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遠距離恋愛の果てに  作者: 藤乃 澄乃
【第8章】 目まぐるしい日々
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あこがれの先輩? (3)

 みんなの憧れの先輩。

 我が部署随一のキレモノ、将来出世間違いなしとウチの会社の女子社員たちが密かに狙っている3歳年上の山下利也としや先輩。

 おまけにイケメン高身長なみんなの憧れの的。


 そんな先輩にお茶に誘われ、いろいろお話したけれど。

 なんだか話しが妙な展開になってきて……。


 どうしよう。


 チラッと時計を見る。

 龍也たつやくんとお揃いの……遠距離恋愛が始まる前に買ってくれたペアウォッチ。


 今時スマホでも時間は見られるのに、敢えて腕時計のプレゼントをくれた彼、龍也くん。

 その時の会話を思い出す。


『どうして時計がよかったの? 時間ならスマホで見られるし、ペアならほかのものでもよかったんじゃ?』


『いや、いつも身につけていて、必ず見るもの。スマホを出すよりも早くみられるだろ?』


『まあ、そうだけど』


『そんでもって、時計は1日に何回も見る』


『うん』


『その度にお互いを想い出す』


 ……龍也くん。


 ほんとだ。あなたを想い出したよ。


 そろそろ帰ろう。


「あ、もうこんな時間。山下先輩、私そろそろ失礼します」


「もうそんな時間?」


「はい。私、門限があるので」


 そう。24歳にもなって、22時というキビシイ門限があるのだ。


「じゃあ、送って行くよ」


「いえ、結構です。ひとりで帰れますので」


 いくら会社の先輩とはいえ、初めてお茶した程度の付き合いのひとに、たやすく自宅を教えるわけにはいかない。その辺には私は妙にこだわる。


「そっか。もうちょっと葉月さんと話したかったんだけどな。残念」


「わあ、ありがとうございます。そんな風に言っていただけるなんて」


 そうして私たちは駅前のカフェを後にした。

 改札を入ったところで先輩とはお別れ。彼は私とは反対方向の電車に乗るから。


「本年はありがとうございました。また来年もよろしくお願いします」


 こんな挨拶でいいかな。


「こちらこそ、お茶に付き合ってくれてありがとう。来年もよろしく」


 にこやかに微笑む先輩に背を向けて歩き出そうとした瞬間、後から呼び止められた。


「葉月さん!」


「はい?」


 たった今別れの挨拶を交わしたばかりなのに。一体なんだろうと振り返る。


「この冬休み、一度会えないかな」


「え、どうして?」


 急な言葉に思わず失礼な問いかけをしてしまった。


「どうして、って。会いたいからだよ」


 いやいやいや、会いたいってどういうことでしょう?


「でも、私たちまともにお話したのって、今日が初めてなんですよ」


「だからもっと話しがしたいなって思ってさ」


「なんのために?」


「もっと葉月さんのことが知りたいなって」


 ん?

 どういうこと?



お読み下さりありがとうございました。


次話でいよいよ100話目となります。

今後ともよろしくお願いします!

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