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勇者が小銭を稼ぐには  作者: 三斤 樽彦
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第二話-④ 陰気な勇者が地球を回す

「さて、それじゃあ銀行強盗の計画を練りましょう」


 そう言った椎名さんは意気揚々とペンを手に持つと、大見出しに達筆な文字で『計画X』と書き記す。

 

 その下に書かれた犯行場所をみるに、どうやら実行対象は駅前から少し外れた場所にある●×銀行の支店のようだ。

 

 二年前だから記憶もあいまいだが、たしかあそこは大通りから一本外れたとことにあるせいか人通りが比較的少なかったはずだ。まあ別に妄想――椎名さん的にいうならただの思考実験だから場所なんてどこでも良いんだけど。


 よし、と小さくつぶやいた椎名さんはこちらに向きなおした。


「じゃあ計画を練る前に、()()をやらなきゃいけないわね。デッキに入ってるカードも分からないまま一人回しをするのは愚の骨頂よね」


「あれって?」


 さも当たり前のように椎名さんが口にした()()

 だが僕にはそれが一体何のことだか全く想像がつかない。


「いやいや、なにとぼけてるのよ。異世界転移者だったらお決まりのあれがあるでしょうに」


 そういって椎名さんは深呼吸をして手を僕の方へと伸ばし、


「ステータスオープン!!」


 と勢いよく叫ぶ。


 ――反響。

 人の気配すらない木造の廊下は、想像していたよりも数倍音を吸収せずにその音の波を遠くまで伝達させる。


「ステータス、オープン!!」


 二度目。


 今度は少し間を空けて、誰にでも聞き取りやすいように。


 ここまできて、僕はようやく彼女が何を成そうとしているのかに合点がいった。


「あの、椎名さん。大変申し訳ないんだけど僕が行っていた世界にはそういうのはなくて……」


 そう言った瞬間、彼女の身体はまるで針金でも入れられたかのように固まるのが見て取れた。


 あんなに煌めいていた目は生気を失い、水銀が流れ込んだかのようにどんよりと濁っていく。



 ――重苦しい沈黙が流れる。


 何秒、何十秒経っただろう。


 その間も、彼女は手を前に伸ばしたまま微動だにしなかった。


 そうして暫くしたのち、彼女は腕を下げて深呼吸。


 眼を閉じ、正中線を整えて見開いて――


「ステータスオー」


「僕が悪かったから! 楽しみにしてたのに本当ごめん!! だからもうこれ以上やめて!!」

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