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遠距離恋愛の果てに  作者: 藤乃 澄乃
【第1章】 お互いの気持ち
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憂鬱

憂鬱な『友達』と会わなければ。そして……。

 さあ、私もこの傘をさして、少し憂鬱な『友達』との食事に行こうか。


 今日こそちゃんと話をしよう。もう会えないって。

 私の気持ちが変わることはないから、友達以上にはなるつもりもないし、これ以上、友達としても過ごすことはできないって。だからもう会いたくないって。

 はっきりとそう言って、もう『友達』に終止符ピリオドを打とう。



 そして……。


「もう会えない。会いたくない」っていうと、すんなりと聞き入れてくれた。

 ……なんていうことはない。危惧していた通りだ。なかなか話を聞き入れてくれない。

 私はそれまでの心の中と、その時の気持ちを正直に話した。


 これ以上こういう状態で会うのは、もうやめにしたい。恋人になるのは無理だし、あなたの希望に添うような付き合い方はできない。

 ハッキリと言うのは心苦しかったが、曖昧な言い方をして淡い期待を抱かれたまま、またずるずると時間を過ごしてゆくのが嫌だったから。すると……。


「好きなヤツができたのか?」


「は?」


「他に好きなヤツができたからそういうことを言うんだろう?」


 なんとまあ、頓珍漢なことを言う人だ。

 こんなにハッキリ言っているのに、まだ伝わっていないのだろうか。

 これ以上は、もっとキツイ言い方になってしまう。でも、憶測や誤解を受けたままでややこしいことになるのも嫌なので、ここは敢えてキッパリと言うことにした。


「好きな人ができた訳ではないの。ただ、あなたとはこれ以上2人では会いたくないというだけの話」


「好きなヤツができた訳でもないのに、どうして会いたくないんだ? 意味が解らない」


 意味が解らないのは、こっちの方。

 これほどはっきりと2人では会いたくないと言っているのに、まだ自分が好かれているとでも思っているのかしら。


「あなたのことも好きではないから、これ以上はもう……」


「はあ? なに言ってんだ? 隠すなよ。どうせお前なんか、他のヤツと付き合ったって、上手くいくはずないんだから」



 ああ、鬱陶しい。恋人でもないのに、どうしてそこまで言われなければいけないの?


「だから、他の人とも付き合う予定もないし。そもそも私達だって付き合ってないし!」


「なに訳の解らないこと言ってんだ?」


「訳の解らないこと言ってるのはどっちよ!」


「俺以外とじゃ、幸せになれないよ!」


「そういうところが嫌なの! あんまりしつこいと、もう『友達』でもいたくないからねっ! むしろあなたと関わらない方が幸せよ!」


 2人とも口調がキツくなってきたところで『友達』が急に大きな声を出す。


「ああ、もういい。勝手にしろ!」


 そう捨て台詞を吐いて『友達』は、1人車に乗ってとっとと帰ってしまった。


 内心ホッとしたが、凄く嫌な気分だけが残っている。

 こんなところからどうやって帰ろうか。家まで車では30分くらいだが、電車では優に1時間はかかる。

 まあ、あのまま2人で車で帰るのもなんだったし、もうこれで憂鬱とはオサラバだと思うと、その1時間は苦にはならなかった。


 晴れ晴れとした気分……とまではいかないが、少なくとも胸のつかえはとれた。

 これからは、また平穏な日々が送れると、その時はまだ思っていた。



お読み下さりありがとうございました。


次話もよろしくお願いします!

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