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第114話:我慢比べ対決 その3

 何に、どこからどうツッコめばいいんだろう。


 ラテックス製のボディスーツに、下半身を覆い隠す網目模様の入ったタイツ。


 全身をタイトに包みながらも、出ているところは扇情的に際立たせる構造。


 極めつけに、首元を飾る蝶ネクタイと頭の上でぴょこぴょこと動いているウサ耳。


 バニー……どう見てもバニーガールだ……。


 まるで白昼夢でも見ているかのような光景に、文字通り絶句してしまう。


 もしかしたら本当に自分は夢を見ているんじゃないだろうか。


 そう思って、向こうから見えないように太ももを軽く抓ってみる。


 普通に痛い。夢じゃない。


 つまり、この朝日光(バニーガールVer.)なんていうスマホゲームの期間限定最高レアみたいなものは現実の存在らしい。


 そんなことを考えながら、見るなという方が無理な彼女を姿をただ呆然と眺めていると――


「着たかったから着ただけですけど!?」


 何故か逆ギレ気味に言われた。


 多分、着ておいて自分でもめちゃくちゃ恥ずかしかったんだと思う。


「そ、そう……」


 ただ、それはそこまで恥ずかしい想いをしてでも俺を()りに来ているということでもあった。


「うん、年に一回くらいは着たくなっちゃうんだよね」


 そんなわけがない衝動に心の中でツッコミながらも、顔を真赤にしながら定位置へと戻ってきた彼女を姿をまじまじと見てしまう。


 そもそも、なんでこんな物が……という疑問はすぐに解決した。


 前に俺の本(穏当な表現)を見て、嫉妬に燃えた光がメイド服を着た時。


 あの時に買ってきた激安の殿堂の袋は一着にしては大きく膨らんでいた。


 見られた本の内容から察するに、あの時にバニースーツも一緒に買ってきていたと考えるのが妥当だろう。


 その時は流石に恥ずかしくてメイド服だけでお茶を濁したが、いずれ俺を殺す時のために洗面所の棚に隠してあったらしい。


 その効果は想像以上に絶大で、俺は彼女から目を離せなくなってしまってた。


「……なに? 私の身体に何かついてる?」


 ベッドの座った光が、目線だけを横に向けて言ってきた。


 態度こそつっけんどんとしているけれど、顔には『もっと見ろ!』と書いてある。


「い、いや……別に何も……」


 何も無いわけがないのに、反射的にそう答えてしまう。


 光には既にバレてしまっているが、俺はバニーガールが好きだ。


 どうしてかと言われると分からないけれど、何故か惹きつけられる。


 ゲームでも女性キャラに着せられるバニーのコスチュームがあるとつい着せてしまう。


 きっと俺の魂に刻まれた業の一つなんだろう。


 そして、俺は光のことがこの世界で何よりも大好きだ。


 つまり、今目の前にあるのは『好きなもの×好きなもの』。


 ゲームで言えば攻撃力100%増加効果が二つで加算処理の200%増加ではなく、二倍×二倍の乗算処理で四倍になっているくらいの強力なシナジーだ。


「さーて、この前の続きしよーっと!」


 異常な格好をした光がコントローラーを取り、平常通りにテレビの画面と向かい合う。


 事前の規定通り、向こうから迫ってくる気はないらしい。


 既に反則スレスレではあるけど、あくまで狙いは俺の我慢の限界。


 自分はちゃんと我慢したという優位性を得ながら、存分にイチャつくつもりだ。


 ……でも、これならまだギリで耐えられる。


 もちろん、平時なら既に白旗を上げて向こうの要求を全飲みしてしまっていただろう。


 でも、今の俺は大いなる使命を帯びている。


 そのためならバニーコスの彼女とイチャつくという爛れた夢だって我慢できる。


 でも、もしもここにもう一つの好きなものであるメイドの成分が加味されていたら流石に堪えられなかっ――


「あっ、これ付けるの忘れてた」


 光がおもむろに取り出したヘッドドレスを頭に付けて、俺の理性は爆発四散した。

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書籍第一巻は10月13日発売!!

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