3連休(5)
いつもは車で逢うけれど、今日は龍也くんが千葉に帰る日なので、電車での移動になる。
千葉に帰ると言うべきか、行くと言うべきか。
今彼が住んでいるのが千葉県なので、『帰る』と言うべきなのだろうが、私としては『行く』と思いたい。
『行く』なら、少しの間出向いているだけのように感じるが、『帰る』となると凄く遠いところに行ってしまったような気持ちになる。
言い方が違うだけなのだが、気分的に違う気がする。
それに、こちらの方に『帰ってくる』と思いたい。
彼は実家を早めに出発し、私の最寄りの駅まで迎えに来てくれる。
そんな面倒なことをしなくても、大きなターミナルで直接待ち合わせればいいものを。
『少しでも早く海彩ちゃんに逢いたいから』だって。
『少しでも長く海彩ちゃんといたいから』だって。
ふふふ。
そんな風に言われて悪い気はしない。
というよりは、寧ろ嬉しい。
逢う理由を『なんとなく』とか『ヒマだから』みたいに言われると、かえって逆効果。
たとえ照れ隠しで言っていたとしても、逢えることが嬉しいという気持ちも半減してしまい、『なんだ、ついでか』みたいな気持ちになって、逢う気が失せたりするものだ。
男の人は、案外気づいていないひとも多いのかな、なんて思う。
その点、龍也くんはいつも自分の気持ちを素直に言ってくれるから、私も安心できるし、なにより嬉しい。素直に逢いたいと思える。
そのくせいざ自分は……となると恥ずかしくて、気持ちを素直に言葉に出せずにいる。
ついつい天邪鬼な言い方になってしまう。
なんとワガママなのだろう、と思うけれど。
女子は、自分で言うよりも『言われたい』の!
……なんて。
彼もそれは承知の上のようで、最近は私の『天邪鬼』な言い方が、『好き』の裏返しだと解ってくれているよう。
最寄りの駅に着くと、龍也くんはホームのベンチに座って待ってくれていた。
彼の実家からは電車で1時間くらいかな? 早くに来てくれていたんだと思うと、嬉しいやら申し訳ないやら。
それからふたりで電車に乗り、新幹線のターミナル駅に向かう。
流石に新幹線の駅だけあって、大小様々なお店やレストランにみやげ物店が並んでいる。
昼食はターミナルのレストランで、茄子とトマトのミートスパゲッティー、サラダを注文した。
食後にはデザートとして季節柄マロンのアイスクリームと、ホットコーヒーを。
スパゲッティーはスプーンを使い、その上でフォークでクルクルクルとまとめて食べる。
洋服にソースを飛ばさないように注意しながら。
少しずつ持ち上げてスプーンの上に載せながらクルクルクル。
フォークにたくさん巻きつけないことが重要だ。
おしゃべりをしながらサラダを食べて、スパゲッティーを食べて。
食後にアイスを食べて、コーヒーを飲む。
いつもなら何気ない日常のひとコマでも、今日は別れる……、いや、離れるまでのカウントダウンのように感じられる。
楽しいひとときも、なぜか切なく感じてしまう。
時計の針は刻一刻と新幹線の発車時刻に近づいて。
「海彩ちゃん、今日は泣かないでね。和田はいないんだから」
そうだ、ひと月前は浩ちゃんが一緒にいてくれたから、龍也くんを見送った後、心ゆくまで泣いたっけ。
「大丈夫だよ。2回目だし、もう平気」
絶対平気。
レストランを出て、新幹線のホームに向かう。
多分平気。
長いエスカレーターがゆっくりと進む。
だんだんと近づくホーム。
きっと平気。
この駅が始発のN700系新幹線。
もうすでにホームで待機している。
ああ、もう時間がないんだ。
発車までの少しの間、ホームで話を……。
ホームで話……。
平気じゃない。
だめだ、泣けてくる。
お読み下さりありがとうございます。
今話で第6章は終了し、次話から第7章に入ります。
次話「それから」もよろしくお願いします!




