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遠距離恋愛の果てに  作者: 藤乃 澄乃
【序章】 それは突然にやってきた。
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こんなことって!

係長から頼まれて、人事部まで書類を届けようと急いで飛び出すと……。

 新入社員歓迎ボウリング大会翌日のこと、昨日出逢った普通な感じの同期くんから食事に誘われたけど、結局行けずに縁がなかったと、少し寂しい気もしたが、それでもいつも通りに元気よく出社した私。


 係長から始業前にとひとつ仕事を頼まれる。 

 我が総務部のある5階から1つ上の階の人事部まで、書類を届けに行こうと、勢いよくドアから飛び出した。

 その時、誰かとぶつかった反動で背中を壁に打ちつけ、書類を落としてしまった。


 私があまりにも勢いよく飛び出したせいで、ぶつかってしまったのにもかかわらず、「すみません、大丈夫ですか?」と優しい言葉に顔をあげると……。


 え!



 こんなことってある?


「おう!」


「あ!」


 落とした書類を拾い上げ、微笑みとともに手渡してくれたその人は……。


「昨日はお疲れ」


「あ、ありがとう。昨日はお疲れ様でした」


「朝から随分元気がいいね。ドアから飛び出すときは周りを確認したほうがいいよ」


「ふふふ、そうだね。急いでいたからつい……。あ、じゃ、また」


「おう、またな」


 もう、びっくりしたな。普通な感じの同期くん。こんなこともあるんだなぁ。もう二度と会うこともないと思っていた矢先にまた会うなんて。

 偶然にもほどがある。





* * *



「……」


「……さん。葉月はづきさん!」


「は、はい!」


 びっくりして思わず立ち上がってしまった私。周りからクスクスと笑う声が聞こえる。


「べ、別に立ち上がらなくてもいいよ。それより、物思いに耽るのもいいけど、もし時間があれば仕事してくれるかな?」


「は、はい。すみません」


 そう言うと、周りの社員に軽く会釈をしてまた仕事を始めた。


 ああ、なんてこと! あんな嫌味言われちゃうくらい想い出の世界に入り込んでいたなんて!

 今日は16時から会議があるから、資料作りに追われているというのに。


 会議室は同じフロアーの廊下を挟んだ向かい側にある。

 ペーパーレスとは言いながらも、やはり個人に配布すべき資料はある。


 作成した資料を社内の印刷室で印刷し、1部20ページの小冊子にして25人分用意する。それを会議室の机に配置するのだ。

 今は14時だから、大急ぎで続きをすればあと1時間くらいでなんとかなる。

 1部用意された資料を持って印刷室に向かう。


 印刷機をセットして出来上がるのを待つ間、そう、ほんの少しでも時間が空くとつい考えてしまう、さっきの出来事。




 そう突然にやって来た。


「オレ、転勤決まった」


「え」


「オレ、転勤することになった」

 

 昼下がりのオフィスで突然私のデスクの前にやってきて、何も気にする様子もなく彼が大きな声で言い放った言葉を思い出す。


 転勤か……。


 この会社に勤めている限り、避けては通れないこと。

 自動車メーカー。工場は本社のある本社工場をはじめ5カ所にある。それ以外にもグループの子会社、販売会社にいたっては全都道府県にあり、本当に日本全国どこに行くことになるかは解らない。


 その上、海外のグループ企業まで入れると、もう……。

 考えると頭が痛くなる。


 特に若手有望社員は、早い段階に「経験」として1年~3年間の期間付き転勤がある。

 もちろん長くても3年後にはまた本社に戻ってくるのだが。


 付き合いだして1ヶ月。3年間も遠距離恋愛って……待てる?



お読み下さりありがとうございました。


次話もよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
経験がない、どんな風になる?その先が手探りだと、不安、心配が先走りますよね。なんとかなる!って簡単には言ってはいけないけれど、でも、がんばって!
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