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もも  作者: サカモト
2/2

もも

お爺さんは光る実を()ぎ取り、一口(かじ)る。

「…うまい…何だこれは?」

噛んだ瞬間に極上の香りが広がり、その美味さは想像の遥か上をいった。

すると心臓の鼓動が早くなり、浮き出た血管が微かに光り始めた。

体がブルブルっと震え始めたかと思うと、震えは次第に収まり、腰痛や肩の痛みが和らいだ。

めっきり悪くなった視力も徐々にハッキリと見える様になった。

「こりゃ…凄い…婆さんにも食わせてやろう。」



お爺さんは来た道を駆け足で戻りお婆さんに実を見せた。

「わぁ!何ですかそれは?」

「桃みたいに甘い実だ!凄いぞ!見ろ体の痛みが無くなった!」

お爺さんははぴょんぴょんと跳ねた。

「あらまぁ!」

二人は仲良く光る実を食べた。

お爺さんは村の頼まれ事や光を纏った子供の事を話した。



そして寝床に着いたお爺さんは思った。

「もしかしたら、村人たちの力になれるかもしれない。」



翌朝、法眼(おじいさん)は目を覚ますと体の異変に気づいた。

筋骨隆々に若返っていたのだ、顔をペタペタと触るとシワ一つ無い。

股間に違和感を感じ、触ると顔が赤くなった。

隣を見ると、(おばあさん)も若返っていた。



法眼は見惚(みと)れて思った。

「出会った頃の初だ…。」

すると初が目を覚まし法眼の様子に驚き腰を抜かした。

「おっ…おま…おまえさん…?何事ですか?」

若返った二人は大喜びだ。

法眼は庭を飛び跳ね斧を振り回し、初は洗濯桶をクルクルと指先で回している。

初が法眼に掴み掛かり、二人は組み合いを初めた。



「転けた方が洗濯当番です!」

「ぐっ…くそっ!負けるか!」

二人は草花の生い茂る、坂に倒れ込む。

「ハァ、ハァ。」

「ハァ、ハァ。」

二人の吐く白い息は遠くへ流れてゆく。


法眼がムクッと起き上がる。

「これなら村を守れるかもしれない。この体ならきっと人の役に立てるはずだ。」

「でも、村の人たちは信じてくれるでしょうか?実を食べて若返ったなんて。」

「それもそうだな…じゃあ、村人にあの実を食べてもらおう。」



二人は、実の成る木へ向かったがそこは雑草が生い茂るだけだった。

「⁉︎…そんな馬鹿な!」

「本当にここに有ったの?」

法眼は昨夜見かけた小さな子供を思い出していた。



このままだと、老夫婦を殺した若い夫婦だと思われる。

それはまずいと思い、別の山へと移り住む事にした。

夫婦は太郎の墓に「また来るから」と別れを告げ荷物を背負いその場を後にした。



暫くすると、二人の間に玉のような赤ん坊が生まれた。

子供の名前は光る実から取って「桃」と名付けられた。

桃は二人の愛に包まれすくすくと育った。



だが…桃は万人とは異なる、とある特徴を持っていた。

二人はどうして良いものかとほとほと困り果て、山で好きに遊ばせる事はあっても

麓の村へは連れて降りる事は無かった…。


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