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個室での出来事

作者: 鰤金団

我輩が初めてこの職務に就いた時の事を話そうと思う。

我輩はこの職務に就いてから一度だけ理解に苦しむ出来事に遭遇したのだ。

先代に話を聞いても経験したと言う者はいなかった。

それほどまでに珍しい出来事だったのだ。

何しろ我輩も、生涯でこんなにも考え方の違う者に会う事になろうとは思いもしなかったのだからな。

むしろ会う事など無いと断言出来る自信を我輩は持っていた。

我輩は由緒正しき生まれなのだから。

と、前置きが長くなってしまったが、本題に入るとするか。



事の発端はとある個室に我輩が入った時の事。

その個室には我輩より先に女性が二人いたのだ。

由緒正しき生まれの我輩が先に挨拶をする事は癪だったが序列で言えば我輩が下になるので渋々我輩から女性二人に挨拶をしたのだ。

我ながら礼節を重んじた挨拶だったと思う。

しかし、しかしだ、片方の女性ほっそりとして肌の水水しい女性だったが、初対面の我輩に対して「か〜た〜い〜、おっさんじゃないんだからちょうらくらくにいこうよ〜、それからあたいの名前ウェリーっていうのよろしくぅ〜」言いおった。

正直ウェリーの喋り方を聞いた時は異国の者だと思ったぞ。

それに比べてもう片方の女性はふくよかな体格でとても礼儀正しい者だった。

淑女と言っても良いほどの女性だった。

「初めまして、私の名前はマリルと言います、仲良くしてくださいね。」

我輩はマリルに一目惚れしてしまったよ。

我輩としてはマリルとお近づきになりたかったのだが、我輩が女性に夢中になって失敗をしてしまっては由緒正しき一族の名に傷が付いて仕舞いかねない、それ故に我輩は少しずつマリルと交流をして心の距離を近づけていったのだ。

職務に就いて半年程過ぎた頃の話だ。

マリルが突然「私、一週間程お休みを戴こうと思うの。」と言い出したのだ。

余りにも唐突だったので我輩とウェリーは顔を見合わせてしまった。

話を聞くと同窓会があるので一週間程休むと言う事だったのだ。

流石の我輩も個人の交友関係に口を出す程無神経な事はしない。

我輩とウェリーはマリルに楽しむよう言って彼女を送り出したのだ。

今にして思えばあれが彼女の分岐点だったのだろうな。



マリルが帰ってきたのは10日後の事だった。

戻ってきた彼女の姿を見て我輩とウェリーは驚いたよ。

10日前の彼女とは全てが変わっていたのだから。

驚きながらも我輩は無断で3日間休んだ事について問い詰めた。

それだけ彼女を心配していたのだからな、だが、マリルは「ごめんなさいねぇ〜、同窓会行ったら皆が今流行ってるコアノンってタダで体験させてくれるって言うからやったら〜チョウチョウ体形変わっちゃって遊びまくちゃったの〜」などと言って自分が悪かったなどと微塵も思っていなかったのだ。

別人となったマリルはウェリーと波長が完全に合ったのか夜な夜な遊び歩くようになった。

ウェリーも最初は喜んで付き合っていたのだがそれが3週間、しかも休日は徹夜で遊び歩くとなるとウェリーもげっそりとしていた。

その証拠に水水しかったウェリーの肌がカサカサになっていた。

ウェリーがマリルの誘いを断るようになると今度は一人で遊び歩くようになった。

そしてウェリーという制止役がいなくなった為、無断欠勤が増えて職務を全うせずに辞めてしまったのだよ。

ウェリーは職務を終えて引退したが、マリルは今何処で何をしているのやら・・・。



我輩は今でも理解する事が出来ぬよ。

体形が急激に変わるとあそこまで変わるのかと。

それになぜ、ウェリーのような者がこの職務に就いたのか。

さて、職務の時間だ。

我輩ももうすぐ職務が終わるな。

トイレットペーパーとしての職務が・・・。

トイレットペーパーを擬人化したお話です。

ウェリー→ウェットティッシュ

マリル→芯ありロール

コアノン→芯なしロール

我輩→皇族印のペーパー

となってます。

あらすじで書いた由緒正しき者のみが入れる場所というのは皇族印の入ったペーパーの事を指しています。

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― 新着の感想 ―
[一言] 後書きでオチを説明しなければならないのは、致命的です。それと、それほど上手な風刺だとは思いません。
[一言] ものがたりのオチも含め、先のよめない展開は短編ならでは。 少しきつめの文と思いましたが、おじさん(会社の部長)のような書き方は、王族の伏線だったとは、最後に納得しました。 お…
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