co 二日目襲撃
×サクマ
金髪ヤンキー 最初に襲撃に会う
︎︎ ♀マリン
サクマの彼女
episode6
マリンの発言が落ちた瞬間、
食堂の空気が一段、重く沈んだ。
誰かが音を立てたわけでもない。
ただ、それまでばらついていた視線が、
一点に集まっただけだ。
ユミ。
彼女はその変化を肌で感じ取り、
わずかに肩を強張らせた。
「もう参ったって。部外者は黙ってて」
強気な言葉とは裏腹に、
椅子に深く腰を沈め、距離を取る姿勢を見せる。
「何の話だ?」
ソウタが首を傾げる。
だがその目は、すでにユミから離れていない。
「身内話。ほっといてよ」
ユミは吐き捨てるように言い、
視線をテーブルの端へ落とした。
これ以上踏み込むな、という無言の拒絶だった。
「ありがとう。
一回、落ち着いて……」
ハヤトが間に入る。
声は低く、場を均そうとする響きがある。
しかし、
「話し合いなんか、いいよ」
マリンが遮った。
勢いよく立ち上がり、
椅子が床を擦る音が食堂に響く。
その音だけで、全員の意識が彼女へ向いた。
胸の前で拳を握りしめ、
マリンは息を荒げる。
「もうユミで決まり。
決まりだって」
それは結論ではない。
これ以上考えたくない、という感情の吐露だった。
「もう黙ってて!!」
ユミが叫ぶ。
声は大きいが、
喉が張り詰め、どこか悲鳴に近い。
怒鳴ることでしか、立場を守れなくなっている。
沈黙。
誰も、すぐには口を開かなかった。
視線が行き交い、
誰が次に動くのかを探り合う。
その空白を破ったのはソウタだった。
「マリン、冷静になって」
声を抑えようとするが、
焦りが隠しきれない。
「マヤに黒出しされてるユミは、
俺目線だと白なんだ」
その言葉で、
場の一部がわずかに揺れる。
「じゃあ何?」
マリンはすぐに食い下がる。
一歩も引くつもりはない。
「ハヤトに白出ししたから、
ソウタとハヤトで人狼確定ってこと?」
「なんでそうなるんだ」
ソウタは思わず声を荒げた。
論理が通じていないことへの苛立ちが滲む。
「マリン、一回落ち着こう」
シュウの声は穏やかだったが、
その裏には、事態が制御不能に向かっているという焦りが滲んでいた。
だが、マリンは振り向かない。
「どうして!?」
吐き捨てるように叫ぶ。
声が上擦り、語尾が鋭く跳ねた。
「決まりでしょ!」
その場に立っているのが辛いのか、
マリンは無意識に体重を移動させ、
視線をあちこちに走らせる。
「ソウタ、ユミ、ハヤト」
指を折るように、名前を並べる。
「つまり、そこの三人が人狼。
もう決まりだよ!!」
それは論理ではなかった。
“三人に決めてしまわないと、次に疑う相手が自分になる”
その恐怖が、言葉を押し出していた。
「この流れ……まずいな」
ソウタが小さく呟く。
誰に聞かせるでもない声だった。
「そりゃそうだよ」
シュウは苦笑し、視線を伏せる。
「三日もこの状況だ。
昨日まで普通にいられた方が奇跡だろ」
誰も否定しなかった。
それ自体が、この場の限界を示している。
疑いは、
理屈よりも先に感情を連れて膨らんでいた。
その中心で、
ハヤトだけが動かなかった。
腕も組まず、
声も挟まず、
