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8話 協力者

「さて、形勢逆転かな」


 重心を抑えている為、非力な今の状態でも拘束出来ている。

 相手は苦しそうにもがいていたが、逃げられないと踏んでか数秒の後に大人しくなった。


「離してください……!」

「ダメだ。聞く事が山ほどある。大人しくしていたら解放してやろう」


 流石に観念したのか、マスク越しの顔に観念の意が見え隠れする。

 

 さて、分からない事だらけだ。

 一つずつ聞いていくとしよう。


「まず、お前は何者だ? 恐らく暗殺者なのは間違いなさそうだが」

「っ……」

「答えろ。何故あの魔族を追っていた? 誰の命令だ? 敵対関係にあるのか?」


 特に興味がある訳ではないが、一先ず俺と彼女が敵でない事をする為に質問してみる。仮にだが彼女があの魔族と協力関係にあるなら殺さなければならないだろう。



「……魔族を追っていたのは、当然殺すためです。誰の命令でもなく、自分の意思でやっていました」

「命令じゃない? 暗殺者なのにか?」

「暗殺で日銭を稼いでいるような連中と一緒にしないでください。……今日はあの魔族を殺すためにこの格好になっただけです」

 

 ……なるほど。

 確かに暗闇だったら全く見えないほど真っ黒の服だとは思う。


 いや逆に怪しい人間だと宣伝しているような格好でもあるが。

 

「つまり、君は魔族と敵対していると?」

「……はい」


 大人しく認めた。

 追撃するように、俺は問いかける。


「なら、明らかに人間である俺を始末する理由は? 個人であの魔族を殺そうとしているなら、何故……」

「貴方が、私の復讐の邪魔になるからです」

「どういう事だ」

「単に貴方が信用できないだけです。貴方の口の重さも分からないのに、見過ごす訳にはいきません」


 なるほど。

 どうやら、存在がバレたくない理由でもあるらしい。


「何故正体を隠す?」

「……それは」

「面倒だ、早く答えろ。このナイフを突き刺すかは、返答次第だ」


 軽く脅しをかけて、相手の言葉を促す。


「っ……あの魔族は上手く変装してこの街の当主として溶け混んでいました。けれど私は、彼の正体を知っていた……私のスキル『暗殺者』はターゲットに油断されている事か、姿形が割れていない事が条件です。私はその特性上、暗殺時に姿を目視されればスキルが弱るので」

「そういうことか」


 納得し、俺は突きつけていたナイフをしまった。

 その姿を見て、彼女は即座に拘束を解こうとするが抜け出せない。


「命を握られていると喋りにくいだろ。良いか、暗殺者。

 ーー取引をしよう」

「取引……?」

「どの道、もう一人協力者が欲しかったところだ。俺は魔王を討伐する。お前は、その協力者になれ。なるなら、俺はお前の復讐に手助けをしよう」


 宣言しながら、俺は彼女を立たせて拘束を解く。

 拘束を解いても逃げ出そうとしない辺り、話を聞いてくれる気はあるようだ。


「俺のスキルは『ピエロ』だ。俺もスキルの性質上、目撃者は殺さないといけない。でも俺もお前も互いの命綱を握っているなら話は別だ。俺の仲間になれ、暗殺者」

「……自分の弱点を教えるなんて馬鹿なんですか? 貴方の仲間になることに、何のメリットが私にあるんです?」

「そうか。俺はあの魔族がどこに飛んでいったのか分かるぞ」

「なっ……」


 切り札を切る。

 彼女は予想通り、目を見開いて驚愕していた。


「一旦俺と組め。お前、自分の手で確実にあの魔族に復讐したいんだろう? 俺もそうだ。俺は、自分の手で魔王を殺したい。他の誰かが殺したとしても、俺はきっと許せない。お前は違うか……?」

「私はッ……!」


 反論しようとして、二の句が継げないのを見る。

 図星らしい。


「名前を教えろ、暗殺者は呼びにくいだろ。俺はアルス、表向きには世界唯一のGランクのスキル持ちってことになってる」

「貴方があの……? あのGランクのスキルは嘘という事ですか? どうやって偽装を……?」

「質問が多い。まず、名前を答えろ」


 即座に疑念を深めて、問いかけてきた目の前の暗殺者を落ち着かせる。


「……メルです」


 偽名だろうか。

 それとも、正直に答えた名前だろうか。


 その表情からは察せられない。


「そうか。メル、今日から協力者としてよろしく頼む」


 言いながら、俺は明るい表情を作った。


 彼女は、今日から協力者だ。

 でも魔族を倒したら復讐を止めるであろう彼女との協力関係は長く続かない。



 俺の魔王を殺すという壮大な目標とは、違いすぎる。



 きっとどこかで、彼女をーー始末することになる。


 

 それでも今、彼女を殺す事が出来なかったのは。


 未だ前世の価値観を持ち、一人も殺した事がない俺の。

 覚悟の弱さが故なのかもしれない。


 





 


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