episode2
♂ハヤト
マナトとマヤの義理の兄 イケメン サッカー部
♂マナト
肌白中性な男子 マヤの双子の弟でハヤトは義理の兄
︎︎ ♀マヤ
純白な肌でマナトの双子の姉でハヤトは義理の兄
♂ソウタ
肌白のイケメンでシュウの親友バスケ部
♂シュウ
やや褐色肌イケメンでソウタの親友
♂ゲンジ
フィットネス部
︎︎ ︎︎ ♀ナツキ
褐色肌のギャル
︎︎ ♀ユミ
肌白ロング ナツキの友人
♂ケイスケ
空手部 熱血系
♂リク
生徒会長のインテリメガネ
♂サクマ
金髪ヤンキー マリンの彼氏
︎︎ ♀マリン
サクマの彼女
episode2
モニターのある部屋に戻ると、全員が自然と円陣の椅子に座った。
自己紹介のときと同じ位置。
だが、椅子に腰を下ろした瞬間から、空気が違うのが分かる。
誰も話さない。
椅子の軋む音、誰かが喉を鳴らす音、
それだけがやけに大きく響いた。
視線が合うたびに、すぐ逸らされる。
まるで、誰かを見た瞬間に疑ってしまうのを恐れているかのように。
「では、話し合う訳ですが」
リクの声が、張り詰めた沈黙を切り裂いた。
その声は落ち着いていたが、右足先の貧乏ゆすりが止まらない。
「マヤかその弟でいいんじゃん?」
ナツキの声は軽かった。
あまりにも軽く、冗談の延長のように聞こえた。
何人かが息を呑む。
マヤは一瞬、何を言われたのか理解できなかったように瞬きをした。
「……どうして?」
問いかけは短く、抑えられていた。
ナツキは肩をすくめる。
「だってさ、多数決のゲームでそれも人狼同士なら相談もするんでしょ?
じゃあ兄弟って有利じゃん。消すべきでしょ」
言い切った瞬間、
円陣の中心に、見えない線が引かれた気がした。
「それは理にかなってますね」
リクが即座に頷く。
視線はマヤではなく、周囲の反応を確認するように動いている。
「お〜あんた活かしてんね〜!」
マリンが楽しそうに声を上げ、椅子の背にもたれかかった。
「ギャル最強〜」
ナツキは笑った。
その笑顔に、誰も笑い返さない。
マヤのこめかみが、ぴくりと動く。
「あんた……」
声を出した瞬間、胸の奥で何かが弾けた。
「しゃべんな」
ナツキが被せる。
それだけで、マヤの言葉は床に落ちた。
「ねぇ……お兄ちゃん」
マナトの声は、ほとんど掠れていた。
ハヤトの袖を、ぎゅっと掴む。
「任せろ」
ハヤトは視線を外さず、短く答えた。
「待て待て、でも話しあいはちゃんとした方が――」
ケイスケが身を乗り出す。
だが声は、場の勢いに押されて弱い。
「流石になぁ」
ソウタも続くが、確信はなさそうだった。
ハヤトは一度、深く息を吸った。
そして、ゆっくりと口を開く。
「それなら、友人関係のお前らも一緒だ」
数人が顔を上げる。
「なになに? おにーーたん?」
ナツキが笑いながら、わざとらしく首を傾ける。
「お前とその隣のユミも友人関係。
ソウタやシュウに限っては親友と呼び合う関係。
サクマとマリンも恋人関係だ」
一人ひとり、視線が刺さる。
「俺ら兄弟と、何も変わりないだろ」
一瞬、誰も口を開かなかった。
「で!? だから俺らに票をいれろってか?」
サクマが苛立ったように椅子を蹴る。
「ハヤトくんの言い分も正しいですよ」
リクが言った瞬間、
「はぁぁ!?」
ナツキ、サクマ、マリンの声が重なった。
空気が一気に荒れる。
「兄弟ってだけで狙われるのは確かにフェアじゃない」
ソウタは、言いながらも周囲の顔色を伺っている。
「そうだな」
シュウは短く言い、目を伏せた。
「最初は印象論なのは仕方ない」
ハヤトの声は低く、よく通った。
「でも運で吊られるのも癪に合わない。命がかかってる」
誰かが、無意識に首輪を触る。
「だから何かとヘイトを向けたいはずだ。
そうだろ、ナツキ」
「はぁ!? ふざけんな! 黙れ!」
ナツキは椅子を蹴り、身を乗り出した。
「俺らは兄弟だからヘイトを向けやすい。
人狼なら真っ先に狙うだろ」
「違う! ちがうから!」
声が裏返る。
「でも、ナツキの意見にすぐ同調したのはリクとマリンだ」
ハヤトの視線が、ゆっくりマリンへ移る。
「リクは俺の意見も尊重している。
つまり――」
一拍。
「俺はマリン。お前を一番疑ってる」
「はぁ!!?」
マリンが椅子から身を起こす。
「サクマ、あたしじゃないからね。信じて!」
声が、わずかに震えた。
「おい! そこのメスガキ!」
サクマが立ち上がり、ナツキの前に立つ。
「違うし!! キショいんだよ!」
「歳下がいきがんなよ!」
拳が振り上がる。
「暴力はやめろ!」
ケイスケが叫び、椅子から立ちかける。