ただ全員の視線と立ち位置を静かに観察している。
やがて、
その視線がマヤに向いた。
「マヤ」
低く、はっきりとした声。
「昨日、何があった」
問いかけというより、
場を切り替える合図だった。
空気が、一瞬で締まる。
マヤは小さく息を吸い、
視線を落としたまま答える。
「昨日、大浴場で
ユミを占うことを伝えた」
誰かが、短く息を呑む。
「囲っている可能性を消すため」
声は平坦で、
感情を極力削ぎ落としている。
「そしたら……
やめないと殺すって、脅された」
言葉が落ちた瞬間、
場の温度が一段下がった。
「……それだけか?」
ハヤトが確認する。
「うん。それだけ」
マヤは付け加えない。
言い訳もしない。
その沈黙が、
かえって重かった。
「ほーら、やっぱ!」
マリンが弾かれたように声を上げる。
「そうだって!!」
勝ち誇ったというより、
安心したような声だった。
「ね、ねぇ……待って」
今度は、
ほとんど聞き逃しそうな声。
マナトだった。
誰もが一瞬、
その存在を思い出すように視線を向ける。
「……あ?」
マリンが鋭く睨む。
「い、いい案があるから……」
マナトは言葉を探すように、
唇を噛みしめる。
「いい案もなにも!」
マリンが被せる。
その瞬間。
「聞け!!」
ハヤトの声が、
食堂の空気を一刀で切り裂いた。
大声ではない。
だが、誰も言葉を挟まなかった。
昨日のゲンジを取り押さえたあの腕を、
無意識に思い浮かべてしまったからだ。
言葉と目に焼き付いたあとの姿が逆らう余地を与えない。
「マナトが、
今、戦ってんだ」
その一言で、
場が静止する。
マリンも、
ソウタも、
一瞬、言葉を失った。
マヤが、
ゆっくりと頷く。
「マナト。話しなよ」
マナトは喉を鳴らし、
深く息を吸う。
指先が震えているのを、
自分でも抑えきれない。
「今日の吊りは……」
声が掠れる。
「ほ、本当にごめんなさい」
視線が揺れ、
それでも逃げなかった。
「ユミ……
君に、死んでほしい」
空気が凍りついた
「ユミ……
君に、死んでほしい」
言い終わる前から、
マナトの喉はひくりと鳴っていた。
最後の一音が落ちると同時に、
食堂の中の音が消える。
誰かが咳をしたわけでもない。
換気扇の音が止まったわけでもない。
それでも、
確実に“静かすぎる瞬間”が生まれた。
数秒。
ユミは瞬きを一度だけした。
それから、口角を引きつらせる。
「……は?」
声は出たが、
自分の耳に届くまでに間があった。
「なに、それ」
一歩踏み出そうとして、
爪先が床に触れたところで止まる。
前に出たいのか、
距離を詰めたいのか、
それとも逃げたいのか、
本人にも分かっていない。
「姉弟揃ってさ……」
乾いた笑いを作る。
だが、喉が鳴って音が割れる。
「ほんとに、
何言ってんの?」
言葉を重ねるほど、
視線が定まらなくなる。
「ほら、やっぱ……」
ユミは周囲を見回す。
同意を探すように。
「グルじゃん。
黒囲いの偽占い師は、
あんたの方でしょ」
言い切った瞬間、
ほんの一拍、間が空く。
誰も、頷かない。
「ぁあ、ぁあ!!」
ソウタが苛立ったように声を荒げる。
「意味わかんねーよ!
