良き友人
駅前のロータリーで朝10時に待ち合わせをしている。
いくら龍也くん公認といっても、流石に家の近くまで迎えに来てもらうわけにはいかない。
待ち合わせ時間より少し早めに着いたが、浩ちゃんは既に待ってくれていた。
運転席の浩ちゃんに軽く挨拶をすると、「さあ、乗って」と言われ助手席側にまわり車に乗り込む。
それから近くのショッピングモールに併設されている映画館で映画鑑賞。その後食事をしたわけだが。
楽しく過ぎてゆく時間もそれまで。映画鑑賞とは別の、彼にとっての本題があったのだ。
なんとも出だしは歯切れが悪く、言いにくそうにしていたが、意を決した様子で話し出した。
それは私には寝耳に水というか、あまりに突然のことで返す言葉もみつからなかった。
いや、もしかしたら心の隅にはあったのかもしれないが、それが真ん中にこないように、気づかないようにと端っこに追いやっていたのかもしれない。だから、こんなにど真ん中に投げられたボールを受け止めることも投げ返すこともできなかったのだろう。
しかし、時間の経過とともに少しずつ飲み込んでいけた。
龍也くんのところに頻繁に連絡が入るらしい。
元カノの存在。
龍也くんは、キッパリと決別の言葉を述べたはず。そう言っていた。
私はそれを信じている。
でも元カノには届かなかった龍也くんの思い。
これ以上どう説明すれば解ってもらえるのかと、悩んでいるという。
浩ちゃんは彼が私には言いだせず、苦しい思いをしていると、とても心配して、その『言いにくいこと』を伝えてくれたのだ。
ああ、それで。
ショックな内容の話ではあったが、先日の電話で龍也くんの様子がおかしかった説明がつく。
そう思うと少しホッとした自分もいた。
どうしてだろう、元カノに対する嫉妬心は湧かない。
龍也くんに対しても、『よりを戻したらどうしよう』という不安な気持ちも芽生えなかった。
今までの私とは少し違う。
信頼している。
その言葉が相応しい。彼を信頼している。だからだろう。
心配そうに見つめる浩ちゃんに、ひと言告げた。
「知らせてくれてありがとう。彼は大丈夫よ」
「そうだな。余計なこと言っちゃったかな」
バツが悪そうにしている浩ちゃんも、本当に心配してくれてのこと。
良き友人に囲まれて、龍也くんは幸せだな。そう思う。
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