遠距離恋愛って……
龍也くんの指定した時間通りにかけたモーニングコール。
何度もかけてやっとでた電話の向こう。
無音、無言のまま途切れた画面を見つめるも、もう私も家を出る時間だ。
気にしながらも会社へと向かう。
お昼休みにやっと連絡がとれた。
「会社、遅刻しなかった?」
『おう、楽勝!』
「モーニングコールしてっていうから、何度もかけたんだよ」
『ありがとう、おかげで助かったよ』
ん? 確か電話ではしゃべっていないはず。
「電話、すぐ切れたけど?」
『あ、ごめんごめん。でたときに手から滑り落ちちゃって。そのまま切れたけど、ちゃんと起きられたし、ま、いっかと思ってさ。時間もなかったことだし』
なにおー!
また、龍也ワールドかぁ?
「もう! 心配してたんだからね」
『嬉しいこと言ってくれるね。サンキュ』
全然悪びれないところが、腹立たしくも憎めない。
そこが彼の得な性格。そしてズルいところ。そして可愛いところ。
思わず笑みを零してしまう。
なんでも、昨日の夜もあの電話を切ったあと、お隣の1年先輩の南さんに誘われて、南さんの部屋で遅くまでお酒を飲んでいたらしい。
私からのモーニングコールで起きられると、高をくくっていたみたい。
ちゃんと起きられたから安心したって。
はあ、心配して損しちゃった。
でも、ちゃんと起きられてよかった、とホッと胸をなで下ろす。
『そんでさぁ、今日、職場で歓迎会してくれるらしいから、夜は電話できないけど』
「うん、解った」
それから、次の日も、その次の日も、結局その週はそれきり龍也くんからの電話はなかった。
夕方に、今日は誰々と飲み会に行く、今日はどこどこで食事会ってメールが入るだけ。
彼のことだから、きっとみんなに歓迎されて、こっちでもそうだったように、人気者になっているのだろう。
楽しそうでいいんだけど。でも……。
たとえひと言ふた言でも、声が聞きたいのに。
文字が見たいんじゃない。
話がしたい。会話がしたいの!
一方通行じゃいやなのよ!
文字だけじゃいやなの!
って言えるはずもなく、『気を付けてね』『楽しんで』『飲み過ぎないように』なんて返信する。
彼が今何をしていて、何を考えて、どう思っているのかが全く掴めない。
文字だけ、顔が見えない会話。
これが遠距離恋愛というものか、とそのときはじめて実感した。
お読み下さりありがとうございました。
次話「お昼休みの有効活用!」もよろしくお願いします!




