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光属性美少女の朝日さんがなぜか毎週末俺の部屋に入り浸るようになった件  作者: 新人@コミカライズ連載中
第二章:闇属性の影山くんの這い上がり方

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第60話:フェチ その1

「お、お腹って……このお腹……?」


 薄いシャツの上に光が両手を置いて尋ねると、黎也は少し気まずそうに首肯する。


「やっぱり、引いた……?」

「ひ、引いてはないけど……なんでお腹なのかなって……」


 告白し、告白され、恋人になった。


 そういう関係になれば、当然将来的には互いの身体の様々な部分に触れ合う時が訪れるのは予見していた。


 実際に二人は既に何度も触れ合い、唇も交わしている。


 しかし、それが自らの腹部にのみ焦点を当てられるのは想定の範囲外だった。


「なんでって言われると……言語化が難しいんだけど、なんか触ってみたいなと思った……」


 疑問の答えにはなっていない胡乱な言葉を黎也が口にする。


 彼が何故、突然そんな要求を口にしたのか。


 本人すらも分かっていないそれを紐解くには、時間を一分前まで遡る必要がある。


『れ、黎也くん……! もしかして、私に……何か言いたいことがあったりするんじゃないの……?』


 彼女がコントローラーを置いて、彼の方へと振り向いた時に。


『うん、なんでも! だって、いつもは私がしてもらってる側だもん!』


 そして、溢れる慈愛を持って彼を受け入れようとした時にも。


 実は見えてしまっていた。


 日頃よりも少し短めのシャツの裾から、引き締まった白いお腹が。


 加えて言うと彼がそれを意識したのは、今日が初めてではない。


 今より約三ヶ月前、それは朝日光が初めてこの部屋を訪れた日。


 今と同じように彼のベッドに腰掛けてコントローラーを握っていた彼女が、ボスとの死闘を制して両腕を上げた瞬間にも腹部の露出を目の当たりにしていた。


 つまるところ、影山黎也はあの時にお腹フェチへと目覚めさせられていた。


「そんなに、触りたいの……? お腹……」


 恥ずかしそうに尋ねた光に対して、黎也は真剣な表情で首を深々と縦に振った。


「じゃあ……いいけど……」


 まだ若干の戸惑いはあれど、好きな人に求められる嬉しさがそれを勝った。


 光は上体を少し捻って、身体の正面を彼の方へと向ける。


「えっと……どう触ればいい……?」

「そ、そんなこと私に聞かれても逆に困るんだけど……」

「そ、そうだよね……だったら、どうしよう……」

「好きなように触ればいいんじゃないの……? 黎也くんの……」


 光が目線を斜め下に逸らして、恥ずかしそうに言う。


「じゃあ、お言葉に甘えて……」


 好きなように、と言質を得た黎也が恭しく突き出した両手でシャツの裾を掴む。


「えっ!? じ、直に触るの……!?」


 捲り上げられようとしていたシャツを光が慌てて押さえる。


「だ、ダメだった……?」

「ダメってことはないけど……服の上からだと思ってたから……」


 依然として服の裾を掴んだままでいる黎也。


 直接触りたい。直接触りたい。直接触りたい。


 ONAKA IS WIN


 フェティシズムに由来する欲望がダダ漏れな眼差しで、光の目を見据えている。


「もぉ……しょうがないなぁ……」


 大きな溜め息を吐き出しながら、しかしどこか嬉しそうに光が手の力を緩める。


 逆に、黎也は力を込めて彼女のシャツを十センチほど持ち上げた。


 この部屋で初めて同じ時を過ごした時から、何度も夢見た白い素肌と形の良い(へそ)が曝け出される。


 しかも今度は一瞬ではなく、好きなだけ……その細部に至るまでを観察できる時間が与えられている。


「あ、あんまりじっくり見ないで欲しいんだけど……さっきご飯食べたばっかりだから、ぷくってなってそうだし……」

「いや……全然そんなことないっていうか……すごく綺麗で可愛い……」

「うぅ~……!」


 黎也が自然と零した率直な感想に、光は丸めた両手を口元に当てて恥ずかしがる。


「それじゃ……触っても……?」


 光が羞恥に悶えながらもコクリと頷く。


 黎也は左手でシャツを抑えたまま、右手で慎重に彼女の肌へと触れた。


 吸い付くようなきめ細かい肌を一枚通した下にある脂肪に指がぷにっと沈む。


 一センチほど沈んだ先に、しっかりと鍛えられた体幹の厚みを感じる。


 想定通りに、想像以上の触り心地。


 黎也は拝みたくなるような気分を、ただ生唾を飲み込む行為へと変換した。


「な、何か言ってくれないと逆に恥ずかしいんだけど……」


 顔を真赤にしながら光が彼へと言う。


 以前にも肌へ触れられたことはあったが、あれはキスの最中のことだった。


 今のように触れられるのが主たる行為は、彼女にとっても初めての体験。


「なんて言えば良いんだろう……とにかく、ありがとうって感じ……?」

「なにそれ……」

「いや、本当にそうとしか言いようがなくって……」

「何か、変態っぽい……」

「……ごめん」

「まあ、私にだけ向けるなら許すけど……」

「も、もちろん……! 俺は光だけ……っていうか、俺には光しかいないし……」


 顔を上げて、やや不安げな必死さのある口調で黎也が言う。


 そんな憂いの帯びた彼の顔に、光は――


 やっぱり、今日の私の彼氏が可愛すぎる件について……!


 更に悶えることしかできなかった。


「じゃあ……もっと触ってもいいよ?」


 ともすればニヤついてしまいそうなのを堪えながら光が言う。


 それを受けて黎也は言葉ではなく、指を動かして答えた。


 ゆっくりと相手を気遣うように、あるいは感触を堪能するように。


 最初は肉の柔らかさを確認するような動きだったそれは、次第に肌の上を滑るように動き始める。


「んっ……」


 光が自分にしか聞こえない程度の悩ましげな声を漏らす。


 くすぐったいような、心地いいような不思議な感覚。


 ただ、真剣な表情で自分のお腹を弄ぶ彼が可愛くて仕方がなかった。


 そんな彼を愛おしい目で見ている内に、彼女はふとあることに気がつく。


 彼のシャツ……その襟元から何度もチラチラと見えているモノの存在に。


 最初はただ見え隠れしているだけの存在だったそれが、次第に彼女の心中にある言葉を浮かび上がらせる。


 SAKOTSU IS WIN


 朝日光は鎖骨フェチだった。

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書籍第一巻は10月13日発売!!

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