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第1話:光属性の朝日さん

 学校という小さな社会。


 いわゆるスクールカーストにおける身分は、二つに大別できる。


 一つは陰キャ……非リア属性の低層民。


 休み時間は流行りよりも性能重視で選んだスマホを弄るか、寝たふりをして過ごすような下位層。


 交友関係は同学年の同一層で概ね完結していて、学外の知り合いはいても少数。


 部活でもやっていれば多少は友人もいるが、そうでなければ悲惨の一言。


 恋人持ちなんて阿漕(あこぎ)なスマホゲームの最高レアよりも珍しい。


 ゲームの属性で例えるなら、紛うこと無き闇属性。


 光を浴びれば瞬く間に消滅してしまう、深海の底を漂う塵や澱みのような存在だ。


 高校二年の十六歳で、趣味はゲームだけ。


 進学校に通ってはいるが成績は下から数えた方が早く、帰宅部に所属


 そんな俺、影山(かげやま)黎也(れいや)もご多分に漏れず、その下層集団に属している。


 対するもう一つは……いや、それは敢えて例を考えるまでもない。


 その権化とも言える存在が今、俺の真横に座っているのだから。


「あー!! やられたー!!」


 ワンルームマンションの一室で、コントローラーを手に叫ぶミディアムショートヘアの美少女。


 朝日(あさひ) (ひかる)


 我が校一の人気を誇る女子が今、俺のベッドに座ってゲームに興じている。


 それも陽キャ御用達のスマホのパズルゲームではなく、渋谷の女子高生の認知度が1%を切ってそうなハードコアな死にゲーだ。


 画面の中では可愛げの欠片もないオッサンたちが、刀を持って殺し合っている。


「う~……くやし~……もう一回!! 次は絶対に勝つ!!」


 おどろおどろしい『死』の一文字が表示されている画面に怯むこともなく、彼女は再び過酷な戦いへと身を投じる。


 熱中の余りに身体が前のめりになり、負ければ嘆き、勝てば諸手を挙げて喜ぶ。


 もう一回、もう一回と、時間を忘れて仮想の世界にのめり込む。


 教室では、いつも一軍メンバーの中心で輝いている彼女からは想像もできない姿。


 けれど、それはまさに俺たちと同じゲーマーの姿に相違なかった。


「またやられたー!」


 再び表示された死の一文字に、朝日さんがベッドにもたれかかる。


 普段の制服とは異なるカジュアルな私服。


 女子のファッションは量子力学よりも分からないが、抜群に似合っているのは分かる。


 プライベートの趣味の時間ということでリラックスしてるのか、ところどころに普段は見られない無防備さも醸し出している。


 広いとは言えない部屋で、そんな彼女と二人きりという状況。


 まるでDoT攻撃のように、HPゲージをジワジワとすり減らしてくる。


『迷えば、敗れる』


 画面の中でキャラクターの発した台詞が、まるで俺に言っているように聞こえた。


 一方で、彼女はこの状況を特に気にしている様子もない。


「もう一回!! 今度こそ!!」


 コントローラーの決定ボタンを強く押し込み、再びボスへと挑戦する朝日さん。


 モニターへと向けられる眼差しは真剣そのもの。


 彼女がこうして週末にやってきて、ゲームをするようになってもう二週間が経つ。


 俺たちがどうしてこんな関係になったのか。


 この光と闇の戦いの歴史を紐解くには、少し時間を遡る必要がある。

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書籍第一巻は10月13日発売!!

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