モーニングコール
昨日龍也くんは、千葉県にある社員寮に無事引っ越しも終わって、一段落したということで夜に電話がかかってきた。
10畳ほどのワンルームで、簡易的だが部屋にキッチンもある新築の寮だとか。
クローゼットも大きいし荷物もそんなにないから、ベッドを置いてテレビ、テーブルなどをおいてもガランととして、少し寂しい感じらしい。
でも、お隣は今回の研修という名の転勤とは別の件で、同じ千葉県の違う職場に配属されることになった龍也くんの1年先輩が住むことになったらしい。
以前から顔見知りではあったが、話したことは殆どなかったというが、引っ越しの挨拶に行ったときに意気投合したらしい。
早速今日も一緒に夕飯を食べに行ったとか。
なんだか楽しそうに話す彼に、ホッとした。
『んで、明日から船橋市の職場に出社するんだけどさ、まだ道とか慣れてないからちょっと早めに家を出ようと思うんだけど』
「そうだね。初日から遅刻なんてシャレになんないもんね」
『そうそう。だからさ、明日起こしてくれる? モーニングコールってやつ』
「はあ? なに甘えてるの? 社会人なんだから自力でなんとかしなさいよ」
『そこをなんとか』
「私だって朝はいろいろと忙しいんだからね」
『朝から海彩ちゃんの声が聞けるなんて、最高だなぁ』
「んもう! 明日だけだからねっ」
って、内心はちょっと嬉しいんだけどね。
なぜって、頼られるのって信頼されているってことでしょ。
嬉しいに決まっているじゃない。
多少の無理をしてでも応えたい。
応えられることがまた嬉しいし。
『サンキュ! じゃ、6時に起こしてくれる?』
「了解。私は5時半に起きてるから大丈夫だよ」
『よろしく。また明日』
「おやすみ」
さあて、私が寝坊をしたらシャレになんないから、今日はそろそろ寝ようかな。
ちゃんと起こせるか、ちょっとドキドキするけど……。
* * *
あれ? もう結構長く鳴らしているのに全然反応ないよ。
スマホ、ちゃんとベッドの近くにおいてるのかな?
6時ピッタリに電話してるのに。
一度切って、もう一度かけ直してみる。
…………。
ダメだ。どうしよう。
時刻は6時5分。もう少ししたらもう一度かけてみよう。
その間に私も出勤準備の続きをする。
6時10分。
あ、やっと出た!
「もしもし」
「…………」
「もしもし、龍也くん?」
「ん……」
「もしもし!」
ツーツーツー
え、ええっ!?
どういうこと?
それから何度かけ直しても、龍也くんが電話にでることはなかった。
だけど私も、もう行かなきゃ。
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