16.想いが繋がるとき
「翔太……違うよ、違うんだよ」
翔太への想いが抑えきれずに、泣きじゃくりながら強く横に首を振った。
「私がずっと好きなのは翔太なんだよ……?」
声の震えが止められない。
「実花……?」
翔太は混乱した表情を見せる。
「……翔太が居なくなってから、心が空っぽになって……うちのお母さん、早くに死んじゃったでしょ? 翔太も知ってる通りお父さんの具合も最近悪いし……大切な人がどんどん私の側からいなくなっちゃうって、いつも怖かった……」
翔太は震える私の肩にそっと寄り添い引き寄せた。
「でも、翔太のことを思い出すだけで私幸せな気持ちになれて……なのに現実にはいなくて……。何度も忘れよう、そう思ったの。じゃなきゃ前に進めないから……。でも無理だった。空を見上げれば翔太が私の傍からいなくなった日を思い出して……消えるどころか、逢いたい気持ちがどんどん大きくなって……」
自分も5年越しの想い、翔太に絶対伝えなきゃ……それ一心だった。
「そしたら、おんなじ学校にいるんだもん…! でも、どうしたらいいのか、わからなくて……。私も翔太と同じように、忘れられてるかもしれないって、凄く怖かった……」
震えながら泣くまいと自分と戦っている実花を、翔太は堪らなく愛しく思いながら、実花の気持ちに寄り添うように優しく髪を撫でる。
「それに翔太、とってもキラキラしてて……綺麗なユミ先輩っていう彼女もいて……私とは別の世界に行っちゃったんだなって……」
泣きすぎて上手くしゃべれない……
今、翔太が隣にいることがまだ現実だってことが信じきれない自分がいる。
「実花……。ユミとは付き合ってないよ。心配しないで……」
翔太は、私の頬を両手で包み込み、じっと見つめた。
彼の長い指で、私の濡れた頬を優しく掬う。
「実花……俺、実花のことが好きだ……。実花以外、誰も頭に入ってこないんだ」
……泣いてるの??
私のおでこと、翔太のおでこがそっと重なる。
熱を帯びた彼の吐息が頬にかかった。
「もう、どこにも行かないで欲しい……ずっとそばにいて欲しい……。まだ間に合うかな……?」
翔太の頬がキラリと光った。
「もちろん……」
翔太と見つめ合い、にっこり笑う。
二人の心は溶けて、混ざり合うかの様だった。
翔太の逞しい腕で私を抱きしめる。
その手は優しく髪に触れ、やがて愛でる様に頰を撫でて……もう二度と離れないと心に誓った。
見つめあった視線は引き合うように絡み、ゆっくりと次第に距離が縮まっていく。
頰にかかる吐息の温もりをお互いに感じたら、目の前にいるのはずっと求めていた人だと確信する。
二人はそのまま静かに目を閉じ、離れていた時を埋めるかのように深く唇を重ねた……