3連休(3)
今日は日曜日。
龍也くんの転勤に伴い遠距離恋愛が始まって、1ヶ月とちょっと。
早いもので、付き合い始めてからもう4ヶ月も経とうとしているなんて。
久々のデートだけど、特別にプランは立てていない。
特に行きたいところなんてないから。
どこかに出かけていくのが目的ではなく、ふたりで過ごす、同じ時間を綴ることができれば。
……ただそれだけでいい。
いつもと同じように迎えにきてくれた龍也くんのSUVの助手席に乗り込み、いざ出発!
「どっか行きたいとこある?」
「特にない」
「そうだよな。オレは海彩ちゃんと一緒なら、どこに行っても楽しいから」
少し照れながら嬉しいことを言ってくれる。
「うん。どこに行くかっていうことより、誰と行くかっていうことの方が大事だよね」
だから私も素直に言ってみたのだけど。
「うわあ! 海彩ちゃん、今日はどした?」
「え?」
「そんな嬉しいこと言ってくれるなんて」
「ふふ。久々のデートだから、ちょっとしたリップサービス」
ホントは本心からだけど、ちょっぴり照れくさい。
「ぐふふ。ぐふふふ」
「どうしたの?」
笑いをかみ殺しているようだけど、声が漏れ出している。
「いや、なんでもない」
平静を装っている感は否めないけど?
もう少しサービスしてみようか?
「逢えて嬉しいよ」
「……」
「あれ? 龍也くん?」
「……」
「もう! そんな無反応なら、もう二度と言わない!」
「本当に嬉しい時って、言葉がすぐには出ないものなんだな」
「え?」
「ううっ、ありがとう。海彩ちゃんがそんなこと言ってくれるなんて、思ってもいなかったから」
「たまにはね」
そう、たまにはね。
「いつも言ってくれてもいいんだよ」
「調子にのるな!」
「じゃあ、お猪口ならいいわけ?」
「お猪口にも、お銚子にも乗っちゃダメ!」
いつものように笑いに包まれる車内。
こういう時間がなによりも楽しい。
初秋ということもあり、朝から天気もよく絶好のドライブ日和だ。
気の向くまま、想いのままにと車を走らせる彼。
途中、飲み物やおやつなんかを買い込んで、コーヒー片手におやつをつまみつつ、朝の日差しを背に車は進む。
車高の高い彼のSUVは見通しもよく、窓からの景色の移り変わりもまた楽しい。
って、この風景、この感じ。
ああ、そうだ。
龍也くんとの初デートの時を想い出す。
梅雨入り前の、今日のような晴天の日。
窓からは爽やかな風が吹き込み、颯爽と走る車の助手席で1人ドラマのヒロインを気取っていた私。
今日もなんとなく爽やかな秋風を感じたくて、パワーウインドウのスイッチに指をのせた。
あの時と同じ海が左手に見える。キラキラと輝いたコバルトブルーのなんと綺麗なことか。
「海彩ちゃん」
「ん、なに?」
「お昼何が食べたい?」
は? ぬぁんだとぉ!
セリフまであの時と同じだとは。
トホホ、恐るべし龍也ワールド!
「なんかおかしいこと言った?」
なんだか、嬉しくなった。
あの頃と変わらない彼に。
「ううん、別に」
「何食べる?」
「海だからシーフードとか?」
前にも同じこと言ったって、覚えているかな。
「初デートのときと同じでいい?」
「うん!」
やっぱり龍也くんは覚えていてくれた。嬉しい。
そうして海浜公園で少し休憩してから、シーフードレストランに向かうことにした。
水族館や観覧車などがある海浜公園は、カップルや家族連れで賑わっている。
私達はあの日と同じように、とりあえず砂浜を歩いてみることにした。
夏も終わり、もう人もまばらな浜辺。
今日紡いでゆく想い出が、これからの遠距離恋愛の支えになってくれる気がする。
お読み下さりありがとうございました。
次話「3連休(4)」もよろしくお願いします。




