なぜ聖女の妹は酷いキャラなのか?~創作における妹キャラの考察~
最近、聖女を題材とした作品が流行っている。悪役令嬢の派生みたいなものなのだが、書籍化しているものも数多くある。私は悪役令嬢ジャンルが好きでよく読んでいるが、そのついでにkindleさんにおすすめ作品としてよく上げられるので、聖女ものも割と読むことがある。
そこで気付いたことがある。これは聖女ものにおける共通項、つまりテンプレみたいなものなのだが……何故かいつも主人公が姉キャラで、敵役が妹なのである。妹は決まって性格が最悪で、姉のものを全て奪っていく加害者であり、姉はいつも被害者である……というところからストーリーが始まる。最終的に妹は「ざまぁ」されてしまうところまでがテンプレ。何故なのだろうか?
私にとって創作における妹キャラとは基本的に良い子である。そういった作品を見続けてきたからか、「妹は主人公の味方で裏切らない」という認識が出来てしまっている。
例を挙げるなら、けいおんの平沢憂、プリパラの真中のん、まちカドまぞくの吉田良子などなど。基本的に主人公の妹はシスコンで有能で姉の味方キャラなのが常であり、敵になることは滅多にない(たまにはある)
ところが何故か聖女ものでは妹は真逆の「悪」の存在であることが多い。マジで多い。
これは本当に謎である。一言にテンプレで終わらせればそれでいいのだろうけど、何故そういうテンプレになったのかが分からない。逆でもいいのでは無いだろうか? 良い子の妹が主人公で、姉の性格が死ぬほど悪いパターンとかでも別にいいはずだ。だがそのパターンは聖女ものにおいては見たことがない。
唐突だが自分語りをしよう。私は現実では弟である。三人姉弟で姉二人の家庭で育ってきた。そしてリアルの姉が2人いる身で言わせてもらうと、姉は基本的に弟に対して暴君である。優しいことなどあんまりない。姉は弟に嫉妬するし、弟をパシリに使う。弟は姉の奴隷なのだ。
だから、聖女ものにおいて姉が完璧で聖女で優しいみたいな風潮には非常に疑問がある。性格のいい姉なんてイナイヨ?
まぁ、私の個人的な事情はともかくとして……何故聖女ものがこぞって妹を悪者にするのか本当に分からないのである。私の姉が暴君であったのと同様に、作者がリアルで妹に何か恨みでもあるのだろうか? 創作というのは、作者の主張や思想がついつい出てしまうものである。だから、妹に対する鬱憤が創作に出て、妹を悪者にしちゃったのだろうか……いや、それにしても多すぎないか? 聖女ものを書く作者はリアルでは全員姉で、妹がいたりするのだろうか? そんなに家族構成が偏ることあるか? と考えると、また納得いかない感じがする。
別方向から見てみよう。それは、男性向け作品と女性向け作品の差だ。
男性向け作品では、妹キャラは「理想」として描かれ善良なキャラになることがほとんどである。対して、女性向け作品では兄キャラが神格化されることが多いように思われる。聖女ものは基本的に女性向け作品なので、そういった性別による思想の差なのかもしれない。それなら理解出来ないこともないけど……いや、やはりそれでも「姉と妹の差」が納得できない。女性は同性である妹がクソだと思ってるなら、姉がクソだと思ってる女性も半分いていいはずである。それなのに何故いつも妹は悪者なのか。
結局実も蓋もないことを言うと、聖女ものにおいて妹が悪者だというのは「それがテンプレだから」としか言い様がないのかもしれない。悪役令嬢ものにおける敵が乙女ゲームのヒロインと同じくらいのテンプレ。そうでなければ、作者の家庭環境は各々違ってるのが当たり前なのに、同じようなものばかりが出力される理由が私には思いつかない。
しかし、妹が悪役というのは読んでてとても心苦しく感じる。それが血の繋がってない義理の妹でも心苦しいのだが、血の繋がった実の妹設定なら尚更だ。妹が悪いことをしまくって最終的に「ざまぁ」されてしまうのがテンプレなのだが、そのざまぁのされ方も見てると辛いものがある。
勘当や投獄、平民堕ちはまだヌルい方だろう。もっと悪くなれば廃人化、狂人化、娼婦堕ち、処刑などは当たり前で、いずれも妹の末路は惨たらしいものだ。一方、聖女である姉はそういった「ざまぁ」された妹を救おうとしない。そりゃ散々悪いことしたかもしれないが、一応血の繋がった妹でしょう? 聖女なのにちょっと冷たくない……? そこがスッキリしないから、聖女ものがいまいち楽しめないところがあるのだ。
それでも妹の末路が気になって最後まで読んでしまうこともある。何かの間違いで姉妹百合エンドになることを期待しているのだ。そんな淡い期待をして最後まで読んでいる私のことを愚かな人類だと思ってもらっても構わない。まぁ、大体ざまぁされておしまいだけど。つらいので、姉妹百合ください。