2:マフィアと結託しました。
マヨネーズの販売はいたって順調だった。
儲けまくったから変な連中に絡まれたりするかなーと思ってたけど、特にそんなこともない。
マヨネーズをひたすら生産する会社『マヨ・ラエル』(※社員数2名)は今日も順調に業績を伸ばしまくりだ。
この街って貧民街とかあるのに治安がいいのかなぁ?
そんなことを思っていたある日のこと、俺は売り子として雇った女の子の家にお呼ばれすることになった。
病気が治った親御さん共々お礼を言いたいそうだ。礼儀正しいっすね~。
というわけで、ウチの自慢の売り子ちゃんことリーシャの後に付いていく。
……すると彼女は貧民街のほうに入り(ここまではまぁわかる)、なぜかチンピラ連中に「お嬢、そしてアズ・ラエル様ッ! ご機嫌麗しゅうッ!」と頭を下げられたり(意味がわからん)、小汚い子供たちに羨望の目で見られたり(まったくわからん)、そんなことがありながらボロボロだけどデッカい屋敷の前に連れてこられた。
ここがリーシャの実家らしい。そんでもって応接室に案内されると、
「――これはアズ社長ッ! ご足労いただきありがたく存じやすッ!」
そう言って、リーシャの父親だというどう見てもマフィアなボスのオッサンに頭を下げられたのだった。え、なにこれ恐い。
さっきから何が起きてるの……もうアズくんお腹痛くなってきたから帰っていいすか?
そんなことを思っていると、お茶を持ってきたリーシャが上機嫌に笑った。
「ごめんね社長、色々とビックリさせちゃったでしょ? 実はアタシのパパ、貧民街一帯を取り仕切ってるそこそこ偉い人なのよね~。
まぁ怖そうな顔をしてるけど平和主義だし、人だってちょっとしか殺してないから安心して!」
って安心できねえよ怖いわ!
え~……要するにマジでマフィアのボスだったのかよ。
そりゃあどんだけ儲けても悪い連中が寄り付いてこないわな。俺、知らない内にボスの恩人になってたわけだし。
よし、納得も出来たし逃げ帰ろう。
そう思っているとボスが声をかけてきた。帰らせて。
「いやぁ~社長には本当にお世話になっちまった! 偉いっつっても所詮は貧民たちの長だからなぁ、治療費のせいで娘にも心労をかけちまったし申し訳ない限りだ。オレのことなんざ放っておけと言っていたのに……」
「もーパパってば。家族なんだから放っておけるわけないでしょ? それに、貧民街の孤児たちにかけているお金を少しでも自分のために使えばどうにかなったかもしれないのに……」
「馬鹿言え、こんなオッサンの命よりもガキどものほうが大事だっつの。
……まぁ、本音を言うならそりゃあ死にたくなかったけどな。オメェにも悲しい思いをさせちまうとこだったしよ」
そう言ってリーシャの銀髪を撫でるパパさん。どうやら普通にいい人らしい。
まぁ殺人経験のある人がいい人なのかはさておき、とにかく害はなさそうだ。
じゃ、お礼も言われたしもう帰っても問題ないっすよね! アズくんさっきから恐怖で胃袋に穴が開きそうなんすよ~!
つーかあれだ。俺はもうマヨネーズ販売をやめようと思っている。
お金は十分稼げたことだし、これからはどこか静かな街で平和なスローライフを送っていくつもりだ。
間違っても殺人経験のある人とかマフィアのボスとは関係を持たずにな!
というわけでマヨネーズ販売会社『マヨ・ラエル』は閉店です! おつかれさまでしたー!
「――ところで社長、実は相談があるんだがよぉ?」
ふぇっ?
「貧民街の出身ってだけで、なかなか職に就かせてもらえねえ連中がいてなぁ。そういう奴らのこと、どうかアンタの会社で雇ってくれねえか?」
……そう言ってものすごい眼力で俺を見つめてくるパパさん。
本人にその気はないのだろうが、子供だったらチビりそうなほどの威圧感を放っている。
そんな中で『あ~ウチ閉店するんすよ~』とは言えず、ビビった俺は首を縦に振ってしまったのだった……!
そして翌日、
「「「「「「「「お世話になりやすッ、アズ社長!!!」」」」」」」」
……筋肉ムキムキで刺青とか入れまくった500人くらいのチンピラたちが、一斉に俺に頭を下げてきたのだった……!
ってどうしてこうなったーーーーー!?
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