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王宮生活の始まり(1)


 王宮での生活が始まった。


 王宮と言ってもその敷地は広い。


 王都の北、小高い丘の上に王宮がある。正門を通過すると噴水と巨大な黒竜の像の広場があり正面に見えるのは本宮だ。ここには夜会が開催される大小のホールや会議場などがある。向かって左に各種役所が入っている建物がありその奥に分館、さらに奥に従業員のための寮など居住スペースがある。右手には騎士団の訓練棟や武道場、魔術の練習棟のほか竜騎士団、王国騎士団の建物や魔術院もある。竜場はその奥に設けられている。


 そしてさらに奥、塀と門に仕切られた奥に王族の居住スペースがある。奥宮は国王の居住スペース、現在王太子であるジークも奥宮に住んでいる。


 奥宮は許可を得た人間しか入れないが奥宮と本宮は通路でつながっていて本宮の奥、奥宮に近い辺りの三階に国王の執務室、宰相の執務室、二階に王太子の執務室がある。


 そして離宮、離れた地にも王室の離宮は何カ所かあるが王宮内にも三つの離宮がある。


 西の離宮は賓客の為の離宮である。


 奥宮と同様の警備に守られているのが北の離宮と東の離宮。北の離宮は王太后様の住まいであり今回私とおかあさんに与えられたのは東の離宮だった。

 と言っても同じ部屋ではもちろんない。

 私とおかあさんには寝室や居間を始めとする数室の部屋や専属の使用人が与えられていて気軽にお互いの部屋を行き来すると言うわけにはいかないようだった。



 まずメイドと侍女。


 離宮に沢山のメイドや従者がいるが私にもおかあさんにも数人の専属メイドが付く。そのほかに侍女が付くことになった。


 メイドや従者は平民がほとんどだが侍女や侍従は余程の例外でなければ貴族がなる。アウフミュラー侯爵家には侍従はいても侍女はいなかった。


 私に紹介された侍女はレーベッカ・アージンガー子爵令嬢。私より五つ年上の女性だった。


「お初にお目にかかります、レーベッカ・アージンガーと申します。ヴィヴィアーネ殿下よろしくお願いいたします」


 完璧なマナーで挨拶したその女性はとても聡明に見えた。


「こちらこそよろしくお願いいたします」


 仲良くなれるといいな、と言う願いを込めて私は挨拶を返した。



 次に護衛騎士。王族の護衛は近衛騎士が勤める。今まで近衛騎士が所属する王国騎士団第一隊は十五名ほどしかいなかったそうだ。精鋭中の精鋭だ。第一隊の隊長は王国騎士団のフーベルトゥス騎士団長が兼ねている。その近衛騎士がこの度倍の三十名に増員されたそうだ。私にも五名の専属護衛騎士が付くことになった。その筆頭がアロイス・ブルックナー。


 彼は大柄で鋼のような体躯を持ち短く刈り込まれた黒髪と頑固そうな口元の二十代半ばに見える青年だった。


 五名の近衛騎士が挨拶と自己紹介をする間も私が挨拶を返すときも彼は一度としてにこりともしなかった。



 これからの生活、私の一番身近な人間は侍女のレーベッカと護衛のアロイスになるだろう。

 しかし私は初日にして既に疲れ切ってしまった。


 アウフミュラー侯爵家に居たときは使用人のみんなと仲が良かった。メイドのエリゼや執事のオットー、護衛のハーゲンが懐かしかった。そして侯爵家に居たときも学院の寮に居たときもおかあさんが一番身近な使用人として常に支えてくれていた。


 私は今までなんて恵まれていたのだろうと思わずにはいられなかった。


 でも私よりおかあさんの方が大変だ。おかあさんの方が慣れていないことだらけなのだ。明日早速おかあさんに会いに行こうと私は決心して眠りについた。









 王宮で生活して一週間が過ぎた。


 レーベッカとアロイスを始めとする使用人や護衛の人達とはうまくやれていると思う。可もなく不可もない感じだ。


 おかあさん、いえ、お母様には数度会いに行ったが思ったよりは心配いらなそうだった。


 お母様の侍女はなんとタウアー夫人だった。アウフミュラー侯爵家にマナーを教えに来てくれていた先生だ。厳しいけれど気持ちのさっぱりした先生で私はタウアー夫人のことが好きだった。タウアー夫人ならお母様とも顔見知りだしお母様も安心して付き合えるだろう。多分お父様が手配してくれたのだと思う。お父様に感謝した。


 そして護衛騎士の筆頭は学院から王都まで護衛してくれたユストゥス・クラフト様。初めて会った時は何て軽薄な人だろうと思ったけれど細やかな心遣いができる人で、王都までの旅は彼のおかげで楽しかった。彼の軽い口調で私とお母様は旅を楽しむことができたし沢山笑わせてもらった。


 彼とタウアー夫人がお母様についていたら安心だと思えた。


 それからジークや陛下も時間の許す限り顔を出してくれた。ジークは今までに三度私のところに来てくれたが、同じくらい陛下もお母様のところに顔を出しているようだった。お父様は陛下と共にお母様のところに行くほかに私のところにも顔を出してくれた。半分は仕事がらみの訪問だったが。


 お父様は王宮暮らしに慣れて来たこのタイミングでこれからの予定の打ち合わせに来てくれたのだった。

 私は来週から各種教育が再開する。

 午前中は学院で行っていた王太子妃教育。座学が中心だ。午後は魔術の授業と王族のマナーやしきたりの教育が中心になる。


 マナーやしきたりの教育はお母様と一緒に受けられることになった。

 お母様は先日魔力封印の第一段階の解除を行い、アルブレヒト先生が魔術を教えるらしい。私が午後、お母様が午前を中心にカリキュラムが組まれていると聞いた。


 それなりに忙しい毎日になりそうだがちゃんと息抜きの時間や休日も設けられていた。お父様のおかげだと思う。



 明日から教育が始まると言う前日、嬉しい訪問者があった。





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