にゃんと鳴く虎 10
「す……凄いよ、お姉ちゃん!」
キセノが驚嘆の声を上げる。
「本当に精霊が使えるんだ……ね……」
ぐらり──。
突然キセノの体が傾き、床に崩れ落ちる。
素早く腕を差し出し咄嗟にキセノを受け止め──。
「キセノ君……大丈夫!?」
一拍遅れてアリアが駆け寄り、キセノに言葉をかけるが、小さく呻くばかりで返事が無い。
「どうしよう、ガル……さっきまであんなに元気だったのに……」
殆ど泣きそうな表情で私を見つめる。
「落ち着け、アリア……先ずは母親に連絡を──」
私の言葉で幾分落ち着きを取り戻したアリアはラッドを呼びに走って出て行ってしまった。
手のひらをキセノの頭に乗せると火傷をしそうなほど熱い。
「……どうなっている?……人間の体温はこれほど高くならないはずでは……」
アリアが風邪を酷く拗らしたときでさえ、体温の上昇はせいぜい二、三度程度だった。
それがキセノは十度……下手をすると二十度近く上昇しているのではないか……?
「大海の中の小さな一滴──甘露の恵み、ウォーティー」
静かに唱える──。
キセノにかざした指先、何もない虚空から小さな雫──ウォーティーが現れる。
しかし、ウォーティーは戸惑いの表情を浮かべてすぐに虚空に溶けて消えてしまう。
「怪我や毒の類では無いと言うことか……」
ウォーティーは軽度の怪我を治癒し、毒を浄化する力が有る。
そのウォーティーが手も足も出ないと言うことは、病か寿命と考えるのが妥当だが、まさかキセノが寿命だとは思えない。
旅に支障が出ないように、病に対する知識も多少は学んでいるが。
私が知る限りではこんな高熱に侵される病は聞いたことも無い。
途方に暮れそうになったまさにそのタイミングで、アリアがラッドを連れて脱衣所に戻ってきた。
「キセノ!」
ラッドが私の手の中でぐったりとしているキセノに駆け寄ってくる。
「此処では体が冷える……とにかく布団へ」
そういうと私は立ち上がり、ラッドの案内でキセノを部屋のベッドまで連れて運んだ。




