episode5
♂ハヤト
マナトとマヤの義理の兄 イケメン サッカー部
♂マナト
マヤの双子の弟でハヤトは義理の兄
︎︎ ♀マヤ
マナトの双子の姉 占いco
♂ソウタ
シュウの親友 占いco
♂シュウ
やや褐色肌イケメンでソウタの親友
✕ゲンジ
フィットネス部 2日目吊り
︎︎ ︎︎×ナツキ
褐色肌のギャル 最初の犠牲者
︎︎ ♀ユミ
肌白ロング ナツキの友人
♂ケイスケ
空手部 熱血系
♂リク
生徒会長のインテリメガネ 霊媒co
×サクマ
金髪ヤンキー 最初に襲撃に会う
︎︎ ♀マリン
サクマの彼女
episode5
ゲンジの死体を運び終えたあと、
その場には奇妙な沈黙が残った。
誰かと顔を合わせたくない、というより、
誰かと一緒にいても、どう振る舞えばいいのか分からない。
そんな空気だった。
誰も「解散しよう」とは言わない。
けれど、
一人、また一人と足を動かし始める。
誰かが歩き出せば、
それに続くように、
別の誰かも方向を変える。
声をかけ合うこともなく、
自然と小さなグループができ、
また静かにほどけていく。
この廃校に慣れたわけじゃない。
ただ、
人が死んだあとの時間のやり過ごし方を、
それぞれが無意識に探しているだけだった。
そうして、
重い空気を引きずったまま、
各自がそれぞれの場所へ向かっていった。
ハヤト、マナト、マヤの三人は、
言葉少なに大浴場へ向かった。
途中、分かれ道で足が止まる。
マヤは何も言わず、
女湯の暖簾のほうへ視線を向けた。
「じゃあ」
短くそれだけ言って、
マヤは一人、奥へ消えていく。
残されたハヤトとマナトは、
しばらくその背中を見送ってから、
男湯へ足を運んだ。
男湯
湯気が天井に溜まり、
床を伝う水が、静かな音を立てている。
ハヤトは湯船の縁に腰を下ろし、
足だけを湯に浸していた。
肩から上はまだ緊張が抜けきらず、
背筋は無意識に伸びたままだ。
その隣で、
マナトは腰を落とし、
兄の手に視線を向けていた。
指の関節は赤く腫れ、
殴った痕がはっきり残っている。
一部は皮膚が裂け、
乾ききらない血が薄くこびりついていた。
「……手、すごい怪我してるよ。痛くない?」
思わず漏れた声は、
湯音に紛れて小さく揺れる。
「こんなの平気だって。大丈夫」
ハヤトは軽く笑ってみせるが、
その表情には、どこか無理があった。
「そんなことないよ。ボロボロになってる……」
マナトは視線を落とし、
近くに置いてあった洗面器に湯を汲む。
「……貸して」
返事を待たず、
そっとハヤトの手首を取った。
布を湯に浸し、
慎重に、血と汚れを拭っていく。
力を入れすぎないように、
痛みが出そうなところは避けながら。
「……こんなことしかしてあげられないから」
ぽつりと零れた言葉は、
湯気の中ですぐに薄れていった。
「いいんだ」
ハヤトは低く、落ち着いた声で言う。
「お前がいてくれたら、俺は強くなれる」
マナトの手が、一瞬止まる。
布を握った指に、力がこもる。
「……僕は、お兄ちゃんがいると弱くなっちゃうよ」
ハヤトは足湯から片足を出し、
濡れた手でマナトの頭に触れた。
「お前はそれでいいんだよ」
掌が、
ゆっくりと髪を撫でる。
「必ず生きて帰ろうな」
マナトは顔を上げず、
小さく、静かに頷いた。
女湯
「殺してやる!!」
突然の怒鳴り声が、
浴場の空気を切り裂いた。
ちょうど服を脱ぎ終えたマリンが、
驚いて足を進める。
「な、なに?」
浴場の奥から、
ユミが顔を真っ赤にして飛び出してくる。
「こっち見ないで」
目を伏せ、
早足でその場を離れる。
「あ、あんたね!
