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光属性美少女の朝日さんがなぜか毎週末俺の部屋に入り浸るようになった件  作者: 新人@コミカライズ連載中
第二章:闇属性の影山くんの這い上がり方

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第9話:イメチェン その1

「まずは形から、かぁ……」


 バイトを終え、自宅で独り言ちながら緒方さんに言われた言葉を思い出す。


『見た目をしゃんとすれば、多少は自信もついたりするんとちゃう? お芝居の世界でも、まずは見た目から役作りに入るって人も多いし』


 確かに、朝日光は超が十個は軽く付くくらいの美少女だ。


 顔面偏差値は90越えで、上位0.0001%とかそういう桁の人間。


 その隣に堂々と立つための第一歩として、自分の見た目を整えるのは理に適っている。


 戦闘力53万のボスの隣に、親衛隊面した数千程度の雑魚がいるようなものかもしれないが、それでもやらない理由にはならない。


 ……とはいえ、オシャレなんて俺にはさっぱり分からない。


 帰ってきてからヘアカタログやファッションのサイトとにらめっこしているが、これならまだ数学の方が理解できる。


 これまでは髪の毛なんて、伸びてきたら適当に整えてもらっていただけ。


 なんたらブロックだの、マッシュなんとかだの。


 気取った名前の付いた髪型なんて、何が流行っているのかも分からない。


「げっ……この服が四万円って……まじかよ……ただの布だろ……」


 流し見していたサイトに書かれていた服の値段を見て、思わず変な声が出た。


 画面の中では、イケメンモデルの私服コーディネートが紹介されている。


 この服と俺が普段着ている服で何が違うのかも、さっぱり分からない。


 ゲームに興味のない人からすれば、ブレワイもファイナルソードも同じに見えるような感覚なんだろうか。


「あー……全っ然、分かんねぇ……」


 全てを投げ打つように、開いていたサイトを閉じる。


 柄にもないことばかり考えすぎて疲れた。


 一旦、心を休ませようとStreamのライブラリを開く。


 やはりゲーム……ゲームをやってる間だけは、余計なことを考えずに無心でいられる。


 今日は何をやろうかと悩んでいると、樹木さんから無言で招待が飛んできた。


 ロビーに入ると、何も言われないままにマッチングが開始される。


 普段は鬱陶しいくらいに喋る人なのに珍しいな。


 何かあったのかとチャットを入力しようとするが、先にマッチングが完了してゲームが開始してしまう。


 開始してからすぐに、ちょっとした異変に気がつく。


 樹木さんはゲームの上手い人ではあるが、調子に乗るとすぐに自滅する癖がある。


 普段は俺がそれを抑える役目をしているわけだが、今日は普段よりもかなり冷静にプレイしている。


 対面との圧倒的な優位を試合全体に波及させ、あっという間にチームを勝利に導いた。


 一試合目が終わると、また無言のままに次のゲームが開始される。


 再び、冷静な彼がチームをキャリーして、勝利へと導く。


 それが何度も何度も繰り返され、その日は一度も負けずに連勝が積み上げられた。


『今日は何かすごかったっすね。達人の領域に達してたっていうか』


 日を跨ぎ、解散ムードになったところで改めてチャットで話しかける。


『レートもかなり盛れましたし、おかげで今期はマスター昇格も狙えそうです。今日は本当に樹木さん様々ですね』


 珍しく褒めちぎってみせるが、なかなか返事がない。


 気づいていないんだろうかと再度チャットを入力していると――


『なぁ、ヌルヤ……』


 調子の良さに反した神妙さが、回線越しに伝わってくるような短い文言が表示された。


『何ですか?』

『実は、そんな俺でも勝てない相手がいるんだよ……』


 再び、酷く落ち込んだようなトーンの文字列が返ってくる。


『樹木さんが勝てないって……そんなにすごい人なんですか?』

『ああ、今のところ全く歯が立っていない……』

『それはやばいっすね……』


 樹木さんのゲームの腕前は、俺が知る人物の中ではダントツで優れている。


 例えるなら、光と同等のゲームセンスに歴戦の経験が加わった感じだ。


 本人にはその気がないらしいが、一タイトルに集中すればプロも目指せるだろう。


 そんな人が全く歯が立たない相手なんて、世界レベルのトッププロくらいしか考えられない。


『でも、だからって諦められるような戦いじゃねーんだ。俺は……どうしてもあの人に勝ちたい……』


 文字越しに、強い熱意が伝わってくる。


 こんなに熱くなっている彼を初めて見たかもしれない。


『なら、もっと研鑽して……自己に磨きをかけていくしかないんじゃないですか?』

『それは当然として……何かこう……もっと違う戦略とかはねーかな……? 搦め手ってわけじゃねーけど、向こうの意表を突くような……』

『意表を……だったらキャラを変えてみるとかはどうですか? 相性もありますし』

『キャラ変か……なるほど、確かにそれはいいかもな』

『それもかなりガラッと変えてみるとか。タイプも方向性も全く違うようなやつに』

『確かに確かに……そんくらいやった方がいい気がしてきた』


 俺の言葉に納得したような様子を見せる樹木さん。


『やるならそうした方が絶対いいと思いますね』


 何か今の自分の状況にも通じる話だなと思いながら、更に後押しする。


『……よし! じゃあやるか! キャラ変!!』

『はい! やりましょう! 俺も陰ながら応援してますから!』

『んじゃ早速やってくるわ!! ありがとな!!』


 そう言うと彼は、Thiscordのステータスを『退席中』に切り替えた。


 きっと今からその強敵を倒すために、新キャラの練習に励むんだろう。


 この思い立ったらすぐに行動に移すバイタリティは、俺も見習わないとな……。


 そう思いながら翌日に備えてパソコンの電源を落として、床に着く。


 良いことをした後は気分も晴れやかで、すぐに眠ることができた。

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書籍第一巻は10月13日発売!!

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