にゃんと鳴く虎 13
「夜は随分冷えるんだね……」
半刻程進んだ時、アリアが口を開いた。
心なしかアリアの声が震えているようだ。
ふさふさの体毛に覆われた獣人と比べると人間の肌は保温機能が弱い。
……逆に言えば灼熱の砂漠などは人間のほうが旅をするには適してると言えるが──。
「人間は寒さに弱いからな……」
そう言うと私は着ていた外套を脱ぎ、アリアに差し出す。
「ありがとう。……でも、ガルのは大きすぎて動きづらいから駄目よ……」
「いざとなったら脱ぎ捨てて構わん」
寒さで体がこわばってしまうと、どうしても動作が緩慢になってしまう。
「でも……これ、ガルの一張羅じゃない……そんなぞんざいに扱うのは……」
「体を冷やさないのは旅をする上で最も大切な事の一つだと教えたはずだが?」
緩慢な身のこなしでは十分に実力が発揮できない。
実力では勝る相手に、本調子で無い為に倒される事は何よりも後悔の残る倒され方だ。
悔やんでも悔やみきれない。
ふと、数人の虎獣人の面影が脳裏を過ぎる。
……みな、凄腕のつわものだった。
それが──。
「……ガル?」
アリアが私の差し出した外套のすそを掴んで引っ張っている。
「あぁ……すまない……」
どうやら考え込んでいたため、アリアが受け取ろうと引っ張った外套を、いつまで経っても手放さなかったようだ。
「ぼんやりしすぎよ、ガル?ブランクが長過ぎたせいで、すっかり旅の勘が鈍った……?」
受け取った外套を手早く着ながらアリアが笑う。
「いや……」
そう。今は“あの時”とは違う。
いなくなった者の時はそこで止まり、生きているものは歩み続ける。
そして私は生きている。ただ、それだけのこと──。
「さて……準備完了……何か術者が好き好んで着るフード付きのローブみたい……」
当然と言えば当然だが、私の外套はアリアには丈が長く、胴回りも太い。
胴回りは革のベルトをしっかり締めることで幾分、マシにはなっているようだが、丈が随分と長く、アリアの言葉通り、一見すると術者のローブ姿に見えなくも無い。




