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遠距離恋愛の果てに  作者: 藤乃 澄乃
【第6章】 遠距離恋愛のはじまり
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3連休(5)

 いつもは車で逢うけれど、今日は龍也たつやくんが千葉に帰る日なので、電車での移動になる。

 千葉に帰ると言うべきか、行くと言うべきか。

 今彼が住んでいるのが千葉県なので、『帰る』と言うべきなのだろうが、私としては『行く』と思いたい。


『行く』なら、少しの間出向いているだけのように感じるが、『帰る』となると凄く遠いところに行ってしまったような気持ちになる。

 言い方が違うだけなのだが、気分的に違う気がする。

 それに、こちらの方に『帰ってくる』と思いたい。



 彼は実家を早めに出発し、私の最寄りの駅まで迎えに来てくれる。


 そんな面倒なことをしなくても、大きなターミナルで直接待ち合わせればいいものを。


『少しでも早く海彩みいちゃんに逢いたいから』だって。


『少しでも長く海彩ちゃんといたいから』だって。


 ふふふ。

 そんな風に言われて悪い気はしない。

 というよりは、むしろ嬉しい。


 逢う理由を『なんとなく』とか『ヒマだから』みたいに言われると、かえって逆効果。

 たとえ照れ隠しで言っていたとしても、逢えることが嬉しいという気持ちも半減してしまい、『なんだ、ついでか』みたいな気持ちになって、逢う気が失せたりするものだ。

 男の人は、案外気づいていないひとも多いのかな、なんて思う。


 その点、龍也くんはいつも自分の気持ちを素直に言ってくれるから、私も安心できるし、なにより嬉しい。素直に逢いたいと思える。


 そのくせいざ自分は……となると恥ずかしくて、気持ちを素直に言葉に出せずにいる。

 ついつい天邪鬼あまのじゃくな言い方になってしまう。

 なんとワガママなのだろう、と思うけれど。

 女子は、自分で言うよりも『言われたい』の!

 ……なんて。


 彼もそれは承知の上のようで、最近は私の『天邪鬼』な言い方が、『好き』の裏返しだと解ってくれているよう。




 最寄りの駅に着くと、龍也くんはホームのベンチに座って待ってくれていた。

 彼の実家からは電車で1時間くらいかな? 早くに来てくれていたんだと思うと、嬉しいやら申し訳ないやら。


 それからふたりで電車に乗り、新幹線のターミナル駅に向かう。

 流石に新幹線の駅だけあって、大小様々なお店やレストランにみやげ物店が並んでいる。


 昼食はターミナルのレストランで、茄子とトマトのミートスパゲッティー、サラダを注文した。

 食後にはデザートとして季節柄マロンのアイスクリームと、ホットコーヒーを。


 スパゲッティーはスプーンを使い、その上でフォークでクルクルクルとまとめて食べる。

 洋服にソースを飛ばさないように注意しながら。

 少しずつ持ち上げてスプーンの上に載せながらクルクルクル。

 フォークにたくさん巻きつけないことが重要だ。


 おしゃべりをしながらサラダを食べて、スパゲッティーを食べて。

 食後にアイスを食べて、コーヒーを飲む。

 

 いつもなら何気ない日常のひとコマでも、今日は別れる……、いや、離れるまでのカウントダウンのように感じられる。

 楽しいひとときも、なぜか切なく感じてしまう。


 時計の針は刻一刻と新幹線の発車時刻に近づいて。


「海彩ちゃん、今日は泣かないでね。和田はいないんだから」


 そうだ、ひと月前は浩ちゃんが一緒にいてくれたから、龍也くんを見送った後、心ゆくまで泣いたっけ。


「大丈夫だよ。2回目だし、もう平気」


 絶対平気。




 レストランを出て、新幹線のホームに向かう。


 多分平気。


 長いエスカレーターがゆっくりと進む。

 だんだんと近づくホーム。


 きっと平気。


 この駅が始発のN700系新幹線。

 もうすでにホームで待機している。


 ああ、もう時間がないんだ。


 発車までの少しの間、ホームで話を……。


 ホームで話……。



 平気じゃない。


 だめだ、泣けてくる。



お読み下さりありがとうございます。


今話で第6章は終了し、次話から第7章に入ります。


次話「それから」もよろしくお願いします!


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