1.記憶の扉が開く時
サブタイトルに数字が入っているところまではザックリ編集終わってます。
一気にはやっぱり無理だったので、ボチボチやっていこうと思ってます……(/ω\)
ホント、こんな読みづらい中見てくださった方ごめんなさいでした……(>_<)
「ふあぁぁぁ……」
っと大きく伸びをして、
「はぁ……」
と深くため息をつく。
静内実花。
高校1年生になって、早一ヶ月。
ようやく学校生活にも慣れてきたものの……
(最近また、ため息が増えたな……)
ちょっとヘコみながら朝の支度を始める。
ボサボサの髪を無造作に縛り、冷蔵庫を覗く。
「あ、昨日作った肉じゃが余ってたんだ、ラッキー!」
レンチンして簡単に朝食を済ませると、サッと顔洗って歯を磨き、セミロングの髪の毛にアイロンをあてる。
冷食を弁当箱に可愛く詰め込み、一応女子高生だし、色付きリップを引いて出来上がり。
これが私の朝のルーティン。
一人きりの家は、少しでも気を抜くと沈黙が襲う。
そんな時はいつでも誰かが側にいてくれた時の事を思い出し、心を温める。
両親は……というと、父は最近体調を崩して入退院を繰り返し、母がは私が五歳の時に交通事故で他界。
ほぼ一人暮らしも、板についてきた今日この頃だが、本当は寂しさに負けそうになる時もある。
『ピンポーン』
玄関の呼び鈴が軽快になる。
「実花ー!! 支度できたー??」
親友の立花優奈。
いつも支度が遅くて優奈を待たせちゃう。
「今日はバッチリ! 速かったでしょー」
毎日の如く、同じセリフで優奈の機嫌をとると、いつも散々待たせてるくせに!と口を尖らせる彼女は、名前の通り優しくて明るい、中学からの私の自慢の友達だ。
優奈と他愛のない話をしながら通学することが、今の私にとって癒しの時間でもある。
「ねぇ、実花。今日放課後時間ある?」
唐突に優奈が尋ねる。
「うん、今日はバイトないし大丈夫だけど、何?」
少しでも生活の足しになるように、喫茶店のアルバイトしている私は、何かと多忙である。
「実はさー、サッカー部にめっちゃイケメンの新入生入ったんだってー! ねぇ、見に行こーよ!」
ピョンピョン跳ねながら優奈は茶目っ気たっぷりに誘ってくる。
「はいはい、付き合いますよ。いつも待たせてますからね」
あんまりイケメンとか、彼氏とか、付き合うとかそういうワードを無意識に避けている私には本当に興味のない事だったけど、優奈に借りばっかり作っても良くないなぁと思って、誘いにのった。
スキップしながら先を行く優奈を追いながら、ふと見上げると、雲ひとつない五月の空が広がる。
(あの時も、こんな空だったなぁ……)
切なさに包まれた遠い昔を思い出してまた、ため息をついた。
放課後の校庭のネット脇。
「実花ー! 早く早くー!!」
優奈に引きずられるように引っ張られ、サッカー部の練習が見える場所に……は、すでに、たくさんの女子が群がっていた。
「あ〜あ。遅かったか……」
優奈は『それ見たことか』と言わんばかりの表情で私に視線を送る。
「キャーっ!! 狭山クーン!!」
黄色い声の先には、シュートを決めて笑顔でハイタッチする男の子の後ろ姿が見えた。
私はこれだけの女子を集めるなんて、一体、どれほどのイケメンなんだろう?
そんな興味も持ちつつ、目を細めた。
「………っ」
懐かしく、見覚えのある顔が視界に飛び込んでくる。
その姿は、私の脳裏に残っている記憶よりもずっと背が高く、大人びた眼差しをしていた。
(……翔太? まさか……、まさか……そんなはず……、きっと人違いよ……)
息が止まるかと思った。
凍りついていた時間が急に溶け出し緩やかに動き始める。
(本物? だったらどうしよう? まさか?)
私の心は混乱し激しく揺れていた。
周りの声も景色も消え、彼だけが私の視界の中をくるくる走り抜けていた。