episode3
♂ハヤト
マナトとマヤの義理の兄 イケメン サッカー部
♂マナト
肌白中性な男子 マヤの双子の弟でハヤトは義理の兄
︎︎ ♀マヤ
純白な肌でマナトの双子の姉でハヤトは義理の兄
♂ソウタ
肌白のイケメンでシュウの親友バスケ部
♂シュウ
やや褐色肌イケメンでソウタの親友
♂ゲンジ
フィットネス部
︎︎ ︎︎×ナツキ
褐色肌のギャル 最初の犠牲者
︎︎ ♀ユミ
肌白ロング ナツキの友人
♂ケイスケ
空手部 熱血系
♂リク
生徒会長のインテリメガネ
♂サクマ
金髪ヤンキー マリンの彼氏
︎︎ ♀マリン
サクマの彼女
episode3
人狼ゲーム最初の脱落者はナツキだった。
床はすでに拭き取られている。
だが、照明に照らされると、完全には消えきらなかった血の染みがうっすらと浮かび上がる。
誰もそこを見ないようにしているのに、
視線だけが無意識に吸い寄せられる。
誰かがやらなければ仕方ないことだった。
それを否定する者はいない。
しかし、無慈悲にナツキの息の根を止めたマヤの周囲だけ、
人と人との距離が不自然に空いていた。
隣に立てば触れてしまうはずの間隔なのに、
誰も半歩、近づこうとしない。
視線が合うと、
すぐに逸らされる。
「取り敢えず、体育館の方へ行くといい。シャワールームがあった」
リクは腕を組み、
円陣の中心ではなく、少し外れた位置から言った。
声は落ち着いているが、
視線はマヤを避けている。
「ありがとう、お兄ちゃん行ってくる」
マヤは椅子から立ち上がり、
床に置かれたタオルを拾う。
誰とも目を合わせない。
「あぁ、気をつけてな」
ハヤトは一瞬、言葉を探すように口を開閉し、
それから短く頷いた。
「てかどうすんだよ。ナツキの死体」
ソウタは壁に肩を預け、
腕を組んだまま言う。
語尾が落ち、冗談めかした調子は一切なかった。
数人が、同時に息を呑む。
椅子がきしむ音が、やけに大きく響く。
「ここから1番近い化学室倉庫にでも置いておくか」
ケイスケは、
床に落ちた血の染みを跨がないよう、
足の位置をずらしながら言った。
「そうですね。毎回ここには集まらないといけない。放っておくわけにもいかないです。力に自信ある方」
リクの視線が、一人ずつなぞるように動く。
その視線が自分に向いた瞬間、
何人かが無意識に肩をすくめた。
「……俺には無理だ」
ゲンジは、
自分の両手を見下ろしながら、
小さく首を振る。
「仕方ない。普段から鍛えてるから俺がやるよ」
ハヤトは立ち上がり、
制服の袖をまくる。
床に視線を落としたまま、
一度だけ深く息を吸った。
「俺も手伝うよ、空手部だ鍛えてる」
ケイスケも続いて立ち、
二人の視線が短く交わる。
言葉はそれ以上、必要なかった。
「助かる。ありがとう」
誰も拍手しない。
誰も礼を言わない。
足音だけが、
静かな廊下に消えていった。
⸻
廃校には、生活に必要なものが過剰なほど揃っていた。
シャワールームには温水が通り、
大浴場のタイルは不自然なほど白い。
家庭科室には、埃一つ被っていない食料。
だが、
それを確認する誰の目にも、
安堵の色はなかった。
⸻
シャワールーム
水が床に落ちる音が、一定のリズムで続く。
換気扇の低い音が混じり、
外の世界が完全に遮断されている。
「ねぇ」
ユミの声が、
水音を割る。
「どうしたの?」
マヤは背中を向けたまま、
シャワーヘッドを肩から首へとずらす。
「さっきはありがとう」
マヤの指が、
首元で止まる。
一滴の水が、鎖骨を伝って落ちる。
「別に、、誰かがやるべき事だったから」
ユミは蛇口に手をかけ、
ぎゅっと力を込める。
「それだけだから、あんたが嫌いなことに変わりは無い」
シャワーの音が、
一段強くなる。
「どうてもいい、生きるためにやることをやるだけ」
マヤはタオルを手に取り、
首元を乱暴に拭く。