せ、先輩に向かって……もう、マジぱなすぎ」
マリンは呆然としながら、
女湯の中へ足を踏み入れた。
そこには、
湯船の縁に座り、
静かに涙を流すマヤの姿があった。
「チョッ……なにごとなの?」
マヤは答えない。
「…………ん。」
短く、
それだけ。
マヤは立ち上がり、
何事もなかったかのように浴場を出ていく。
残されたマリンは、
その場に立ち尽くした。
「意味わかんなすぎなんですけど……」
ー
体育館
ボールが床を打つ音が、
乾いた体育館に反響する。
高い天井に吸い込まれた音が、
少し遅れて返ってくる。
ソウタとシュウは、
互いに言葉を交わさないまま、
ワン・オン・ワンを続けていた。
息が荒くなり、
シューズが床を擦る。
「はぁ……シュウ、足重くね」
ソウタがボールを弾ませながら、
肩で息をする。
「逆に、この状況で普通にプレイできてる
ソウタの方が変だっつーの」
シュウは短く返し、
ボールを奪いに踏み込む。
「そんなんじゃ、次期エースは俺だな」
「譲るかよっ」
言葉がぶつかると同時に、
再びボールが床を打つ。
音だけは、
普段の部活と何も変わらない。
だが、
ゴールが決まっても、
どちらも笑わなかった。
少し離れた場所で、
リクとケイスケがそれを眺めている。
リクは腕を下ろしたまま、
コート全体を視線で追っていた。
「流石の生徒会長も、
一人はキツくなってきた感じか?」
ケイスケは壁に背を預け、
半ば冗談めかして言う。
「怪しい動きがないかの分析です」
リクは一度も振り返らない。
ボールの跳ねる音の間に、
一瞬の沈黙が落ちる。
「強がらなくてもいいんだぜ」
「いいえ。本当にただの分析です」
淡々とした声だった。
感情がないというより、
感情を表に出す意味がないと言わんばかりに。
⸻
大浴場前
湯上がりの二人が戻ってくると、
廊下の端にマヤが立っていた。
壁にもたれず、
ただ、そこにいる。
表情は落ち着いていて、
女湯での出来事を
一切感じさせない。
「二人とも、遅かったね」
「悪いな。待たせて」
ハヤトが一歩近づく。
「戻ろっか」
「うん」
短い言葉のやり取り。
だが、
マナトは立ち止まったままだった。
一瞬、
マヤの顔を覗き込む。
「何か……あった?」
マヤは、
マナトを見る。
「どうして?」
視線がぶつかり、
すぐに逸れる。
「い、いや……何も無かったらいいんだ」
マヤは微笑まない。
けれど、
否定もしなかった。
その沈黙が、
かえって答えのようだった。
⸻
深夜
日付が変わるころ、
首元で小さな作動音が鳴る。
首輪が、
人狼以外を静かに眠りへ落とした。
廊下も、
教室も、
呼吸の音だけになる。
「本当にいけるのか?」
闇の中で、
低く囁く声。
「大丈夫。情報は絶対に漏らさない」
わずかな間。
これは、
勝つために必要なことだから。
その言葉だけが、
暗闇に残った。
⸻
翌朝
「うわぁぁぁ!」
叫び声が、
廊下を引き裂く。
反響した声が、
遠くへ消える前に、
皆が走り出す。
廊下の中央に、
無様に転がる死体。
第一発見者はケイスケだった。
四人目の犠牲者は、
霊媒師・リク。
誰もすぐには言葉を出せない。
「待ってくれ……これじゃ……」
ソウタが、
唇を噛んだまま言う。
「あぁ」
ハヤトが短く頷く。
「昨日のゲンジの白黒が、つかない」
「まずは死体を運んでからだ」
ケイスケの声は、
必要最低限の指示だけだった。
「……その後、食堂に集まろう」
誰も反対しなかった。
⸻
食堂
椅子を引く音が、
やけに大きく響く。
全員が揃っても、
空気は重いままだ。
ソウタが、
一度深く息を吸ってから口を開いた。
「占い結果だが……悪いがハヤトを占った。
何だって目立ちすぎだからな。結果、白」
視線が、
一斉にハヤトへ向く。
「……一応、礼は言っておくよ」
ハヤトは、
短くそう答えただけだった。
「私はユミ」
マヤが続ける。
全員の視線が、
今度はマヤへ集まる。
「ソウタが黒を囲ってないか調べたかった。結果、黒」
「……あんたっ……ね!!!」
ユミが立ち上がる。
椅子が床を擦り、
音が残る。
怒鳴りたいのに、
言葉が追いつかない。
その時だった。
「あ、あーし……聞いちゃった……」
マリンが、
ためらうように席を立つ。
視線が、
一斉に集まる。
「昨日、女湯で言ってた。
マヤに、ユミが『殺してやる』って」
言葉を選ぶたび、
声が震える。
「……あぁ、そうか。
人狼だったからマヤを殺してやるって言ってたんだ。
きっ、きっとそうだ!!」
最後は、
自分に言い聞かせるようだった。
その瞬間、
空気が一斉に動く。
視線が、
矢のようにユミへ突き刺さった。
episode6 は明日の20時に投稿予定




