21.ユミの執念
翌日になっても、相変わらず私に向けられた冷たい視線が和らぐことはない。
覚悟はしていたけど、やっぱり辛いな……
「実花……、お昼、屋上行かない?」
そんな私を優菜は見ていられなくなったのか、こっそり耳打ちする。
私は小さくコクリと頷いた。
一方、翔太はユミを呼び出していた。
「ユミ……。ユミには、ちゃんと話しておきたいから聞いて欲しい。実花と、ちゃんと付き合うことになったんだ」
張り詰めた二人の空間を切り裂くように、俺は話し始めた。
「俺は今まで、ユミが俺との関係をどう言おうが否定もしなかったし、肯定もしてこなかった。でも、その事で実花が今苦しんでるみたいなんだ……。俺が彼女に何があったのか、いくら聞いても口を開いてくれないけど……」
ユミは翔太が気づかない程微かに口角を上げ、不敵な笑みを浮かべたかと思いきや、ころっと心配した表情に一変する。
「翔太……、言いたいことは分かったわ。翔太の気持ちもちゃんと確かめずに、みんなに誤解されるようなことを今まで言ってきてしまって、ごめんないさい」
スッとユミは頭を下げた。
夏まつりの時のユミの様子からして、また錯乱されてしまうことも覚悟してたが、素直すぎるその態度に、正直拍子抜けしてしまう。
「私も友達から聞いたわ……。夏祭りに私たちのこと見てたクラスメイトでもいたのかしら……? あの後、実花ちゃんのクラスで、谷島くんと仲よかったのに翔太の事も好きみたいな噂流れたらしくて……翔太のファン達が実花ちゃんの事怪我させたって聞いたわよ?」
早速ユミに翔太の取り巻きたちから、実花に翔太に近づかないようにお灸を据えたと報告があったのだ。
「……やっぱり、そうだったのか……」
実花に申し訳なくて、今すぐにでも彼女の傍に行って謝りたかった。
「ねぇ、翔太? 自分がどの位人気者かって、少しは考えたことある?」
ユミは上目遣いで翔太に近寄り確認する。
「いや……、俺、別に人気者だなんて思ったことないし」
いきなり何を言い出すんだと、面倒くさそうにユミを見る。
「実花ちゃんと付き合いたいなら、もっと自分の立場、理解した方がいいわよ? でないともっと実花ちゃん、危ない目に合うんじゃないかしら?」
視線を翔太から離さない。
「……どう言うことだ?」
ユミに返事を求める。
「この学校の人ほとんどは……翔太も分かってると思うけど、私と翔太は付き合ってるって思ってるわ。
私、自分で言うのもなんだけど、他の女の子が翔太に手を出せない位のスペックは持ってるって思ってる。だから、人気者の翔太と私のことを周りも認めてくれてるんでしょ?」
ふふと笑いながら続ける。
「そこに、いきなり実花ちゃんと翔太が付き合うって言ったところで、一体誰がそれを受け入れると思ってるの?」
俺はカチンときた。
「俺にとっての一番は誰がなんと言おうと実花だ!!」
珍しく口調を荒げた俺に驚いた顔をしながらも、何食わぬ顔をして続けるユミ。
「翔太のこと好きな子はいっぱいいるのに、『実花ちゃんが付き合えるなら私の方が』って思う子たくさんいるわよ? きっと」
なんでこんな簡単のこと気づいてないのよと、言わんばかりの表情でユミは俺に詰め寄った。
「ねぇ、翔太。実花ちゃんの事ちゃんと守りたいなら、私、上辺だけでも学校ではこの関係続けてもいいのよ? 私がカモフラージュになってあげるって言ってるの! 別に、翔太がどうしても嫌ならいいけど……実花ちゃんとのことは、ゆっくりみんなに分かって貰えばいいじゃない?」
どうしても嫌だっと思った。
でも、今のままでは、実花が危ない……
ユミの言うこともわかるし、ユミがそう言ってくれるなら、その言葉に甘えた方がいいのか……?
翔太は悩んだが、今は緊急事態だと思った。
実花のことをこんな形でも守れるなら……と。
「分かった……。ユミは、それで平気なのか? 俺はユミには、何もしてやれない」
ユミに心が動くことは今後全くない、そう俺には揺ぎ無い自信がある。
「いいのよ、別に」
ユミは笑顔で答えてくれている……
「いつまでもとは言わない……文化祭が終わるまででいい。実花のことも苦しめてしまうし……それまでにきちんとけじめつけたいって思ってるから」
俺はユミに頭を下げた。
ユミは、何故文化祭なのか……?
そう疑問に思ったが、とりあえず翔太との関係は繋がったと、胸を撫で下ろしていた……