おいハヤト、
こいつらお前の敵だぞ!」
一歩前に出かけ、
ソウタは止まる。
自分の声が、
思ったより大きかったことに気づいたからだ。
ハヤトは、
その場から動いていない。
腕も組まず、
表情も変えず、
ただ立っている。
「俺はソウタを信じる」
シュウが言った。
椅子の背に手をかけ、
立ち上がりきらない姿勢のまま。
「その案には飲めない」
声は低い。
だが、はっきりしている。
ハヤトは、
シュウの方を見なかった。
マナトだけを見る。
視線が合った瞬間、
マナトは反射的に目を伏せた。
「理由を教えてくれ」
短い言葉。
語尾は上がらない。
促すだけの声。
マナトは唇を噛む。
指先が、服の裾を強く掴む。
数秒。
言葉が出てこない。
「……ずっと」
声が喉で詰まる。
「怖くて」
息を吸い直す。
「言えなかった」
その一言を言い切るまで、
マナトは顔を上げられなかった。
誰も、遮らない。
椅子の脚が床を擦る音が、
やけに大きく響く。
「僕が……」
一度、深く息を吸う。
胸が上下するのが分かる。
「本当の、
霊媒師なんだ」
言い切った直後、
肩がわずかに落ちる。
力を使い切ったように。
「は?」
「今さら?」
「無理があるだろ」
短い否定が、
あちこちから落ちる。
だが、
どれも踏み込まない。
マヤは黙ったまま、
マナトの横顔を見ている。
目を逸らさない。
「……本当に?」
それだけを聞く。
「うん」
マナトは小さく頷く。
「は、は?」
ソウタの声は、驚きというより混乱に近かった。
頭の中で整理する前に、音だけが漏れた。
「今更、何言ってんだ?」
シュウは即座に否定した。
それはマナトを否定したというより、
“今この局面で出てくる情報”そのものを拒否する反応だった。
「おいおい、それは無理があるって」
ケイスケは眉間に深い皺を寄せる。
彼の頭の中では、
今まで積み上げてきた盤面が一気に崩れかける、
「……マナト、本当に言ってるの?」
マヤは弟を見た。
冗談であってほしい、という感情がわずかに滲む。
「僕なんかが霊媒師って……言えなかった」
マナトは視線を下げたまま答える。
自分がこの場に立つ資格があるのか、
今でも確信が持てていない。
「悪いが信じられない」
ケイスケは率直だった。
感情よりも、論理を優先した結果の言葉だ。
「対抗の白出しされた奴が、後から霊媒師だからユミを吊れなんて命令されても無理だ」
ソウタの言葉は、
盤面を守ろうとする必死さから来ている。
彼の中では、
“今さら出てきた役職”は信用できない。
「そうよ……ほんとアンタら死ねばいい」
ユミは感情を隠さなかった。
怒りと恐怖が混じり、
言葉が荒れる。
「……でもアンタは昨日、マヤに殺してやるって、聞いたの!」
マリンは縋るように言った。
論理ではなく、
“決め打てる材料”を探している。
「ただの痴話喧嘩よ!」
ユミは即座に切り返す。
ここで弱気を見せれば、
一気に流れを持っていかれると分かっている。
「それにそれは、なんの根拠もない」
ソウタが援護する。
「……そ、そうだよね」
マナトは一瞬、揺らいだ。
自分の言葉が通じていないことを、
はっきりと理解してしまったからだ。
「いや、マナトの意見は筋が通ってる」
ハヤトが口を開く。
それまで黙っていた分、
この一言は重かった。
場の空気が、
自然と彼の方へ引き寄せられる。
「お前なぁ!俺が白出してやってんだぞ。いくら兄弟だからって」
ソウタは反発する。
自分の占い結果が軽んじられたように感じた。
「筋が通ってんだよ」
ハヤトは感情を交えず、
断定した。
“説得”ではなく“評価”だった。
「は?」
ソウタは理解が追いつかない。
「マヤとソウタが初日占いでカミングアウト。
この時点で、どちらかが人狼確定なのは確かだ」
ハヤトは盤面を整理する。
誰にでも分かる事実から、
一つずつ積み上げる。
「そこで本当の霊媒師マナトがいるのに、
霊媒師としてリクが名乗り出た。
これだと、マナト目線どうなるか分かるだろ?」
「姉かソウタ、どちらかが人狼。リクも人狼になる」
シュウが理解を言語化する。
「でもリクは噛まれた。だから村人だ」
ケイスケが続ける。
ここまでは全員が共有している事実。
「そう。だからマナトは、こう考えたはずだ」
