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遠距離恋愛の果てに  作者: 藤乃 澄乃
【序章】 それは突然にやってきた。
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どうする?

普通な感じの同期くんに、大きな声で食事に誘われた。

どうする?

 どうする?


「帰り、みんなでご飯食べようよ!」って言われても、声が大きすぎるよ。


 よく見ると笑顔が爽やかだけど、多分身長170センチとちょっとくらいの、普通な感じの同期くん。微妙な順位に少しご機嫌ななめな係長が、眼光鋭くこっちを見ているんだから。


 



 話していてもとても楽しかったし、本当はみんなとご飯に行きたいけど、職場からの参加ということもあり、係長の怖い目もある。


「今日はやめておく、ごめんね」


「えー、行こうよ」


「だって係長が……」


 係長が冷ややかな目で様子をうかがっているのに、『お先に失礼します!』なんて言って男性社員達と帰って行くわけにもいかない。

 もう少し小さな声でこっそりと話しかけてくれれば、係長に気づかれずにすんだのに。

 そうしたら、あとは適当な理由を作ってこのボウリング場で解散、ってな具合になったかもしれないのに。

 男の人ってそういうところ気がつかないのかしら。


「いいじゃん、行こ」


「うーん、やっぱやめておく。声が大きいよ、係長が睨んでる」


「そっか。じゃ、仕方ないな」


「うん。じゃね」


「うん、じゃ」


 お互い手を上げて挨拶を交わす。


 はあ、あんなに大きな声で誘われたら流石に行けないよな。他の人なら速攻断るけど、他部署だけど同じ会社の社員っていうこともあるし、親近感わいたし。佐藤さんは行くのかな? 折角知り合ったのだし、もう少しみんなと話してみたかったな。なんて思っているヒマはない。鬼瓦のような顔の係長がさっきからずっとこちらを見ているのだから。



 普通な感じの同期……あれ? 名前なんだっけ。そういえばお互い名乗っていなかったな。

 広い会社の中で1年間知らなかった同期。この先また会うことなんて、まずない。

 これも縁がなかったということだな。



葉月はづきさん帰るよ」


「は、はい」


 走って係長のところに行ったけど、結局同じ職場の3人で帰りに食事をすることになった。


 もう1人の女子はいいとして、係長と3人で食事なんて……。なんとも断りづらい雰囲気を醸し出す係長のオーラ。意気揚々と歩く係長の後からとぼとぼと歩く女子社員約2名。

 なんと絵になることでしょう! はあ、ため息しか出ない。


 




 次の日会社に行くと、係長は嬉しそうに昨日のボウリング大会の武勇伝を披露している。


「おはようございます」


「ああ、葉月さん、おはよう。昨日はお疲れ様」


「お疲れ様でした。係長大活躍でしたね」


「いやあ、それほどでも。マイボールを使えばもっと高得点出せたんだけどね」


「えっ、マイボール持ってるんですか!」


 これ以上立ち止まっていると、ずっと自慢話に付き合わされる。愛想笑いもほどほどに席についた。


 始業時間までまだ30分以上ある。今日の仕事の段取りをさっさと済ませてしまおう。



「葉月さん、この書類人事に持って行ってくれる?」


「はい。急ぎですか?」


 一通り武勇伝を語り終わった係長から頼まれ、仕事の段取りとの優先順位を確認する。


「ああ、できれば始業前に人事の課長に届けてほしいんだ」


「解りました。では今から行ってきます」


「頼んだよ」


 今から急いで我が総務部のある5階から1つ上の階まで行かなければ。係長から預かった書類の入った封筒を抱えて勢いよくドアから飛び出した。


 ドン!


「きゃあ」


「うわっ」


 誰かとぶつかった反動で背中を壁に打ちつけ、書類を落としてしまった。


「すみません。大丈夫ですか?」


「こちらこそすみません、急に飛び出して」


 そう言って顔をあげると……。


 え!



お読み下さりありがとうございました。


次話「こんなことって!」もよろしくお願いします。

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