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遠距離恋愛の果てに  作者: 藤乃 澄乃
【第6章】 遠距離恋愛のはじまり
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ベテラン女子社員(3)

 そう、そのベテラン女子社員に最近、目の敵のように嫌味を言われている人がいる。

 サバサバした性格で個性的な、私より1年先輩。将来はイラストレーターになりたいと、会社が終わってから週に3日、専門学校に通っている頑張り屋さん。


 当然、朝は起きづらいようで、いつも始業時間ギリギリに駆け込んでくる。

 それを快く思わないのか、初めは仲良くしているように見えたのに、ベテラン女子社員からの当たりが強いように感じる。

 先輩はいつも「すみません」ばっかり言ってるケド。って考えたらベテラン2人には私だって「スミマセン」って言っている。威圧感が半端ない。


 今日だって、午後から来客がありバタバタと走り回っていて、ああ疲れたと給湯室に入って行った時のこと。

 誰もいないと思っていたのに、入り口を入ってすぐのところにしゃがみ込んでいる人物が。

 私は勢いよく入って行ったので、横を通り過ぎるときに気づき、ビックリすると同時に振り返った。

 

 1年先輩のサバサバした彼女は、壁に背中をつけた状態でしゃがみ込んだまま、膝を両腕で抱えるように、そこに顔をうずめているではないか。

 先輩はゆっくりと顔を上げ、目に涙を浮かべ私に向かってこう言った。


「誰にも言わないでね」


 きっとベテラン女子社員のどちらか、若しくは両方に何か言われたのだろう。


「はい」


 私は、それ以上の言葉を発することができなかった。

 気持ちは充分に解るし、饒舌じょうぜつな人なら「どうしたの?」なんて言ってあげられるのだろうが、彼女のためにも今はそっとしておくのが一番と考えたから。


 そのまま給湯室での用事をすませて、出て行くときに「失礼します」と声をかけたのみだ。

 先輩は笑顔で応えてくれた。


 それから暫くして、先輩はオフィスに戻ってきて、何事もなかったかのように振る舞っていたので、もう落ち着いたのだなと、安心していたのだが、その時にはまだ気づいていなかった。

 彼女がどれほど悩んでいたのか。やりたいことだけに情熱を注ぎたい。その為には専門的に学びたい。でも学費がかかるから仕事をする。その仕事中に嫌な思いをするなんて。


 夢を追いかけるために辛い思いにも耐えている。

 一生懸命夢に向かって頑張っている彼女の姿に、私が遠距離恋愛に悩んでいることが、ちっぽけに思えた。






 明日は龍也くんが帰ってくる日。

 仕事終わりに新幹線で帰省し、そのまま実家に帰る。

 そして次の日、そう土曜日の朝に待ち合わせをしている。


 1ヶ月とちょっとぶりの帰省で、龍也くんもこちらで会いたい人がたくさんいるだろう。

 龍也くんの先輩の智ちゃんと彼女、もとい今は奥さんの恵子ちゃん。後輩の小川くんと彼女の美枝ちゃん。同じく後輩、あのイケメンで彼女のいない浩ちゃん。


 まず土曜日は職場の仲良しで先輩の家に集まるという。新婚ほやほやの智ちゃん夫妻の家にみんなで遊びに行くのだ。


 そういえば智ちゃんと恵子ちゃんの結婚式の二次会で、龍也くんは幹事をすることになったとか言ってお店探しから会の進行、寄せ書きのための色紙を買いに行ったりと、ふたりの結婚式を嬉し忙しと応援していたのを思い出すな。あれからもう2ヶ月以上も経つなんて。


 その間にもいろいろあったが、今となってはいい想い出とでもいおうか。


 明後日の土曜日が待ち遠しい。



お読み下さりありがとうございました。


次話もよろしくお願いします!

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