「ほんと嫌い」
ユミは一歩下がり、
壁にもたれた。
マヤは振り返らず、
そのままシャワールームを出ていった。
⸻
大浴場
湯気が視界を白く曇らせ、
人の輪郭をぼかす。
「なぁ、シュウ。」
ソウタは湯船の縁に肘をつき、
指先で水面を揺らす。
「なんだよ」
シュウは天井を見たまま答える。
「お前は人狼じゃないよな」
水面の揺れが止まる。
「当たり前だろ」
シュウはゆっくり顔を向ける。
「うん、じゃあ信じることにするわ」
ソウタは視線を逸らし、
湯をすくって顔にかけた。
「なんだそれ」
シュウは短く笑う。
だが、湯気の向こうで、
その笑顔はすぐに消えた。
⸻
保健室
カーテンが閉まり、
外の音が遮断される。
「こんな時でもやることはひとつだよな」
サクマはベッドに腰を下ろし、
壁に手をつく。
「むしろ、今やんないと気が紛れないつーの」
マリンは靴を脱ぎ、
無造作に体を預ける。
「あっ、あっ、あっ」
声が天井に反射し、
部屋の隅で歪んで返る。
⸻
教室A
夜の教室。
机の影が、床に長く伸びている。
「マナト…」
同じベットの上で肩を並べるハヤトとマナト。
ハヤトは声を落とし、マナトの背に腕を回した。
「……ん?」
マナトは半分だけ目を開ける。
「マナトは何も心配しなくていい、お前はお兄ちゃんが守るから」
ハヤトの手が、
マナトの右腕を強く掴む。
「……うん。」
「マヤもマナトも俺が守るから」
少し間が空く。
「……うん。」
マナトは、
布団を握りしめた。
「お兄ちゃん……マヤ、遅いね。」
「……だな」
⸻
深夜。
首につけていた装置が、
きつく締まり、短い音を立てる。
麻酔が血管を巡り、
意識が急速に遠のく。
人狼以外は、
そのまま眠りに落ちた。
ー
深夜。
首につけていた装置が、微かに振動する。
金属が擦れるような、短い音。
次の瞬間、
体の内側から冷たいものが広がった。
息を吸おうとしても、胸が動かない。
指先に力が入らず、
まぶたの裏が白く滲む。
麻酔が、血管を巡る。
抵抗する暇もなく、
人狼以外の全員が、深い眠りに沈んだ。
⸻
翌朝。
廊下に、足音が響く。
駆け足ではない。
だが、一定のリズムで、確実に近づいてくる。
その途中で、
突然、甲高い叫び声が上がった。
「――――――っ!!」
声は途中で裏返り、
最後は喉に引っかかって途切れた。
一瞬の静寂。
次の瞬間、
扉が乱暴に開く音。
人が集まる。
走る者、歩く者、立ち尽くす者。
全員の視線が、
保健室の中へ吸い込まれた。
ベッドの上に、
サクマの死体があった。
白いシーツは、胸元から赤く染まり、
首の辺りで不自然にねじれている。
誰も、すぐには声を出せなかった。
「……いやぁぁぁ、サクマぁぁぁ」
マリンが一歩踏み出し、
その場で崩れ落ちる。
膝が床に当たる音が、
やけに重く響いた。
「サクマぁぁぁ……!」
両手で床を掴み、
必死に名前を呼ぶ。
ケイスケが、ためらいながら近づく。
しゃがみ込み、
そっと肩に触れようとした。
その瞬間、
腕が、強く払われた。
「触らないで!!」
乾いた音が、空気を切る。
ケイスケは一歩下がり、
何も言えずに手を下ろした。
「……彼も運びましょうか」
リクが、少し距離を取った位置から言う。
表情は変わらない。
「私がやる」
マリンは顔を上げず、
声だけを絞り出した。
「君には無理だ」
ハヤトが即座に前に出る。
マリンとサクマの間に、
自然と立つ形になる。
「俺たちに任せてくれ」
「頼む」
ケイスケが低く付け足す。
マリンは唇を強く噛み、
視線を床に落としたまま、何も言わない。
しばらくして、
小さく頷いた。
⸻
遺体を運び終えたあと、
誰もすぐにはその場を離れなかった。
血の匂いが残る廊下で、
靴音だけが不規則に響く。
「……運び終えたら」
リクが口を開く。
「一度、食堂に集まりましょうか」
その言葉に、
