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遠距離恋愛の果てに  作者: 藤乃 澄乃
【第7章】 秋から冬へ
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友人の悩み事(4)

 坂を上って、車は高台の駐車場に止められた。

 ここだと車に乗ったまま充分見晴らしの良い景色を堪能できる。

 しかし折角ここまで来たのだからと、車を降り辺りを散策してみようと話はまとまった。


 眼下には紅や黄に化粧された秋の彩り。

 澄みきった高い青に少し冷たい空気。透明な寒さを感じる。


「高台はやっぱ冷えるね」なんて言いながら少し歩いてみた。



 少しして浩ちゃんは言いにくそうに顔を赤らめて言う。


海彩みいちゃんにちょっと聞きたいことがあるんだけど」


「うん。いいよ」


「あー、やっぱ恥ずかしいな」


「なに? 言ってみ。お姉さまが何でも答えてあげるよ」


「あの……さ。俺、付き合ってる彼女がいたんだけど、もうずっと連絡とってなくって」


 え?

 なんだ、仕事のことかと思えば、悩みってそんなこと?


「それが悩みごと? っていうか、彼女いたんだ」


「うん、まあ」


「なんで連絡とらないの?」


「もう好きじゃないっていうか」


「じゃあ別れれば?」


「言いにくいし、なんとなくそのまま」


 どうやらもう数ヶ月、お互い連絡を取り合っていなかった彼女がいたらしい。本人は元カノだと思っているようで。なぜなら、相手からも連絡がこなくなったから、自然消滅したのだと思っていたらしい。

 彼女のことは好きだったけど、仕方ないとやっと心の整理をしたところに、彼女から連絡があって、一度会って話がしたいという。

 でも、今では彼女のことを前みたいに好きでいられなくなって、もしまだ彼女が恋人のつもりでいるのなら別れたい。……けど言いだせない。


 やっとの思いで忘れたのに、そんなことを急に言われてどういうつもりなのか、女性の気持ちが解らないと。


「それで、会うことにしたの?」


「少し考えさせてほしいって言ったんだけど」


「まだ好きなの?」


「いや、今はもうなんとも」


「もう好きじゃないのに、ズルズル引き延ばす方が傷つくよ」


「そうだよな。でも、どう言ったらいいのか」


「他に好きな人でもできた、とか?」


 適当に言ったつもりだけど。


「え、なんで解ったの?」


「なになに? 誰かに恋でもした?」


「っていうか、すごく気になる人ができて」


「えー、そうなんだ。彼女かわいそ」


「でも、ホント何ヶ月も連絡取ってなかったから、もう自然消滅のつもりでいたんだけど。俺だってやっとのことで忘れたんだよ。もう前に進もうと思って」


「好きだったんなら連絡すればよかったのに」


「その時はしつこく連絡して嫌われたくなくて」


「好きな人からの連絡は、どんな時でも嬉しいもんだよ。どんなに忙しくても、辛いことがあっても応えたいし、また相手を想って優しい気持ちにもなれるんだから」


 ヘンなところでヘンな気を使う浩ちゃん。

 男の人ってみんなそうなんだろうか。


 私だったらこまめに連絡してほしいな。

 一方通行は嫌だもん。


 そりゃあ、相手からの連絡が途絶えがちになったら彼女も気を使うよ。

 嫌われちゃったんじゃないかって、不安にもなる。

 でも、そんなこと言葉にだして聞けないし。

 自分ばっか連絡するのにも、だんだん切なさが込み上げてきて辛くなっちゃうんだよね。


「そっかぁ。なんか悪いことしたな」


「あのね。男性の方からなんでもしなきゃだめだよ。ちゃんとリードしなきゃ」


「そうなんだけど」


「たとえ口の立つ女子でも、心は乙女。大事にされて嫌なわけないでしょ?」


「今後の参考にします」


「よろしい。一度ちゃんと話し合った方がいいかもね」


「そうだな。それと……」


 え、なに?

 まだなにかあるの?



お読み下さりありがとうございました。


次話「友人の悩み事(5)」もよろしくお願いします!

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