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遠距離恋愛の果てに  作者: 藤乃 澄乃
【第7章】 秋から冬へ
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友人の悩み事(1)

 週末に男性と待ち合わせをするなんて、まるでデートのようだけど、浩ちゃんとはただの友人。それ以上でも以下でもない。

 彼は私が辛い時、寂しい時に傍にいてそっと支えてくれていた。


 以前は龍也たつやくんが、私のちょっとした変化に気づいてくれて、『大丈夫?』と寄り添ってくれていた。そんな彼にいつも助けられていたし、彼の何気ない優しさが嬉しかったし、きゅんとした。だけど今、彼は500キロ離れた場所にいる。すぐには会えないし、声を聞きたくても我慢するときもある。


 そんな私に手を差し伸べて話を聞いてくれる彼には感謝している。

 私は自分からあまり人に相談ごとを話すタイプではないので、浩ちゃんがさりげなく『大丈夫?』って聞いてくれるのは、すごくありがたい。

 本当は誰かに聞いてほしい、相談に乗ってほしいって思っていても、なかなか言えないので、いつもひとりで悩んで、ひとりで辛くなって、ひとりで泣いていたのだけれど。


 いつも気にかけてくれているし、本当に頼りになる友人だ。

 龍也くんとのことで悩んでいたり、仕事のことで落ち込んだりしていても、こちらが言いだす前に気づいて『大丈夫か?』って聞いてくれる。


 彼なら信頼できるし、年下なのになんだかしっかりしていて、的確なアドバイスをしてくれたりすし、話していると、年齢が逆転しているように感じることもしばしばある。


 その浩ちゃんが相談したいことがあるというのだ。

 私は日ごろのお返しができると、少し張り切ったりして。


 でもまあ、最初は食事だな。

 その後お茶でも飲みながらってことになるのかな?


 そうして駅で待ち合わせて、駅近くのお店で食事をすることになったのだが。



* * *


 食事も終わり、お茶を飲んで……。

 一向に悩みごとの話にならない。私から「さあそれで、悩みはなに?」と聞くわけにもいかないし。

 でも、私と同じようなタイプなら、自分から話を切りだすのが苦手な場合もある。

 それなら、私から聞いたほうがいいのか、ちょっと考えてしまう。


 そんなことを思っているとき、やはり浩ちゃんから聞いてくれる。


海彩みいちゃん、最近はどう?」


「どうって?」


「悩みごととかない?」


 やはり自分のことより先に相手のことを気づかうところが彼らしい。


「私は大丈夫だよ。それより浩ちゃんこそ大丈夫?」


 思いきって聞いてみた。


「俺は……俺は大丈夫だよ」


「何か話があったんでしょう?」


「それは、うん。……まあ」


「ん? どうした? 言いにくいこと?」


「今はまだ」


「そっか」


 気にはなるけれども、彼のタイミングで話してくれるのを待とう。


 それからはまたいつも通りの会話にもどった。





 帰り道、もう今日は話すタイミングにはならなかったのかな、と思いながらもやはり気になるけど。

 駅に着いて電車を待つ間、ホームの壁際に備え付けてあるベンチに腰かけて話を続ける。


 隣り合わせに座るベンチは、いつもと違う雰囲気になり、なんかヘンな感じ。

 長方形の長椅子のようなベンチに少し離れて座り、なにかぎこちない感じがする。


 彼もそう感じたのか、話が途切れ沈黙の時間が過ぎてゆく。


 夜も9時を過ぎると電車の本数もめっきり少なくなり、なかなか私の乗る電車が来ない。


 そんな中、浩ちゃんが不意に呟いた。


「言いたいけど、言えない」


 小さな声だが、しかしハッキリとした言葉で。


「え?」


海彩みいちゃんに言いたいけど、言えないことがある」


「なに? どういうこと?」


「今はまだ言えない」


「じゃあ、いつなら言えるの?」


「いつか」


 そう言いながら苦笑いを浮かべる彼。

 そんな中途半端な言い方をされると、余計に気になる。


「いつか言えるなら今言って」


「今はムリ」


「気になる」


「じゃあ、今度」


「今度なら言えること?」


 苦笑いの彼は、小さく頷いた。




お読み下さりありがとうございました。


次話「友人の悩み事(2)」もよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 澄乃先生の作品は『王道』をいっていて、読者に優しいですね。 伏線が、今後の展開を期待させてくれます。 これからも愛読させていただきます。
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