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4/6

3.エンカウントしました

 今日含め卒業パーティ(タイムリミット)まで、6日。


 作戦を練った翌日。何だかんだ楽しくって、寝るのが遅くなった。昔っから、S(シミュレーション)R(ロール)P(プレイング)G(ゲーム)…恋愛から戦略系ゲームまで幅広く好きだったから仕方ない。


「う〜ん…っと!」


 大きく伸びをする。今日は一段と良い天気な気がする。ベットから出て、窓の外を見る。春の陽気漂う、麗らかな庭だ。

 ノック音がする。エメルダが起きしに来たのだろう。


「はいはーい、どうぞー。」


 とドアを背に脱衣しながら返事。どうせ今か着替えるのだから何の問題もない。


「今日の朝食は何?」


 無難に卵系とか?白米に焼き魚とかも良いけど…ここ、西洋っぽいし白米出た記憶ないなぁ…残念。


 呑気な事を考えるも、エメルダからの返事はない。返事どころか、動かず固まっている様だ。ふっふっふ…お嬢様が自身で身仕度を整えている事に驚いたのだろう。褒めよ!崇めよ!!奉れよ!!!


 などと適当な事を考えるも、動きがない。

 心配になり、振り返る。


「…エメルダ?…っ!?」


 あり得ない。あり得ない人物を目にし、動きが固まる。


 ーモルガ母様と同じ、王家特有の金髪


 ー意志の強さを秘めた、燃えるよな緋色の目


 ー2次元から飛び出して来た、崇拝対象(イケメン)


「テッド・レイ・クォーツ…殿下。」


 お互い膠着(こうちゃく)状態。

 私はマリン…あれは殿下。今は着替え中…着替え中!?


「おっ、お見苦しい所をお見せいたしました!」


 かぁっと赤くなり、脱いだばかりの羽織で隠す。


「えっと、うん、あの、ごめんね。名乗らなかった僕も悪い。」


 おやっ?思ったより薄い反応…やっぱり、ヒロイン(スピネル)一筋って事だろう。いや、もしかしたら女子経験豊富的な?うわぁ…それは醒めるわ…。


「着替え、手伝おうか?」

「…やはり後者か…。」

「…マリン?」


 キョトンっと分からないといった表情…こいつ、役者だな。絶対、茶番劇(卒業パーティ)には上がらないからな。

 笑顔の仮面を貼り付ける。こんな所で、王妃教育が生きるとは人生何があるか分からない。


「ふふっ、私なら大丈夫なので部屋から出て行っていただけますか?」

「そっ、そうだね。エメルダを呼んでくるよ。」


 ニコニコとした王子スマイル。何も知らなければ、黄色い歓声必死だろう。でも大丈夫。こいつ、腹黒策士系キャラだから。絶対引っかからないから。


 笑顔の攻防戦の末、エメルダの訪室。着替えてる私を見て、無茶しないで下さいと飽きられたのは言うまでもない。無茶も何も…着替えくらいで心配性だなぁ。

 食堂に着くと、モルガ、ヘリオは言わずがな。テッド殿下に


「おはよう、マリン。」


 ー父譲りの銀色の短髪


 ー優しさを閉じ込めた燈色の目


「ゴシュ兄様!お久しゅうございます。」


 ゴシュ…ゴシュ・タイト・ベリル、3つ歳の離れた兄。

 幼い頃から甘やかしてくれた、大好きな兄。…イタズラをした時は、一緒に怒られてくれたっけ…。


「すまない…しばらく離れていた内に。」

「お仕事ですから。兄様は悪くありません。」


 ザ・美形の兄は…あれ、兄様、騎士で攻略対象だっけ?


「そ言えば、スピネルさんという方をご存知ですか?」


 とりあえず直球を飛ばす。もしヒロインが転生者なら、接触してる可能性は高い。

 兄様と殿下は、同時に目を剥く。おい、イケメンが台無しだぞ。


「ゴホン、噂の平民の学生さんだね。」


 ニコニコと兄様が言う。あっ、これ、何も聞くなって言う感じの言い方だ。

 …まさか、既にいい感じとか!?逆ハールート開拓されてるとか!??


「その子については、僕より殿下の方が詳しいよ?」

「なっ!?」


 ちゃっかりそらした。流石兄様、素敵です。


「ええ、存じています。よく一緒に居ますものね。」


 現世と前世の記憶を想起させながら話す。


「…それについて、マリアはどう思う?」


 真剣な殿下の表情…あぁ、王子だから不貞は許せと言うことだろうか?いいでしょう。私はマリンであり、マリンではない。嫉妬に狂うどころか、


「仲が良い事は素敵だと思います。」


 と満面の笑みで言える。

 そのまま、私が虐めてないって結論に至ってくれると、すごく助かる。おまけで穏便に婚約解消していただけると、感謝感激雨霰。

 すると、殿下は顔を顰める。あれ?兄様も。


「…ごめんなさい。マリンは女性らしさを生まれるの前に忘れて来たみたいなの…。」

「モルガ、マリンは鈍いが素直でいい子だ。」

「母様、父様…マリンが私を見習ってしまった事は本当に残念に思います。」


 落胆する家族と、撃沈する殿下。

 私、何かしたかなぁと、朝食を頬張る。うん、美味しい。


「ところで殿下。」

「テッド。」


 …面倒な訂正を入れてきやがって…。


「…テッド殿下。私に何用でしょうか?」


 早朝から来るなんざ、非常識。急ぎの用事とか?…はっ!婚約破棄!!

 覚悟を決めつつ、笑顔を貼り付ける。


「本当は、目が覚めた時に来たかったんだが…少し遅れてしまってね。少し顔を見たかっただけさ。」

「あら、そうでしたの。なら御心配ありません。私はとても元気です。」


 思いっきり走りたいくらいにと冗談を言えば、周囲の表情が引き攣った。

 見たのでしょう?さあ、帰れと言わんばかりにニコニコする。


「早く来れなかったお詫びに、一緒に買い物へ行かないか?」

「えー…。」

「明らかに嫌そうな顔はやめてくれないか?」

「分かっているのならば、誘わないで欲しかったわ。」


 連れのなぁと苦笑いする殿下。リアル推しの表情が可愛い、尊い、福眼。

 無表情を頑張って作る。


「今回はお受けまします。」


 家出後の物品とか買いたかったし、いいタイミング。

 殿下は、パァッと明るい表情。推しが可愛い過ぎる、辛い。

※余談:名前について3


・兄:ゴシュ・タイト・ベリル

→ゴシュナイトとペツォッタイト(ベリル系)


ちまちま読みやすいように追記や直してますが悪しからず…

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