「彼の言う通りだ」
ゲンジの声は低く、しかし遅かった。
「ぁ? 俺に逆らうな。殺すぞ」
サクマの一言で、誰も動けなくなる。
「結局、最初は情報は何も無い」
リクが淡々と言う。
感情を削ぎ落とした声だった。
「ナツキでいいんじゃないか」
「な、なにいってんの?」
ナツキの声が小さくなる。
「歳下の女の子だぞ」
ソウタが必死に食い下がる。
「歳下も女も関係ねーよ。命かかってんだよ」
サクマが睨みつける。
シュウは、何も言わなかった。
「……どうしちまったんだよ」
ソウタの呟きは、誰にも届かない。
「ねぇ……ユミ」
ナツキが縋るように見る。
「……」
ユミは視線を逸らす。
「嘘でしょ……」
ナツキの声が震える。
「もうすぐ22時になる」
マヤの一言で、
全員の視線が一斉にナツキへ向いた。
「はぁ? 冗談でしょ」
その瞬間、モニターが点灯する
モニターの光が、円陣の中央を白く照らした。
機械的な音とともに、文字が浮かび上がる。
投票まで残り10秒です。
結果が決まらない場合、全員を排除します。
一瞬、全員が固まった。
「ぜ、全員!?」
マリンの声が裏返る。
椅子の脚が床を擦り、不規則な音が広がった。
「おいおい、どうすんだよ……!」
ケイスケが立ち上がりかけ、また腰を落とす。
9
「ナツキだ!!」
サクマが叫ぶ。
円陣の中心を指差す指が震えていた。
「あいつに入れんだよ!」
8
「ちがう! 本当にちがうの!」
ナツキは首を振る。
視線が忙しなく動き、誰にも定まらない。
7
「さっさと指をさせや!!ゴルァ!」
サクマの声が、命令口調に変わる。
「ねぇ、ユミ!」
ナツキが叫ぶ。
6
「……」
ユミは答えない。
5
「皆さん」
リクが一歩前に出る。
「死にたくなければ、彼女に」
その言葉は、あまりにもはっきりしていた。
4
「ねぇ、、ねぇ、ふざけんな! もう!!」
ナツキが椅子を蹴る。
乾いた音が、やけに大きく響いた。
3
「な、ナツキさん……ごめん」
ゲンジが視線を逸らしながら呟く。
「しゃ、しゃべんな……きもいんだよ、あんた」
声が掠れる。
2
「今までマヤに仕向けた仕打ちだよ」
ハヤトの声は低く、感情が読めなかった。
1
「ねぇ……ごめんって……助けて……」
ナツキの声が、急に弱くなる。
マヤは、ナツキを見ていた。
「……死んで」
その一言は、驚くほど静かだった。
0
モニターが切り替わる。
投票の結果、ナツキが最も票を集めました。
一拍。
5分間の間に、手段は問いません。
自分たちで殺害してください。
「……!!?」
誰かが声にならない声を上げた。
「おい……おいおい……」
ケイスケが後ずさる。
「待ってくれよ……」
シュウが呟く。
「それはないだろ……」
ソウタの声が震えた。
「おい、お前らやれよ」
サクマが吐き捨てる。
「そうよ!」
マリンが同調する。
「あんたがやればいいじゃん」
ユミが、静かに言った。
その視線は、ゲンジに向いている。
「……む、無理だ」
ゲンジは首を振る。
「ほ、ほら……み、見せるからだ、だから……」
「ナツキ……?」
ナツキがユミを見る。
その目に、まだ希望が残っていた。
「あなたは……死なないといけないの」
ユミの声は、淡々としていた。
「ユミーーー!!!!」
ナツキが叫び、飛びかかる。
二人は床に倒れ、もつれ合う。
爪が肌を掻き、短い悲鳴が上がる。
「いたぁっ!」
「なんで……あんたが死ねばいい!」
誰も止めない。
誰も、目を逸らさなかった。
モニターが再び光る。
残り3分です。
「ど、どうすんだよ……!」
ソウタが叫ぶ。
「サッサと誰かやれや!」
サクマが苛立ちを隠さない。
「も、もういや……」
マナトが全身を震わせていた。
「……マナトこっちおいで」
ハヤトが優しく腕を引き包み込む。
そのときだった。
マヤが、静かに動いた。
誰も気づかなかった。
足音すら、しなかった。
モニターの下にある棚へ近づき、
そこから――斧を取り出す。
「……え……」
ケイスケの声が漏れる。
「おいおい……まさか……」
ソウタが一歩下がる。
「ま……マヤ……」
ハヤトの声が震えた。
「おねえ……ちゃん……?」
マナトが見上げる。
マヤは何も言わない。
ただ、ナツキの背後に立つ。
斧を持つ手は、驚くほど安定していた。
一瞬。
グシュッ
鈍い音が響く。
血が飛び散り、
床に赤い模様が広がった。
誰かが息を呑む音。
誰かが、嗚咽を漏らす音。
誰も、動けなかった。
この瞬間、
全員が理解した。
――ここでは、
生きるか、死ぬか。
それしか、許されないのだと。




