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オリヴェルトの訪問(2)


 オリヴェルトの願いの一つはマリアとヴィヴィをリードヴァルム王国に迎え入れたいというものだった。


 そしてもう一つ、オリヴェルトが願い出たのは……


『竜と契約させてほしい』というものだった。


 今までヴェルヴァルム王国は他国の人間が竜の森に入ることをかたくなに拒んでいた。結界を張り門を設け誰も許可なく竜の森に入らないように管理していたのである。


 トシュタイン王国のパルミロ以下竜の森に忍び込み竜と契約したものは処刑されている。パルミロたちは他の罪状もあったので処刑以外はありえなかったが。


 余談ではあるがトシュタイン王国の王宮で王を探し王宮中を探索したときにサロモネの離宮から数人の令嬢が発見された。

 彼女たちはヴェルヴァルム王国からパルミロによって攫われた貴族の令嬢たちであった。

 彼女たちは薬と洗脳によって精神状態はボロボロでありパルミロやサロモネの言いなりだったそうだ。

 パルミロは竜との契約の仕方やウォンドの使い方などを彼女たちに指導させたらしい。

 また魔力の高い子供を得るためにパルミロやサロモネの慰み者になっていたが未だ妊娠した女性がいなかったのは幸いだった。彼女たちは秘密裏にヴェルヴァルム王国に送り届けられ家族の元で療養生活を送っているが薬を使われていた期間が長いため精神が元に戻ることは難しいらしい。


 このこと一つをとっても彼女たちの家族はパルミロに極刑を願った。


 話を元に戻すとオリヴェルトは竜と契約するのはきちんとヴェルヴァルム王国の許可を得るべきだと考えヘンドリックに願い出た。一度で許可が降りなくても何度でも願い出る覚悟である。

 もちろんできる範囲であるが対価は支払うつもりだ。


 国を纏めていくうえで竜は象徴になる。

 トシュタイン王国の王宮に攻め入った時、白竜と黒竜がわが軍を見守るように上空から見下ろしていたことが早期に決着をつけることが出来た大きな要因であるとオリヴェルトは理解していた。


 予想に反し許可はすんなりと下りた。


 ヴェルヴァルム王国では今回の戦とリードヴァルム王国の建国を機にもっと国を開いて行こうと会議で話し合われたそうである。

 その一端として希望があれば各国の王族の竜との契約を認めるというものだった。


 王族と限定したのは人数を抑えるため、調査がしやすいためである。それに現在竜と契約できるほど魔力が多い者はヴェルヴァルム王国以外では王族とその周辺の高位貴族しか残っていないだろう。


 もちろん相応の対価は貰うし、様々な条文にサインを貰う。ヴェルヴァルム王国と友好を結ぶ、ヴェルヴァルム王国に対し戦や陰謀を仕掛けないというものが最大であるがそのほかにも竜に対する待遇など細かな約定を今精査している途中だとヘンドリックは言った。


 そのうえでヴェルヴァルム王国から調査が入り信頼できると決定されれば竜と契約させてもらえるらしい。


「オリヴェルト殿なら問題ないでしょう。それにこれから各国にアピールしていくつもりですがオリヴェルト殿が第一号となって下されば話題性としては十分でしょう」


 会議にかけてからであるがオリヴェルトの竜との契約は今年の秋になるだろうとヘンドリックは微笑んだ。











 

 その夜はリードヴァルム王国の国王をもてなす晩餐会が開かれた。


 出席者は王族と公爵、侯爵家、大臣や騎士団長など主だった役職の人達。基本的にはパートナーとの列席になる。


 和やかに食事が進められていく中でオリヴェルト様が何度も熱い視線をお母様に送っているのがわかった。その視線は三回に一回のペースで私にも飛んでくる。そのたびに隣に座ったジークがテーブルの下で私の手をぎゅっと握った。


 晩餐が終わり離宮に戻る。


 リードヴァルム王国の御一行様は当然西の離宮に滞在すると思っていたのだが部屋に入って寛いでいるとノルベルト様に呼ばれ離宮のサロンに向かった。


 サロンに入るとなんとオリヴェルト様がいた。


 ノルベルト様が口に手を当ててしーのポーズをしながら「今夜はオリヴェルト陛下はこちらの客室にお泊りになられます」という。なんかちょっとかわいい。


 その言葉を聞いてお母様は瞳が潤みだしている。


「陛下に……お心遣い感謝しますとお伝えください」


 お母様の言葉にノルベルト様は綺麗なお辞儀で答えた。


 彼が出ていってサロンには三人だけが残った。

 離宮を警護している護衛騎士はいるがメイドたちは皆下がっている。レーベッカも帰宅済みだ。

 サロンには本当に三人きりだ。


 私たちはソファーに腰を掛けた。お母様がお茶を入れてくれる。

 一口飲んでオリヴェルト様は驚きの声を上げた。


「美味しい……!マリア、君が入れてくれたお茶は今まで飲んだ中で一番美味しいよ!」


「ふふっ。長い間侯爵家のメイドをしていたんですもの、紅茶を入れるのには自信があるの。ああでもオリバー長い間あなたの好物の鴨肉のシチューを作っていなかったから作り方を忘れてしまったかもしれないわ……」


「懐かしいなあ。私が好きだったのは()()()()()()鴨肉のシチューだよ。いつかまた食べてみたいけど君が傍にいてくれるならそれで十分だ」


 うーーーーわーーーー子供の前でイチャイチャしないで欲しい。


 ずっと離れ離れだったのだからイチャイチャしたくなるのもわかるけど……

 いつも落ち着いて優しいお母様が頬を染めて心なしかはしゃいでいる。こんなお母様はレアで可愛いけれどお邪魔虫は退散しようかなあ……と腰を上げかけたらオリヴェルト様に話があるから座ってくれと言われた。


 それから三人で話をした。思い出話や近況報告もあったけど話のメインは私とお母様にリードヴァルム王国に来て欲しいというものだった。


 国王陛下との話し合いの内容も教えてもらった。


 お母様はもちろん行くつもりだ。私は……私は……







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