ハヤトが続けようとした、その時。
「お兄ちゃん……じ、自分で」
マナトが止める。
自分の言葉で説明しなければ意味がないと、
理解していた。
「あぁ、出しゃばってごめんな」
ハヤトは素直に一歩下がる。
「リクさんは一番最初に、人狼ゲームに詳しいから
騎士の人は守ってって言ってた」
マナトはゆっくり言葉を選ぶ。
「そんな人が……
命をかけた人狼ゲームで、
占い師と霊媒師、どちらも二択で吊れる状況を
自分から作り出すはずがない……」
「それに、霊媒師と偽れば騎士に守ってもらえる」
マナトが言い切った、その直後。
「……それに、霊媒師と偽れば騎士に守ってもらえる」
ハヤトが同じ言葉をなぞった。
偶然ではなかった。
二人は、同じ結論に辿り着いていた。
「お兄ちゃん」
「よく頑張った」
短いが、確かな承認だった。
「でも、それはリクが死んでからなら、いくらでも言える」
ソウタはまだ引かない。
論理ではなく、
感情が追いついていない。
「そうだけど……」
マナトの声は弱い。
「マナトの性格だ。
霊媒師と偽っていたリクがいない今だからこそ言える」
ハヤトはそう断じる。
「それに、ソウタ。俺を白出してんだろ。
マナトの思考を理解できる俺が、そう言ってんだ」
ここで初めて、
ハヤトは“自分の立場”を使った。
「今晩はユミに投票しろ。分かったな」
「ダメだから!!絶対!!」
ユミの声は、
完全に追い詰められた音だった。
「それが出来ないなら、
お前を完全な偽物の占い師と見る」
「マヤもいいだろ」
「それでいいよ」
マヤは迷わない。
「コイツ!!」
ソウタは歯噛みする。
「待ってくれ……もう俺、わかんねーよ」
シュウは正直だった。
「何がどうなってんだ……」
ケイスケも同じだった。
「ユミが吊られれば、どっちが本当の占い師か分かる」
「ユミが吊られれば、どっちが本当の占い師か分かる」
ハヤトはそう言い切った。
言葉を置くような口調だった。
説得ではなく、判断として。
誰かが反論するのを、
最初から想定していない声音。
「ソウタは、ユミに初日で白を出してる」
ハヤトは視線をソウタに向ける。
責めるでも、煽るでもない。
ただ、事実を確認するように。
「一方で、マヤはユミに黒を出した」
マヤの方へ一瞬だけ目を向け、
すぐに場全体へ視線を戻す。
「結果は真逆だ」
言葉のあと、
短い沈黙が落ちる。
誰も否定しなかった。
否定できなかった。
「……もし」
ソウタが口を開く。
声は低く、慎重だった。
「もし、マナトが本当に霊媒師だって言うなら」
一拍、間を置く。
「ゲンジはどっちだよ」
問いは単純だった。
だが、その意味は重い。
視線が一斉にマナトへ集まる。
マナトは、
逃げ場がないことを理解したように、
小さく息を吸った。
「……黒」
短い答えだった。
だが、はっきりしていた。
「……まだ信用してない」
ソウタは正直に言った。
声に怒気はない。
「だからこれは、俺目線じゃ賭けだ」
自分に言い聞かせるような口調。
「これでお前らが偽物なら」
言葉を探しながら続ける。
「あの世行っても、恨むぞ」
冗談めかした言い方だったが、
笑う者はいなかった。
「マジで言ってんのか?」
シュウが確認する。
軽口ではなかった。
「やってやんよ」
ソウタは即答した。
覚悟だけが先に立っていた。
「強気だね」
マヤが言う。
皮肉ではない。
「お前がな」
ソウタは視線を逸らしたまま返す。
そのやり取りを見ていたユミが、
一歩、後ろへ下がる。
椅子の脚に踵が当たり、
小さな音が鳴った。
「え……ちょっと待って?」
声が、明らかに揺れる。
「今じゃなくていいでしょ?」
誰に向けた言葉か、分からない。
「また夜……考え直そ?」
懇願に近い声音だった。
「……ほら」
マリンが小さく呟く。
腕を組んだまま、視線を外さない。
「やっぱ、吊られる側の反応じゃん」
決めつけるような声。
「……このクソギャル」
ユミは吐き捨てた。
だが、もう声に勢いはなかった。
その場に、
それ以上の言葉は落ちなかった。
誰も、
今すぐ決断できる状態ではなかった。
だからこそ、
結論は先送りにされる。
一度、
食堂から解散することになった。
episode7は明日の20時に投稿予定