反対する声はなかった。
「そうだな」
ハヤトが短く答える。
⸻
食堂。
長机の周りに、
全員が座る。
椅子を引く音すら、
控えめだった。
マリンは端の席に座り、
肩を小さく震わせている。
すすり泣く音が、
一定の間隔で聞こえた。
誰も、声をかけない。
その沈黙の中で、
マヤが、静かに手を挙げた。
動作はゆっくりで、
だが迷いはなかった。
「私、占い師。弟は白」
一斉に、視線が集まる。
椅子がきしみ、
誰かが息を呑む。
「やはり出てきましたか、他には」
リクは即座に返す。
視線はマヤから、周囲へと移る。
「俺が本当の占い師。ユミは白だ。昨日、友人が死ぬって中で冷徹だったから気になった」
ソウタが立ち上がる。
背筋を伸ばし、
言い切るように。
ユミは、
一瞬だけ瞬きをした。
「なるほど」
リクが顎に手を当てる。
「待て待て、つまりどっちかが」
シュウが口を開く。
視線は、ソウタとマヤを行き来する。
「そう人狼ですね。」
リクが、被せるように言った。
その一言で、
食堂の空気が一段、重くなる。
誰かが、無意識に首輪に触れた。
「そして私が霊媒師。昨日死んだナツキさんは白でした」
言い切り。
一切の間を置かない。
ユミは、
小さく息を吸ってから、
「……そう。」
それだけを返した。
⸻
沈黙が落ちる。
誰も、すぐに動こうとしない。
視線だけが、
占い師二人と、リクを行き来する。
「夜まで時間があります」
リクが、空気を切り替えるように言う。
「各自自由に過ごしましょう。但し、人狼同士でコミュニケーションを妨げたいので各グループで監視をしながらですが」
机の上に、
グループ分けが示される。
⸻
Aグループ
ハヤト、マナト、マヤ、ソウタ、シュウ、ケイスケ
Bグループ
リク、マリン、ユミ、ゲンジ
人数を合わせるためにAグループからケイスケAグループから、Bグループへ移動することになる。
⸻
Aグループ
廊下を歩きながら、
靴音が規則的に響く。
「マヤ」
ハヤトが、隣を歩きながら言う。
「俺は兄弟として疑わない。信じる」
マヤは足を止め、
一瞬だけハヤトを見る。
「ありがとう、お兄ちゃん。」
「だから、マナトじゃなくて他の人を占って欲しかったな。俺は少し残念だったよ」
ハヤトは前を向いたまま続ける。
マナトが、
二人の間に視線を走らせる。
「…でも、僕は嬉しかったよ。心配して占ったんだよね、お姉ちゃん」
マヤは一拍置き、
小さく頷いた。
「………そうだよ。2人が好きだから、白っていう確証が欲しかった」
その言葉に、
シュウが鼻で笑う。
「でも、昨日男同士裸で俺らは信頼しあったぜ、昨日の話そういうことだろ?」
ソウタが、
軽く肩をすくめる。
「あぁ、兄弟の絆より俺らの絆の方が上手だったな。マヤ、お前兄弟をそんな涼しい顔で騙せんだな」
マヤは、
二人を見ずに言った。
「お兄ちゃん、マナト。耳傾けないで」
2人は小さく頷く。
「もちろんだよ」
「うん。分かってる。」
⸻
Bグループ
廊下の反対側。
足音が、少し速い。
「占い師を2人向こうに流したままって本気?」
マリンが、腕を組んだまま言う。
リクは足を止めず、
前を見たまま答える。
「グループを変える方が人狼同士が固まってしまうかもしれないから敢えてそのままって話しましたよね?低脳は黙ってもらえますか?」
マリンが足を止め、
目を見開く。
「は、はぁ?」
「まぁまぁ、落ち着いて。」
ケイスケが、
二人の間に割って入る。
「今日はグレーから吊ります。占い師2人は泳がせて情報を探るのが鉄柵ですので」
リクは、
ようやく立ち止まる。
ゲンジは、
一歩遅れて頷いた。
「……あぁ、俺も賛成だ」
リクの視線が、
ゆっくりとゲンジに向く。
「ほう、そうですか。」
その一言だけを残し、
再び歩き出した。
⸻
そして、
時は静かに夜へと流れていった。




